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【習作】描写力アップを目指そう企画  作者: 描写力アップ企画管理者
第二回 因縁のラストバトル企画(2017.7.22正午〆)
47/268

 (151A 作)

「貴方自分が何を言ったか分かってるの?今の発言で全生徒を敵に回したわよ?」

「邪な視線に晒されている女生徒たちを思えばこそ発した言葉だ。今更撤回するつもりはない」

「いい加減にしたら。貴方だって本当はスカート短い方が好きなんでしょ?」

「余計なお世話だ。僕は風紀が乱れることで危険が増すならそれは正されるべきだと主張する」

「ルールは必要だけれど今時スカート丈は膝下5センチって古すぎるのよ」

「要するに時代錯誤だと言いたいんだな?だが歴史は繰り返す。それは流行も同じ。そんなことに左右され、その都度規則を変えるなどそれこそおかしいとは思わないのか?」

「勘弁してよ。よく見て。これが膝下五センチ。全然お洒落じゃない。自分が通う高校の女子がこんなにダサくて貴方平気なの?」

「ノープロブレムだ。そもそも制服というものはちゃんと着てこそ美しい。更に言えば厳しい校則を守りながら着こなすことこそ真の洒落者だと思うが?」

「……がっかりだわ。私と貴方は真のライバルだと思っていたし、ちゃんと話せば理解しあえる相手だと思っていたのに見込み違いだったようね」

「寝言は寝て言え。そんなこと微塵も思ってなどいない癖に。小学校では跳び箱が飛べない俺を笑い、中学の合唱コンクールの練習で音を外しまくる俺に口パクができないなら当日休めと脅し、高校ではテストでお前に一度も勝てず二位に甘んじている俺を心底バカにしている癖に!」

「苦手なものは誰にでもある。笑ったのは私だけではないし、脅したのはクラスが優勝するためには仕方がなかったからよ。それに私はバカにしてなんかいない。学年二位のどこが不満なの?」

「の、の、乗せられてたまるか。お前が常に一番でなければ納得しないこと、俺は知っている!そもそも論点がずれているだろ!たかがお洒落を理由に校則を変えるなどあってはならない」

「言ったわね?たかがお洒落ですって?じゃあ貴方は彼女がデートにダサいヨレヨレのジャージを着て来ても文句は言わないのね?」

「ね、熱烈に歓迎するさ。僕は見かけじゃなく中身重視だからな」

「……泣けてくる。世の中の女子がどうしてお洒落するか分かる?好きな男に可愛いって思って欲しいから頑張るのに、その努力を認めず中身重視ときた」

「確かに女が着飾るのは男の為でもあるだろうが、まずは自分の為だと僕が知らないとでも?」

「勿論自分の為でもあるわ。でもそれは少しでも自信を持って好きな相手にぶつかるため」

「恵まれているお前がいくら言った所で逆に嫌味としか思えない」

「嫌だ。私が自分に自信があると本気で思っているの?」

「望みとあらばお答えしよう。お前はこの学校一の秀才であり、容姿も申し分ない。運動神経も音感も良い。誰もが憧れる人気者である。だからと言って生徒会長の座を僕は譲るつもりはない」

「いい加減諦めたら?これまでの失言や暴言を聞いて貴方に投票する生徒がいると思う?」

「運命は残酷で結果は既に出ているとしても僕は最後まで戦う」

「美しい心がけね。そういう所本当に尊敬するわ」

「わ、わざとらしいことを言うのは止めてくれないか。思っても無い癖に」

「鈍いわね。本心よ。中学までずっと勉強では勝てなくて必死に追いつきたくて頑張って漸くここまで来た」

「辿り着き目指した場所よりも遥か高みへと登った気分はどうだ?最高だろ?たいしたこと無い男で悪かったな」

「情けない。貴方をバカにしたことなんか一度もない。貴方だってずっと二位だった私をバカにしていた?違うでしょ?」

「よ、よしんばそうだったとしても今なんの関係があると?」

「当然あるわ。四の五の言わずにとっとと負けを認めれば?」

「バカな!」

「流れは確実に私に来てる。潔く引いた方が貴方の為だけど」

「どう言われようと俺は負けなど認めん!」

 たっぷりと10秒ほど時間が経った後で彼女がにやりと笑う。

 はっと気づいた時には既に遅い。

「し、しまっ」

「ふっはは!やったわ!勝負ありね」

 弾けたように笑い声を上げる彼女の傍に進行役の男子生徒が駆け寄りその手を掴んで高く掲げた。途端に体育館内に響く拍手と歓声。

「ま、負けた……?」

 そのことを上手く受け止められず俺はその場に頽れた。

 元々勝ち目などない勝負だったのだ。

 女に口で勝とうなど。

 しかし本校の生徒会長を決める為に行われる候補者同士のしりとり舌戦は伝統であり、メインイベントでもある。

避けては通れぬ物だったので仕方がないが。

「バカね。スカート丈に絞って挑んでこなければ勝てたかもしれないのに」

 勝者が敗者の前までやって来て殊勝に声をかけてくる。

 スポットライトを背にして立つ彼女のスカートは短く、白い太腿や紺色のハイソックスに包まれた美しい脚線美がやけに際立って目の毒だ。

 座り込んで見上げるとどうしても際どい場所に目が行く。

 だからなのだ、と力説した所で届かない。


 俺は負けたのだから。

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