097:期末テストに向けて
六月二十一日 金曜日
仮想空間でまなみから散々可愛がられた艦治。
優しいタッチから始まり、性感帯から受けるこそばゆい感覚、破瓜の痛みから徐々に快感へ変わる感覚を知り、我慢しても漏れ出てしまう声(まなみの声)が鼓膜を震わせ、知らず涙が零れ落ち、そして目の前が真っ白になり意識が飛ぶという体験まで受けさせられた。
「……朝」
「…………うん」
仮想空間での出来事なので、肉体的な疲労はないはずの艦治だが、朝起きる事が出来ないくらいに疲れていた。
艦治は仮想空間から現実に戻り、治療用ポッドを出てシャワーを浴びた後、そのまま第一特別手術準備室のベッドで寝てしまった。
「……学校」
「…………うん、分かってる」
まなみとしては、普段のセックスよりも肉体的快感が少なかったのだが、艦治が自分の下で恥じらい、感じ悶えているのを見て異常なほどに興奮してしまい、艦治がもう無理だと言っても聞かずに責めて責めて責めまくっていた。
本来備わっていない性感帯を刺激され、許容出来ないほどの快感に襲われた為、艦治は精神的に疲労して起きれなくなってしまった。
「……ごめんね?」
「…………良いけど」
「……好きだよ」
「僕も好きだよ。愛してる」
二人は裸で抱き合い、キスをして仲直り(?)をした。
≪おっと、元気になったね! 時間ないから仮想空間でする?≫
≪しばらく仮想空間はいいや……≫
その後、身支度を整えてそれぞれの自宅へ戻り、ミニバンで艦治と司(まなみ)とマーシェ(雅絵)が合流し、学校へと向かった。
艦治と司が教室に入ると、良光と望海が話し掛けて来た。
「侵略迷宮攻めるって言ってた件だけどよ」
「うん、明日から本格的に始める予定だよ」
艦治は良光と小まめに連絡を取り合っており、探索活動の予定も伝えてあった。
「せーぎさんに話したら、穂波さんに待つように言うってよ」
「え? 何で?」
「もしかして井尻君、期末テスト忘れてる?」
「あー……」
艦治はすでに付属大学への内部進学がほぼ決まっているようなものなので、テストという大イベントをすっかり忘れてしまっていた。
「せーぎさんが、学生なんだから勉強が第一じゃないとおかしいだろって言い出して、本格的に攻略するなら期末テストが終わってからじゃねぇかってさ。
ぽろっとテストの事話しちまったんだよな……」
「私が言っちゃったんだ。訓練は期末テストが終わってからにしたいですって」
艦治達の高校の期末テストは七月第一週目に予定されており、その結果が内部進学にかなりの影響を及ぼす為、本来は探索活動などしている場合ではない。
「まぁ仕方ないよね。テストの方が大事だもん。
蒼井さんも付属の大学行く予定?」
「うん、そうだよ。
だから来年はまなみちゃんと一緒に並んで授業受けられるんだー」
≪楽しみだね!≫
司が喜ぶのは不自然なので、まなみは電脳通話で返事をした。
「いや、学部によって全然講義違う可能性あるだろ……」
艦治とまなみは内部進学がすでに決まったも同然だが、良光と望海も自分の学力的に、内部進学が認めらるだろうと予想している。
「ってかその前にテスト勉強しなきゃだね。
どこかに集まってみんなでする?」
望海がそう言い出したタイミングで、恵美が教室に入って来た。
「おはよー。私も入れてー」
「藤沢を入れるんなら亘にも声掛けねぇとな。
あいつ仲間外れにしたら昼休みうるさそうだし」
「って事は、僕とまなみと良光と蒼井さんと藤沢さんと亘とで、合計六人か」
「えー? 何で井尻君の彼女さんがそこに入るのー?」
艦治はつい口を滑らせ、まなみの名前を出してしまう。
「あ、間違えた。まなみじゃなくて司だった。
いやー、友達と彼女の名前を間違えるなんて恥ずかしいなぁ」
「ふーん、よっぽど彼女さんの事が好きなんだねー」
恵美の言葉を受けて、司がニコニコと笑顔を浮かべる。
艦治はまなみが余計な事を口走る前にと、話を先に進めた。
「まぁ六人である事に違いはないんだけど、問題はどこでテスト勉強するかだよね」
「ファミレスとかかな?」
望海も艦治に続いて、勉強場所についての提案をした。
「俺んち来るか? 土日二日とも来ても問題ねぇぞ」
「あー、最近良光の家行ってないし、輝さんと彩ちゃんにも会いたいな」
艦治の口から自分以外の女の名前が出るのを聞いて、司の表情が曇る。
≪まなみちゃん、今は司君なんだから我慢して!≫
≪……はっ!? 私今どんな顔してた?≫
≪般若みたいだったよ?≫
≪自分の顔は全然動かせないのに、遠隔操作だったら逆に我慢しないとダメなのかー。何か別の事考えて気を紛らわせないとだね。そうだ! 手術大丈夫だった?≫
≪あぁ、うん。すぐに終わったよ≫
≪私も受けてそんなに経ってないけど、めちゃくちゃ良いよね!≫
≪え? 良いって何が? 生理が来ないからって事? まだひと月経ってないのに違い分かるの?≫
≪いやいやそっちじゃなくって。セッ……、おっと≫
≪ちょっと! 学校で何て話してくれるのよ!! また良光君の顔見れなくなっちゃうじゃん!!≫
≪まだだったかー。ごめんごめん。でも、良いよーーー≫
≪だから!!≫
キーンコーンカーンコーン♪
一時間目開始のチャイムが鳴り、それぞれの席へと戻るのだった。




