表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【朝晩2話毎日更新】 勇者たちの功罪 【ハッピーエンド】  作者: Sin Guilty
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/52

第031話 『剣聖クリスティアナ』⑧

「王城の宝物庫から持ってきたのですか、そのデカブツ」


 クリスティアナに促されて屋外修練場に出ていたクナドは、女子寮から出てきたその姿を見て驚くというよりも呆れていた。


 「早速ですが、お2人にお見せしたいものがあるのです!」とクリスティアナが前のめりだったこともあるが、もともと午後からは鍛錬の予定だったのでそれは別に構わない。


 だが『剣聖』という言葉の響きからは想像できない華奢な体をしているクリスティアナが手にしている左手の大楯、右手の大剣が、あまりにも規格外の大きさをしていることに呆れたのだ。身体強化の魔法もかかっていない今の状態では、たとえ片方だけでもクリスティアナが持つことなどできないはずだ。


 それが軽々と、それぞれを片手で持てている理由など明白である。


 それらが普通につくられた大剣や大盾などではなく、魔導武器マギカ・ウェポンであるからに他ならない。魔力を消費することによってクリスティアナでも自在に扱える、まるで羽のような軽さを実現しているのだ。


 王族であるクリスティアナがわざわざ実家(王城)から持ってきたものである以上、国宝級の魔導武装であることはまず間違いない。内在魔力の問題を解決できたクリスティアナが今になって持ち出してきたのだ、魔力をバカ食いするトンデモ武装なのだろう。


「なんなんですかそれ」


 アドルは少々武器フェチなところがあるので、本来は人が持てるサイズではない大剣と大盾に興味津々、まるで少年のように目を輝かせている。


 純白をベースに金と蒼がバランスよくあしらわれ、美術品といっても通じる精細な意匠を施されているとなれば、武器大好きな男子がとりこになってしまうのも無理はない。

 その上クリスティアナの細腕でも振り回せる理由である強化魔法が常時発動している。そのことを示す輪形魔法陣が刀身と盾の正面に複数浮かび、ゆっくり回転しているとなればなおのことである。


 これでクリスティアナが王立学院指定の訓練用衣装ではなく、純白系のドレス・アーマーに身を包んでくれていたら、アドルにとっては理想の姫騎士像なのだ。次に実家(王城)に戻った際には、是非ともその手の装備を見つけて欲しいところだろう。


「三代目の国王陛下――つまり先代勇者様のお孫さんの専用装備だった大剣と大楯ですね。先代勇者様が魔大陸の迷宮ダンジョンで得た神遺物級武装アーティファクト・ウェポンで、『勇者の聖剣』を得るまでは先代勇者様の主要武装でもあったそうです」


 まるで興奮した子供のようなアドルを「可愛い」などと思いながら、クリスティアナは自分が引っ張り出してきた装備について端的に説明している。


 その際にもまるで重さがないかのように取り扱っている様子は、魔法が発動しているためだとわかってはいても、どうしても見る者に違和感を抱かせる。持てていることそのものよりも、巨大質量を勢いよく振り回した際の慣性が消えているのが気持ち悪く感じるのだ。


「いや、そんなとんでもないものをさらっと……」


 クリスティアナがわざわざ見て欲しいというのだ、虚仮威こけおどしの宝物などではないだろうと思っていたクナドだが、想像以上にガチの国宝級だったことに演技ではなく驚いている。

 初代勇者の力は5代目くらいまでは色濃く引き継がれており、名君の誉れが高い三代目の愛剣と愛盾ともなれば、もはや一軍を相手にできるほどの戦略級兵器だと現代に伝わっている。


 ――そういえば三代目の銅像や肖像画でも、こんな大剣と大盾持っていたな。


 そのことは記憶にあったクナドだが、さすがにそれらが初代勇者の中期装備だったことまでは寡聞にして知らなかった。


「クリスティアナ殿下の専用装備にするの?」


 アドルのシンプルな質問に、とびきりの笑顔を浮かべたクリスティアナが頷いて見せている。その今にもぴょんぴょん跳ねだしそうな雰囲気から、それらを自分の専用装備にできることがよほど嬉しいと見える。


「持っているだけでとんでもない内在魔力を吸われて、まともに持てる者が三代目以降誰もいなかったそうです。国宝というよりも、危険物扱いされていたくらいですから」


 さらっと恐ろしげなことを言いながらも、それらが自分の愛剣、愛盾となることに、どこかうっとりとした表情さえ浮かべている。


 実際に『剣聖』の力に覚醒した直後、クリスティアナはこの大剣と大盾を自分が装備可能かどうかを真っ先に試していた。結果は内在魔力を一瞬で消費されて、三日三晩寝込むはめになって泣く泣くあきらめていたのだ。


「でしょうね」


 クナドの目から見ても、どう見てもまっとうな代物ではない。

 常時展開されている輪形魔法陣が重量軽減の為だけの訳もなく、装備することが出来さえすれば、まずそこらの魔導武装など比較にもなるまい。


 だがクリスティアナがすでに汗ばんでいるところを見れば、装備しているだけでとんでもない内在魔力を消費し続けていることは明らかだ。常にアドルからの魔力供給がされているからこその、クリスティアナの発汗なのだから。


 アドルからの常時魔力補給を必要とするなど、自分の意志で手放せる点を除けば、呪いの装備といった方がしっくり来るくらいである。


「ですがアドル様からの魔力供給を常時受けられるようになった私なら――」


 だがもう微熱程度で抑えられるほどに魔力供給の感覚に慣れているクリスティアナは、この状態でも充分に盾役として機能できる。というかそれができなければ『絆魔法』も無意味なので、そこら辺の訓練は重点的にやっているのだ。


 魔力供給はアドルの意志で自在に制御できるので、初めの頃は必要に応じて供給する形で訓練していた。それに慣れた後もクリスティアナが常時供給体制にも慣れるように訓練を続けた理由の一つは、この装備を身に着けられるようになる為だったという訳である。


 実は魔力供給の感覚がやみつきになったのではと疑っていたクナドは、今内心で大いに反省していた。


「行けると判断して、実際行けたわけですね」


 納得したように嘆息するクナドの声には、やはり微量の呆れが混ざっている。


 こんないかにもお姫様といった容姿をしていて実際にそうでも、クリスティアナはやはり先代勇者の血を引き、その力に目覚めた『剣聖』なのだ。自分が命を預ける相棒(武装)に強くこだわるのは、アドルに勝るとも劣らないものを持っていても不思議ではない。


 要はアドルといい勝負の武器フェチだったのである。


「はい! ですから早く試してみたくてすぐに戻ってきちゃいました」


「あー、なるほど」


 もはや跳ねながらのクリスティアナの言葉に、アドルが深く納得している。


 いったんは諦めていたお気に入りを装備可能になったかもしれないとなれば、居ても立っても居られないというのは当然だとアドルも思ったからだ。


 今回はアドルの『絆魔法』を受けて以降で初めての実家(王城)だったのだ、それはもうドキドキしながら「今の私なら行けるかも⁉」と思っていたのだろう。そのことが、もはや自分のことのようによくわかるアドルなのである。お気持ちわかりますよ、というやつだ。

 

 そして思惑通り装備できたとなれば、大喜びで試してみたくなることもまた当然。

 それは王城での公式行事が終わり次第、すっとんでアドルとクナドのところに戻ってくるはずだと納得できたのだ。

 

 そこにはクナドと、なによりもその夢を叶えてくれたアドルへの感謝があるからこそ、まずはその2人に見せたいという思いがあるのだが、そこは「お気持ちわかりますよ」とはならないらしい。


 そのくせ我知らず少し残念そうな、寂しそうな表情を浮かべているので、クナドは半目でアドル(お子様)を見ることしかできない。


 とにかく3人揃ったので、早速王家秘蔵の神遺物級武装の力を試す。

 そのために寒い中、訓練着に着替えて屋外に出てきたのだから当然だろう。


「まずは大楯の2つある固定能力の一つ目――『自律障壁展開』!」


 もったいぶることなく、というかそんな余裕もないクリスティアナがうっきうきでまずは大盾の固定能力――魔導武器に備わっている特殊な技や魔法、聖剣でいえば勇者専用の雷系の技や魔法――の一つを発動させた。


『剣聖クリスティアナ』⑨

12/11 8:00台に投稿予定です。


新作の投稿を開始しました。

2月上旬まで毎日投稿予定です。


よろしくお願いいたします。


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】


ほんの少しでもこの物語を


・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひともお願い致します。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をスマホの方はタップ、PCの方はクリックしていただければ可能です。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ