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北の砦にて 新しい季節 ~転生して、もふもふ子ギツネな雪の精霊になりました~  作者: 三国司
第二部・はじめてのおつかい

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ジルドの脳内絵日記 春2




挿絵(By みてみん)


ミルがやたらとすました顔をしてこっちを見てる……。

何か用かと尋ねれば、支団長に花をさしてもらったから俺たちにも見てもらいに来たのだという。

そうやって花をつけてると女の子らしくなるな。似合ってるじゃん。


でも気をつけろよ、後ろからキックスが来てるぞ。








挿絵(By みてみん)


キックスはミルの頭に花をさし直し、「こっちの方がミルっぽくて似合ってるぞ……!」と、ひーひー言いながら笑っている。

おいおい、そんな悠長に笑ってていいのか。

ミル、あれ、支団長に言いつけに行ったぞ、きっと。


その後、氷の表情の支団長が、氷点下の眼差しで、キックスに注意をしに来たのだった。







挿絵(By みてみん)


砦に送られてきた手紙や荷物を仕分けていたら、サーレル隊長から支団長宛ての手紙を見つけたので、ミルと一緒に支団長に届ける。

サーレル隊長は、今はコルドの砦の副長になったらしいけど……支団長に何の用事だろう?








挿絵(By みてみん)


手紙の内容を少しだけ教えてもらった。

なんでも風の精霊がよくコルドの砦に遊びに来るようで、サーレル隊長はそれに喜びつつも、どう対応すればいいのか困惑しているらしい。

それでミルと仲良くやっている支団長に助言を求めてきたみたいだ。

サーレル隊長を気に入るなんて、風の精霊って変わり者なのか……?








挿絵(By みてみん)


外でミルとクガルグが派手な鳥と遊んでいる。

あんな鳥、この辺りに生息していたかなと不思議に思っていると、ティーナが「あれは風の精霊のハイリリスちゃんよ」と教えてくれた。

あれが噂の……。

しかし精霊三匹がその辺で遊んでいるこの砦の風景って、よく考えれば普通じゃないよな。








挿絵(By みてみん)


昨日は鳥かと思えば、今日はでかい黒羊がミルとクガルグを背中に乗せて庭を闊歩していた。

今度は何の精霊なんだ? だんだん砦が動物園じみてきたな。


ミルとクガルグはモコモコの毛に埋もれて気持ちよくなったのか眠ってしまったらしく、夕暮れ時になって黒羊に助けを求められた。

親が心配するだろうから、二人を起こしてくれってさ。

とりあえずミルに「起きろー」と声を掛けてみるも、うにゃうにゃ寝ぼけていて起きない。

すると黒羊は大人っぽくため息をついて、「仕方がないわね、私がそれぞれの親のところへ届けにいくわ」と言って消えてしまった。面倒見のいい精霊みたいだ。


翌日、ミルにあの黒羊の正体を訊けば、大地の精霊のダフィネだと教えてくれた。人型になると大人っぽい美女らしいので、次は是非そっちの姿で来てほしいな。








挿絵(By みてみん)


今日はぽかぽかと暖かく、気持ちのいい陽気だ。

のんきに空を飛ぶちょうちょを、のんきに見上げるミルを、のんきに見つめる休憩中の俺たち。

春だなぁ……。








挿絵(By みてみん)


花粉が飛んでいるのか、最近よくミルがくしゃみをしている。

けど、五回に一回くらいの頻度で、小さな光の玉が飛び出てくるのは何なんだ?

精霊の体って不思議だな。








挿絵(By みてみん)


あの光の玉は、ミルの妖精らしい。

妖精が何なのかはよく分からねぇけど、この落ち着きのなさをどうにかしてくれ。








挿絵(By みてみん)


ミルのくしゃみは相変わらずだが、今日はなんと口から吹雪を出した。

それで、その時たまたまミルを抱き上げていたキックスの顔面が雪まみれになる事件が発生。

だけどまぁ、キックスなら多少顔が凍ったって大丈夫だ。








挿絵(By みてみん)


今日突然、支団長から敷地内の雑草駆除の仕事を言い渡された俺たち。

そんなに荒れてるってわけでもないし、まだ草むしりはしなくていいんじゃないかと思ったけど、どうやら最近くしゃみを連発しているミルが可哀想だと考えての事みたいだ。

原因が雑草の花粉かは分からないけど、ま、多少でもミルのくしゃみが落ち着くなら、ダルい草むしりも頑張るか。








挿絵(By みてみん)


ミルがウサギリュックに何かをパンパンに詰めて、こそこそと食堂の方へ走っていくところを目撃した。

中身を廊下に点々とこぼしていってるけど、何だこれ? 木の実?








挿絵(By みてみん)


仕事を終え、夕食を食べに皆で食堂へ向かうと、中央のテーブルの上に山盛りの木の実が置いてあった。

料理長曰く、ミルが昼間に持ってきたんだそうだ。俺が目撃したあの時だな。

スノウレア山の麓で春の木の実が生っているのを見つけて、俺たちに持ってきてくれたらしい。

花粉症を心配してくれたり、草むしりをしてくれたお礼だってさ。あの子ギツネは精霊なのに、時々変に律儀で人間くさい。

騎士は八十人以上いるので、足りないといけないと三回に分けてウサギリュックいっぱいに収穫してきたらしい。人型になって摘んだとしても、あの小さな手でこれだけ集めるのは結構大変だったんじゃないだろうか。


あ、副長が『父の日に小さな娘からプレゼントを貰ったお父さん』みたいに静かに震えて感激しているし、支団長は自分の分の木の実をガラス瓶に入れて持ち帰ろうとしてる! 

食べるのもったいないからって取っておいても腐るでしょ、それ!








挿絵(By みてみん)


翌日、ミルがいつものように砦に遊びにきたので、「昨日はありがとな、木の実!」と礼を言うと、やたらと恥ずかしそうな、けれどなんだか得意そうな顔をしていた。

あれくらい何でもないよって口調だけど、しっぽに気持ちが表れてるぞ。

皆喜んでたから、ミルも嬉しかったみたいだ。






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