表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(第一部完結!)転生したら合衆国大統領だった件について 〜平社員の常識で、世界を動かしてみた〜  作者: 御手洗弾正


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/74

第五十九話:稟議と定時退社 (The Approval Document and Leaving on Time)

【免責事項】

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・事件などは、風刺を目的として創作されたものであり、実在のものとは一切関係ありません。


----------


「ドランプ大改革」と名付けられた、アメリカ政府の、日本企業化計画は、驚くべき速度で、実行に移された。


ホワイトハウスのウエストウィングは、巨大な日本のオフィスへと、その姿を変えた。

各部署の扉は、常に解放され、風通しの良い職場環境が、推奨された。オーバル・オフィスの一角には、なぜか、巨大な円卓が置かれ、「フリーアドレス・ワーキングスペース」と名付けられた。


そして、何よりも、ホワイトハウスの仕事の、進め方が、根本から、変わった。


【国務省、アジア政策担当課】


「……よし、できたぞ」

一人の、若手官僚が、安堵のため息をついた。

彼の前には、一枚の、電子書類がある。

【稟議書No.2025-A74】

【件名:南シナ海における、偵察飛行の、定例ルートの、一部変更に関する件】


彼は、その稟議書を、承認ルートの、最初の人物である、課長補佐のメールボックスに、送信した。

ここから、彼の稟議書の、長い旅が、始まる。

課長補佐 → 課長 → 部長 → 局長 → 国務次官 → 国務長官。

そして、それが、国防総省に回り、

担当官 → 課長 → …… → 統合参謀本部議長。

さらに、CIA、NSA、財務省……。


全ての「ハンコ」(電子サイン)が揃い、最終的に、大統領の元へ届くのは、おそらく、3ヶ月後だ。

偵察飛行ルートの変更という、ほんの些細な意思決定が、今や、壮大な、官僚主義の旅を、必要とするようになったのだ。


【PEOC(大統領危機管理センター)】


「……だから、なぜ、この稟議書が、俺のところに回ってくるんだ!」

ミリー議長は、机を叩いて、怒鳴っていた。

彼の目の前には、農務省から回ってきた、「来年度の、トウモロコシの、推奨作付面積に関する、考察」という稟議書が、置かれていた。

「知るか、そんなこと! 俺は、軍人だぞ!」


だが、稟議書の承認ルートには、確かに、「安全保障上の観点からの、食料自給率に関する、助言を求める」と、書かれていた。

彼は、舌打ちをすると、忌々しげに、「承認」のボタンを、クリックした。


【経営企画室】


「司書」の女性は、彼女のオフィスで、静かに、紅茶を飲んでいた。

彼女の目の前のモニターには、ホワイトハウス内を、蜘蛛の巣のように飛び交う、無数の稟議書の、流れが、可視化されていた。

誰が、どこで、承認を、滞らせているのか。

どの部署と、どの部署が、対立しているのか。

彼女は、もはや、何もしない。ただ、この、完璧な、官僚主義システムが、巨大な組織の、全ての情報を、吸い上げ、彼女の元へ、届けてくれるのを、待っているだけだ。

彼女は、今や、この国家という、巨大な機械の、真の、管理者だった。


【オーバル・オフィス】


そして、俺は。


「……ふむ」

俺は、ジェームズが淹れてくれたコーヒーを片手に、アシュリーが持ってきた、数枚の稟議書に、目を通していた。


【件名:ホワイトハウスの、来客用ティーカップの、新規購入に関する件】

【件名:閣僚専用トイレの、ウォシュレットの、最新機種への、交換に関する件】


全ての、関係部署の、サインが、揃っている。完璧だ。

俺は、満足げに頷くと、デスクに置かれた、大統領専用の、巨大な、承認スタンプを、手に取った。

それは、ジェームズが、俺の「ハンコ」へのこだわりを汲んで、特別に作らせたものだ。

俺は、それを、力強く、書類に、叩きつけた。


ドン!


「よし、承認アプルーブドだ」

「ありがとうございます、閣下」


それが、その日の、俺の、全ての、仕事だった。

俺は、壁の時計を見た。

午後5時。定時だ。


「よし。じゃあ、俺は、これで、お先に失礼する」

俺は、上着を羽織ると、立ち上がった。

「何か、緊急の用件があれば、稟議書を、回しておいてくれ。明日、朝一で、ハンコを押すから」


「……はい、閣下。お疲れ様でした」

アシュリーは、完璧な、日本のOLのような、お辞儀で、俺を、見送った。


俺は、鼻歌交じりで、執務室を、後にした。

最高だ。

これこそが、俺が、夢見た、理想の、サラリーマンライフだ。

責任は、ない。仕事は、ない。定時で、帰れる。

そして、給料は、世界最高額。


完璧な、日々。

俺は、この幸せが、永遠に続くものだと、信じていた。


その頃。

ロシア、クレムリン。

大統領執務室では、ヴィクトル・イワノフ大統領が、諜報機関からの、緊急報告を、読んでいた。


「……ホワイトハウスは、現在、意思決定システムが、完全に、麻痺状態。偵察飛行ルートの変更にすら、3ヶ月を要する、と……」

彼は、不気味に、微笑んだ。

「……面白い。実に、面白い。狂王の、次なる一手は、『沈黙』か。ならば、こちらから、少し、盤上を、動かしてやろうではないか」


彼は、部下に、短く、命じた。


「……ウクライナ国境に、部隊を、集結させろ。24時間以内にな」

ありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク・評価などいただけますと幸いです。

最新話は本日の11時10分更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ