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(第一部完結!)転生したら合衆国大統領だった件について 〜平社員の常識で、世界を動かしてみた〜  作者: 御手洗弾正


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第五十六話:月曜の朝礼 (The Monday Morning Assembly)

【免責事項】

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・事件などは、風刺を目的として創作されたものであり、実在のものとは一切関係ありません。


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月曜日の朝。

ホワイトハウス、オーバル・オフィス。

俺は、淹れたてのコーヒーを片手に、窓の外を眺めていた。週末のキャンプ・デービッド行きは、例の襲撃事件のせいでキャンセルになったが、まあ、いい。月曜日の朝は、こうでなくてはならない。


「……よし。では、これより、定例の『朝礼』を始める」


俺の宣言に、ソファに座るミリー議長、ハリソン首席補佐官、そして、アシュリー補佐官が、緊張した面持ちで背筋を伸ばした。そして、その隣。俺が「社長席」であるレゾリュート・デスクの、来客用の椅子に座っているのは、黒いドレスに身を包んだ、我が社の新しい経営企画室長、「司書」だった。


彼女は、ワシントン到着後、アシュリーが手配したタワーマンションの一室に、「丁重に」案内されたらしい。そのマンションの周囲は、一個小隊規模の海兵隊によって、24時間体制で「警護」されている、とのことだった。


「まず、先週の振り返り(レビュー)だが」俺は、ホワイトボードの前に立ち、語りかけた。「例の、ホワイトハウス襲撃プロジェクト。これは、諸君の尽力により、なんとか、乗り切ることができた。特に、レオ・シュタイナー君の活躍は、素晴らしかった。後で、彼には、成功報酬として、ボーナスを支給するように。ハリソン君」

「は、はあ……」


「さて、今週の目標コミットメントだ」俺は、ホワイトボードに、こう書いた。

【今週の目標:『人類の最適化』プロジェクトの、キックオフ】


俺は、「司書」に向き直った。

「というわけで、司書君。君に、最初の仕事を、与える」

「……何かな? ミスター・プレジデント」

「この、『人類の最適化』プロジェクトの、具体的な、企画提案書プロポーザルを、作成してもらいたい。プロジェクトの目的、期間、予算、そして、KPI。それらを、パワーポイントで、50枚以内にまとめて、金曜日の定例会議までに、提出してくれたまえ」


それは、日本の会社では、新しくプロジェクトに参加した人間に、まず最初にやらせる、ごく当たり前の、仕事の進め方だった。

だが、その言葉を聞いた、ミリー議長の顔が、引きつった。

「か、閣下!お待ちください!彼女は……彼女は、捕虜なのですよ!? 世界を滅ぼそうとした、テロリストの首領に、我が国の未来に関する、企画書を、作成させる、と……?」


「何を言っているんだ、ミリー君」俺は、心底、呆れた。「だから、彼女は、もう、テロリストではない。我が国の、新しい、仲間だ。違うかね? 司書君」


俺が、そう話を振ると、「司書」は、静かに、頷いた。

「……承知した。ミスター・プレジデント。その、『きかくしょ』とやらを、作成しよう。だが、そのためには、情報が、必要だ」

「情報?」

「そうだ。この国の、成り立ち。法律。そして、国民性。それらを、理解せずして、有効な『きかくしょ』など、書けるはずがない。……私に、この国の、全ての情報データベースへの、アクセス権限を、与えてほしい」


その瞬間、PEOCとのホットラインを通じて、この朝礼を聞いていた、レオ・シュタイナーの絶叫が、スピーカーから響き渡った。

『……馬鹿野郎! 絶対に、許可するな! そいつに、アクセス権を渡すのは、会社の金庫の鍵を、泥棒に渡すようなもんだぞ!』


レオの言う通りだった。

それは、あまりに、危険な要求だ。

だが、俺は、少し、考えてから、答えた。

日本の会社で、新しく入ってきた、優秀な中途採用社員の、やる気を、引き出すための、常套句で。


「……いいだろう」

俺は、言った。

「君を、信じよう。アシュリー、彼女に、最高レベルの、セキュリティクリアランスを、与えてやってくれ」


『あああああああああああっ!』

レオの、悲痛な叫びが、再び、響き渡った。


アシュリーは、幽霊でも見るかのような顔で、その命令を、メモに書き留めた。

こうして、世界で最も危険なハッカー集団のリーダーは、いとも容易く、アメリカの、最高機密情報への、アクセス権を、手に入れてしまった。


その日の午後。

ウエストウィングの一角に、新しく、「経営企画室」というプレートが掲げられた、オフィスが、用意された。

「司書」は、その、真新しいオフィスで、一台の、まっさらなノートパソコンの前に、座っていた。


彼女は、まず、検索エンジンを開いた。

そして、最初に、検索窓に、打ち込んだ言葉。

それは、彼女の故郷である、秘密結社「ヘルメス・トリスメギストス」に関する情報では、なかった。


彼女が、打ち込んだのは、


『島耕作、全巻、無料』


という、言葉だった。


彼女は、静かに、呟いた。

「……まず、敵の、思考の、根源ソースコードを、理解することから、始めよう」


彼女の、本当の戦いは、今、静かに、そして、密やかに、始まった。

世界最強の国家の、心臓部で。

一人の、サラリーマンの、バイブルを、読み解くことから。

ありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけましたら、ブックマーク・評価などいただけますと幸いです。

最新話は本日の20時10分更新予定です。

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