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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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093:人型妖精(金髪)

六月二十日 木曜日

 昨夜、艦治(かんじ)とまなみは一度も自宅へ帰らずに、海中秘密基地にて過ごした。


≪そう言えば、雅絵(まさえ)さんには(つかさ)を操作してもらうの?

 そうなるとまなみが学校に来れない事になるよね?≫


≪ちゃんとナミを通して翔太(しょうた)さんにお願いしてあるよ≫


 二人は朝の身支度を済ませ、亜空間収納から取り出した朝食を摂っている。

 まなみが翔太へ何かを頼んだと聞き、嫌な予感を覚える艦治。



 二人は一度、ワープゲートを通ってそれぞれの自宅へと戻った。

 艦治が迎えに来たミニバンに乗り込むと、まなみの肩にナギとナミそっくりの人型妖精が座っていた。

 ナギは黒髪、ナミは白髪だが、この新しい人型妖精の髪色は金髪だ。


「艦治様、おはようございます」


「……雅絵さん?」


「雅絵ちゃんには司の支援妖精という形で私達のそばにいてもらう事にしたから」


 司の中に入っているまなみが、艦治の疑問に答えた。


 まなみは昨日、仮想空間にて雅絵から様々な性技を教えてもらう過程で、人は膣がなくても男性を篭絡させる事が出来ると知った。

 その為、雅絵本人の性欲を抑えようが、性器を持たないヒューマノイドを与えようが、雅絵がやろうと思えば艦治を射精に導く事が可能だと気付いてしまった。


 そこで考えた結果、人と同じ大きさのヒューマノイドではなく、人よりも小さな人型妖精を与えれば良いだろうと思い至ったのだ。


「えーっと、雅絵さん本人は今どこにおられるんですか?」


「昨日の夜にリニアに乗って東京へ戻り、今は車に乗って職場に向かっています」


 雅絵はスキルガチャで遠隔操作スキルだけでなく、並列処理スキルも手に入れたので、出勤しながら支援妖精を動かす事が可能となった。


「さすがにそれは危ないんじゃないですか?」


「昨日、仮想空間内でスキルの使用方法を教えて頂いたので、ある程度問題ないだろうと判断しております。

 妖精を通じてお二人がお困りの事はないかを確認し、私自身が即対応させて頂きます」


 雅絵はそう話しているが、艦治はナギへ危険がないよう見守っておくように指示を出した。


「それでさ、この妖精の名前を決めておきたいんだけど、雅絵ちゃんが操ってるから『マーシェ』で良い?」


 まなみの提案を聞き、艦治は頷いた。


「マーシェに話す時はナギに話すみたいに普通に喋ってね。支援妖精に敬語で喋るとまた変に思われるから」


「あー、そう言えばそっか」


 そう言いつつ、艦治は翔太が操っている白雲に目をやる。


≪白雲には声を出す機能が備わってないから気にする必要ないよ≫


≪確かに≫


≪まぁボクの事はいないと思っててくれたら良いから、話し掛ける事もないだろうけどねー≫


 白雲を見つめている艦治に、マーシェ(雅絵)が声を掛ける。


「私から一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」


「はい、じゃなくて、うん。良いよ、何?」


 マーシェ(雅絵)が艦治にぺこりと頭を下げた後、質問を投げる。


「私以外にお二人の事情を把握している方はおられるのでしょうか?

 あ、お名前まで教えて頂く必要はございません」


「いるね」


「その方は今までの接し方を変えられたり、何かをお願いされたりはしませんでしたか?」


「ないよ、態度は今まで通りだね」


 艦治の返答を受けて、マーシェ(雅絵)が大きく頷いた。


「周りの方々に恵まれておられるのですね。神州丸(しんしゅうまる)との繋がりを得るという事は、お金や地位を手に入れる以上の価値があります。

 その事を知っても、艦治様を妬む事も集る事もないお方は非常に得難い存在です。

 大切にされるのがよろしいと思います」


「うん、そう思うよ」


 艦治は両親と良光(よしみつ)を思い浮かべる。

 両親は現在、治奈(はるな)を蘇生させる為に研究所に籠もり切りになっている為、マーシェ(雅絵)と顔を合わせる事はほぼないだろう。

 しかし、良光は毎日学校で顔を合わせる事になる。


 雅絵であれば、艦治と良光の関係性を見た上で、良光が艦治の事情を把握しているであろう事に気付くだろう。

 であるならば、先に自分から雅絵に対して話した方が良いと判断した。

 日本政府との交渉の仕方も幅を持たせる事が出来るだろうし、何より自分とまなみが堅苦しい思いをせずに済む。

 どうせ雅絵が裏切ろうとしたり、情報漏洩してしまったりというリスクはあまり考える必要がない。


「マーシェ、というより雅絵さん。今から僕とまなみの事情を話すけど、絶対に口外したり漏洩したりしないと約束してほしい。

 もし雅絵さんから情報が漏れた事を確認したら……」


「漏洩する前に殺して頂いて問題ありません」


 マーシェ(雅絵)が覚悟を決めた表情で、艦治を見上げる。


「わーお、覚悟ガン決まりだねぇー。でもこれ、脅しじゃないからね? 私は雅絵ちゃんが死んじゃったら悲しいから、ホントに気を付けてね。わざとじゃなくても漏れる時は漏れるだろうし」


 まなみはすでに雅絵の事を気に入っており、そう簡単に排除出来るような存在ではなくなっている。


「はい、情報の取り扱いには十分に注意致します。また、周辺にも気を付けて行動するように致します。

 その上で、万が一私が原因で情報漏洩が起きてしまった際は、容赦なく切り捨てて下さい」


 雅絵の覚悟を確認し、艦治は自分が神州丸の前艦長、三ノ宮(さんのみや)伊之助(いのすけ)と同じDNAを持っているらしいという事を説明するのだった。

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