(DakenQ(おいぬ) 作)
友人との付き合いはそれなりに重要だ。学校生活を送るにあたって、友人という存在がいかに役立つかは、世の高校生全員が知るところだろう。そして僕も、そんな友達付き合いを日ごろ行っている高校生の一人だ。
特段仲良くもない友人の部屋に訪れるのは何もこれが初めてというわけではない――が、少しばかり緊張はしていた。かぎが開けられ、ガチャリと音が響いてくるあの瞬間だけは、どうあってもなれないような気さえする。
少しばかりの覚悟をしながら、呼び鈴を押す。少しばかりの間をおいて、とたとたと廊下から足音が聞こえてくる。そのまま何かを履いて、ガチャリと開かれる扉。それらを想像して、軽く身だしなみを整える。
そして、ゆっくりと扉が開かれた。
――ごくり、と息をのんだ。
僕の意に反してそこにいたのは、友人ではなく、女性だった。美しさを体現したかのような、女性だった。
肌は処女雪のように白く、指は嫋やか。漆のように艶やかな髪が、楚々とした目元に垂れていて、そこはかとなく官能の香りを漂わせていた。大人の色気と言うものを感じさせるその女性に、僕の頭は白で塗りつぶされていた。友人宅と間違ったことなど思考の埒外に。そこにあったのは、ただただこの女性をずっと目に入れていたいという欲望だけ。
女性の問いかけの声さえ、僕にとっては天上の福音のようにも聞こえた。きっと僕のことを外から見ることができたなら、僕は僕で、今のこの状況を「恍惚とした」、と表現するだろう。それほどに、この女性との邂逅は衝撃的だった。
……僕がこの女性に対して抱いている感情を一言で表すとするならば。
それは、一目ぼれに違いなかった。




