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【習作】描写力アップを目指そう企画  作者: 描写力アップ企画管理者
第三回 妄想お食事会企画(2017.11.25正午〆)
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風と水と、火と土と (キュノスーラ 作)

 いつもの時間だ。

 わたしはiPadをけして、ベッドからおきあがって、れいぞうこをあける。

 いつもみたいに、ミートグラタンのふたにはってあるピンク色のメモをはがして読んで、おかしのあきばこにつめる。

 ミートグラタンをレンジに入れて6分間あたためるあいだに、スプーンのふくろをやぶってすてて、れいぞうこからレモンソーダのペットボトルを出して、つくえの上におく。

 シンクのよこのかごから、一番きれいな、とうめいなガラスのおさらと、ママのグラスをとって、つくえの上におく。

 ママのコレクションの中から、一番高いおさけをえらんで、とうめいなガラスのおさらのそこが、やっとかくれるくらい、ほんのちょっぴりそそぐ。

 レンジが鳴って、ミートグラタンができあがる。

 ふたをとってすてて、湯気をたてる紙のおさらのりょうはしをつまんで、いそいでテーブルまでもってくる。

 そのときにはもう、ルックルックがテーブルのむこうがわにすわって、にこにこしながらこっちをみている。

 図書室の図かんで見た、ボルゾイというしゅるいの犬にそっくりだけど、王子さまのふくをきていて、つやつやの毛は赤い。

 黒い目と、はなの先も、つやつや光っている。

「さあ、食べましょうか」

「手をあわせましょう。ごいっしょに、いただきます」

 わたしはルックルックといっしょにいただきますをして、ミートグラタンにスプーンをさしこむ。

 いつもと同じ、いいにおいがして、口に入れると、おいしいあじがする。

 ルックルックは、光る青いふくのポケットから、きれいなライターを出して、ママの高いおさけに火をつける。青い火が、とうめいなおさらの上で、ゆらゆらゆれる。

 ルックルックは、べつのポケットから金色の長いスプーンを出して、それで青い火をすくって食べる。

 おさけのところは、食べない。ルックルックの食べものは、おさけがもえた火だけだ。

 ママがおやすみの日に、げいのう人の人たちがおいしいものを食べるテレビを、ママといっしょにみた。そこに、コップに入れたおさけをもやすところが出てきた。青い火がぼうっと光ってゆれて、本当にきれいだった。

 そのつぎの日、図書室の図かんで、ボルゾイという犬をみた。

 だから、その日の夜から、ルックルックが来てくれるようになった。

「毎日そればかり食べてますけど、そんなにおいしいんですか? その、赤いどろみたいなやつ」

「うん、大すき。食べる?」

「私は、おいしい火しか食べません。あなたも一口どうですか?」

「いらない。口がもえちゃうもん」

 私たちはいつも同じことを言いあいながら、ばんごはんを食べる。

 ぜんぶ食べおわると、ルックルックはかってにママのコレクションのところに行って、すきなびんをもってきて、ママのグラスに、ほんのちょっぴりのおさけをいれる。それから、また、ライターで火をつける。

 わたしは、レモンソーダのペットボトルをあける。

「毎日そればかりのんでますけど、そんなにおいしいんですか? その黄色のしゅわしゅわ」

「おいしいよ。のむ?」

「わたしは、風と水でできたのみものなんていりません。土と火のほうが、ずっとおいしいんですから」

 ルックルックは、ふくのポケットから、しお入れみたいな形の小さなびんを出して、おさけがもえているグラスの中に、ぱっぱっとふりかける。

 赤い土がもえて、むらさき色のけむりがあがる。

「これで、すばらしいかおりがつきます。こくも出ます。あなたも一口どうですか?」

「いらない。子どもだから、まだ、おさけはのんじゃだめだもん」

「おさけじゃありませんよ。火とけむりをのむんです」

「そんなことしたら、しんじゃうよ」

 わたしはレモンソーダを半分のんで、ルックルックはグラスの中の火をぜんぶのむ。

「今日のごはんも、おいしかったですね」

「うん。手をあわせましょう。ごいっしょに、ごちそうさまでした」

 わたしはひとりでかたづけをする。

 とうめいなガラスのおさらと、ママのグラスを、そっとシンクのよこのかごにもどす。

 食べたあとのごみをすてて、半分のこったレモンソーダのペットボトルをもって、ベッドにねころがってiPadをつけて、どう画のつづきを見る。

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