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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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090:探索ポイント稼ぎ

≪と言う事で、雅絵(まさえ)ちゃんを私の秘書として採用する事になったからねっ≫


≪と言う事で、じゃないんだよ。どういう経緯なのかさっぱり分からないんだけど≫


 まなみはすっかり雅絵を有能な秘書であると認めており、すでに心を許している。

 艦治(かんじ)は電脳通話でのまなみのテンションから、何かしらまなみにとってのメリットを提示されたのだろうと理解したが、内容までは想像出来ていない。


「奥様にお認め頂けましたので、さっそく私は迷宮(ダンジョン)でポイントを稼ぎに向かいたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」


 雅絵もまなみの事を奥様呼びし、自らの主であるかのように立てている。

 そんな二人の様子を見て、艦治も雅絵の事を仲間として迎える事を決めた。


「いや、ちょっと待って下さいね」


 仲間として認めたとはいえ、ある程度の保険は欲しい。

 友達であれば裏切られたとて、信用した自分の責任だからと、ある程度諦めが付くが、自ら売り込んで来た雅絵に対しては、何かしらの裏切り予防策を用意しておきたいと艦治は考えた。


≪ナギ、天辺(あまべ)さんが裏切らないようにする、もしくは裏切りそうになったら分かるようにって出来る?≫


≪私が常時監視し、敵対的行動を起こそうとしたと判断した際にインプラントを無効化する事が可能です。

 また、周辺警備として付ける警備ヒューマノイドに即時拘束させる事も出来ます≫


 雅絵が電脳OSを使う際、全ての操作をナギにモニタリングされる為、何かを企んでいると察知する事が可能だ。

 また、電脳OSを用いないで裏切りを画策したとしても、雅絵の視界と聴覚を常にモニタリングしているので、ナギにバレずに行動する事はほぼ不可能に近い。


 それらを確認した後、艦治は雅絵を受け入れる事に決めた。


「分かりました。天辺さんにまなみの秘書として力を貸してもらいたいと思います。

 ただし、不審な行動をすれば神州丸(しんしゅうまる)に働き掛けてでも報復します。

 良いですね?」


 艦治の言葉を受け、雅絵がソファーから立ち上がって頭を下げる。


「さっきも言いましたけど、堅苦しいのは居心地悪いので普通にして下さい」


「……分かりました。

 でしたら私の事は雅絵と呼び捨てにして下さい。敬語も不要です」


「いえ、そういう訳にはいかないので。

 僕からは雅絵さんと呼ばせてもらいますね」


≪ねぇねぇ、今から探索行くって行ってるけど、ここからワープゲートを使って神州丸の病院で全スキルをインストールしちゃえば良くない? ってか全部話しちゃえば早くない?≫


 まなみは艦治が神州丸の艦長である事を打ち明けるべきでは、と提案するが、艦治はこれを否定した。


≪いや、まだ早いかな。追々で良いんじゃない?≫


≪えー、でも探索ポイント稼いでスキルガチャさせてってめちゃくちゃ時間掛かるよ?≫


 まなみはまどろっこしい事をせずとも裏切る事は出来ないのだから、雅絵を手っ取り早く使える駒に仕上げようと訴える。

 が、艦治は応じない。


「よし、今からみんなで幻想(ゲーミング)迷宮(ダンジョン)行こう!」


 今朝、帰ったらすぐに仮想空間でそれぞれのアバターを使って、男女入れ替えてのセックスを試そうとまなみから誘われていた為、艦治はそれを回避すべくダンジョン行きを提案する。


≪えー、今から? まぁ雅絵ちゃんの為なら良いけどさー≫


「ありがとうございます。久しぶりに探索活動をしますので、心強いです」


 雅絵は二人に断って、ホテルを出る準備を始める。雅絵はこの部屋に付いている寝室でジャージ姿に着替えたので、スーツケースなどの荷物を持って出なければならないのだ。


≪ふふふっ、仮想空間の時間をいじれるから、遅くなってもそんなに問題ないんだよねぇ≫


「あ゛っ……」


 艦治の思惑はまなみに勘付かれていた。



 艦治のミニバンで移動し、入国管理局を経由して神州丸へ到着。

 それぞれ更衣室で着替え、探索準備を整えた後、艦治とまなみと(つかさ)(ナギ)の四人で幻想迷宮へ入った。


「薙刀?」


双頭槍(そうとうそう)です。あまり使用している探索者は多くありません≫


≪まるで踊ってるみたいだねぇ≫


 雅絵は舞うように両刃の槍を振り回し、妨害生物(モンスター)を蹴散らしている。


「ふぅ……。

 久しぶりですが、腕は鈍っていないようです」


≪元々薙刀か何かを習ってたの?≫


 まなみの問い掛けに、雅絵は電脳通話で答える。


≪いえ、薙刀は習っていません。槍術と棒術のスキルを持っているのと、大学時代に付き合っていた年上の探索者から教わりました≫


≪なるほどねぇー≫



 その後、モンスターを見つけては雅絵が走って切り掛かる、という事を繰り返しているうちに、段々とまなみが飽きて来た。


≪何か効率良い方法ない? ドラゴン出す?≫


≪雅絵さんはまだ魔法スキル持ってないからダメでしょ≫


 この探索が終わった後、雅絵にもスキルショップ経由で魔法スキルを排出させる予定になっている。

 ただし、熟練度は艦治やまなみほど高くするつもりはないが。


≪じゃあ向こうからモンスターがいっぱい来るようにすれば良いんじゃない?≫


≪うーん、もし雅絵さんで捌き切れなかったら僕らが出れば良いし、そうしようか。

 ナギ、お願い≫


≪了解致しました≫


 ナギが迷宮内のモンスター出現率をいじり、迷宮の壁から天井から床からと、次々にモンスターが大量に姿を現した。


「何だこれは!?」

「こんなの聞いた事ないぞ!?」

「もたもたするな、稼ぎ時だ!!」

「自信のない奴は後ろに下がれ!!」

「帰ろうとしたタイミングでこれかよ!?」


 周りの探索者が騒ぐ中、雅絵が最前線へと走って突っ込んで行く。


≪僕らもちょっと暴れよっか≫


≪りょーかい!!≫

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