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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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083:海中秘密基地

 神州丸(しんしゅうまる)に到着し、艦治(かんじ)とまなみは第一特別手術準備室へと向かった。

 道中幾人かに声を掛けられたが、まなみが腕を引っ張って歩き続ける為、艦治はまともに相手をする事が出来なかった。


≪ほら、脱いで。早く≫


「いや、僕はシャワーする必要ないんだけど……」


 まなみに脱がされ、艦治も全裸に剥かれる。そして二人でシャワールームへ入り、医療用ヒューマノイドに全身を洗浄された。

 バスローブを着せられ、二人が第一特別手術室へ通される。医療用ポッドにまなみが入るのを、艦治は外から見守った。



≪ヤバい、ヤバいってコレ……≫


≪ずっと、ずっとこうしてよぉ? ねっ?≫


 無事排卵抑制手術を終えたまなみは、全裸で濡れたままの姿で艦治の手を引き、第一特別手術準備室に備え付けられている寝室のベッドに押し倒した。

 二人の間を遮る壁(避妊具)がなくなり、お互いを激しく熱く求め合い、体力が尽きるまで貪り合った。


≪この手術、皆が受ければ良いのに。生理の悩みがなくなるだけじゃなくって、すっごい満足感だよ。二人が溶け合って交じり合うみたいな充足感、もう離れたくないって思っちゃうもん≫


「いや、でも人によっては性病をばら撒く原因になっちゃう場合もあるんじゃない?

 性病も治療用ポッドで治せるのかも知れないけど、探索者じゃない人が感染したら大変でしょ」


 二人はゆっくりと休憩した後、再びシャワーを浴び、今は服を着てソファーでアイスコーヒーを飲んでいる。


≪あー、それはそっか。私達は特定の相手としかしないけど、そうじゃない人もいるもんね≫


「あんまり積極的にこの手術を広めない方が良いかもね。マスコミに取り上げられたら女性探索者が変な目で見られる可能性があるし」


 女性探索者相手のセックスは避妊具がいらないらしい、などという噂が流れても困る。


≪でもママには教えといてあげよっと≫


「……それは僕の前で言う必要はないんじゃないかな」


≪あ、ごめんごめん。でも望海(のぞみ)ちゃんにも教えといてあげたいなぁ。私はそれほど重い方じゃないけど、人によってはひと月のうち半分はしんどいって場合もあるって聞くし≫


「それは、うん。まなみに任せるよ。僕から良光(よしみつ)に言うつもりはないから」



 しばらくまったりした後、本日の本当の目的を果たすべく、艦治がナギへ問い掛ける。


「ここから海底秘密基地に行ける?」


「はい、もちろんです。ワープゲートをお出しします」


 ナギの言葉と共に出現したワープゲートに、艦治とまなみが迷いなく入って行く。

 ワープゲートを抜けると、そこは自分の足元も見えにくいほどの明るさしかない空間だった。

 上下左右、周囲全てアクリルのような透明な板張りになっており、天井だけでなく足元も透けて見える。

 高さは五メートル、縦横は二十メートル四方ほどの区切りのない部屋になっており、中にはまだ何も設置されていない。

 部屋の外すぐに様々な魚が泳いでおり、わずかな陽の光を反射させ、キラキラと輝いている。


「……綺麗」


 まなみも思わずそう零すほどの光景が広がっている。


「ここって海底どれくらいの深さなの?」


 抱き着いてきたまなみの後頭部を撫でながら、艦治がナギに問い掛ける。


「海底ですと生物の生息密度が低い為、あまり良い景色ではありませんでしたので、海中五十メートルの座標に空間固定してあります。神州丸の艦尾から約二百メートル付近ですので、近辺を船が通る事はありません。

 地震や津波の影響は全く受けないようになっております。

 周囲には魚が寄り付きやすいよう常に餌を撒いており、遠くまで見通せるよう近海の水質を調整しております。

 室内に設置する設備や家具などはお好みを伺った上でご用意致します」


 元々は二人きりの海底水族館をイメージしていたが、艦治が思っていたよりも自由度の高い秘密基地そのものだった。


「じゃあ海底秘密基地じゃなくて、海中秘密基地だね」


 広い海中にポツンと存在する、秘密の部屋といった雰囲気だ。ここにあると知らなければ、偶然見つけるのは非常に難しいだろう。


≪ここはワープゲートを使えばどこからでも来れるの?≫


「はい」


≪って事は、自分の部屋からワープゲートを通れば、ずっとこの秘密基地にいられるって事だよね!? 私とかんちの新居じゃん!! 毎日一緒にいられるじゃん!! 同棲じゃん!!≫


 まなみの口角がわずかに上がっているが、艦治の胸元に顔を押し付けてる為、艦治からは見えない。


「……確かに」


≪ナギ、ここに上下水道を設置するのは可能?≫


「可能です。問題ございません」


≪じゃあ広めのお風呂、もちろん外が見えるようにして、浴槽は二人が足を伸ばして入れるくらい大きいの。おトイレは念の為二つ。脱衣スペースに洗濯機はいらないかな。あとキングサイズのベッド。ご飯は亜空間収納で持ち込めるからキッチンはナシで良し。冷蔵庫も不要。あ、ここの空調ってどうなってるの? あと明かりも≫


「エーテル可動式の空調をご用意致しますので、温度や湿度、酸素濃度も調整可能です。

 調光設備も同様にご用意致します。室内だけでなく外を照らすものもご用意可能です」


 ナギの言葉を聞き、まなみがさらに指示を出す。


≪とりあえず空調とベッドを用意して。それ以外は明日で良いから≫


「え、もしかして今夜からここで生活を始めるつもり? まだ穂波(ほなみ)さんと真美(まみ)さんに話してないのに……」


 艦治としては、せめてまなみの両親に許可を得てから同棲を始めるべきだと考えていた為、今夜から同じベッドで寝起きするとは思っていなかった。


≪ママにはもう伝えたよ。排卵抑制手術の情報と引き換えにオッケー貰った≫


 まなみはすでに電脳通話で真美の了承を得ていた。

 手際の良さに驚く艦治の目の前にワープゲートが出現し、井尻家で待機していた心乃春(このは)心乃夏(このか)加見里(かみり)家で待機していた(かえで)(みお)が出て来て、亜空間収納からベッドや空調など必要なものを設置し始めた。


≪みんな、ご苦労様。後は二人でやるから≫


「「「「かしこまりました」」」」


 すぐに設置が終わり、まなみが四人に労いの言葉を掛けると、再びワープゲートが出現し、四人とナギとナミ、白雲とシルヴァーが海底秘密基地から出て行った。


≪二人っきりだね……≫


「……この流れって」


 艦治がまなみの意図に気付いたのは、ベッドに押し倒された後だった。

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