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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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082:若者の性事情

 生徒会長の(わたる)から解放された後、艦治(かんじ)(つかさ)(まなみ)と良光(よしみつ)望海(のぞみ)は校門へ向かった。


「あの、本当に車使わせてもらって良いの?」


 望海はすでに今朝、良光が乗って迎えに来たミニバンに乗って登校している。


「良いよ、全然問題ないから。僕のせいで変な事に巻き込まれるのを避けたいしね」


「……そっか、ありがと」


 艦治は周りに被害が出ないよう人を避けて生きるより、周り全部を守る事を選んだ。

 変な言い掛かりも、妬みや嫉みも、全て真っ向からねじ伏せるつもりで動き出している。


「じゃ、また明日な」


「うん、お先」


 艦治とまなみは良光と望海に手を振り、校門前で止まったミニバンに乗り込んだ。

 中に乗っていたまなみが、望海に向かって無表情のまま手を振った。望海が笑顔で振り返すと、ミニバンが音もなく走り出した。


「……やっぱり抱き着かれるならまなみの方が良いよ」


≪あ、そうだったそうだった。はい、おいでー≫


 まなみが艦治の頭を胸へと(いざな)う。艦治は目を閉じて、その柔らかいぬくもりに包まれる。


≪そう言えば海底秘密基地ってワープゲートから行くんだよね? 今はどこに向かってるの? 神州丸(しんしゅうまる)?≫


 艦治の頭を優しく撫でながら、まなみがナギへ問い掛ける。


「神州丸でも問題ないのですが、艦治様のご自宅の方が近いのでご自宅へ向かっております」


≪お、かんちのおうち二回目だー。前行った時はベッドの下チェックもタブレットチェックも出来なかったしちょうど良いやぁ≫


≪……タブレットは年齢認証があるから、そういう画像を見たりは出来ないよ≫


 艦治がまなみの胸に顔を(うず)めたまま言う。

 従来のインターネットに神州丸からもたらされた科学技術が活用され、セキュリティなどが強化された結果、未成年の性事情がやや乏しくなってしまった。

 未成年男子達はこれを、神州丸唯一の罪として挙げている。


≪そっか、タブレットは大丈夫って事だね。タブレットは、ね≫


 インターネット上のアダルトコンテンツから未成年(女子も含む)が締め出されてしまったのを哀れに思った成人男性達は、身近な未成年男子に紙媒体のエロ雑誌を融通してやり、若く滾る性欲が間違った方向に行かないよう導いてやっていた。

 成人女性は主に未成年女子へ自らの体験談や流れて来た噂話を語る事で、性とは決して汚く醜いものではないと教え聞かせていた。


 紙媒体のエロ雑誌と体験談や噂話までは、神州丸の技術をもってしても止める事が出来なかったのだ。


≪ナギ、かんちの部屋にどれだけのエロ雑誌があるか教えて≫


≪ございません≫


≪ない? ホントに?≫


 艦治はまなみと付き合う事になった後、保有していたエロ雑誌を全て処分した。もっとも、視力が極端に低かった為、それほど多く持っていた訳ではないが。


≪タブレットではそういうのは見れない、紙媒体でも持ってないってのは、どうなの? 一人でしたりしないの?≫


 まなみも女子高時代、様々な体験談や噂話を聞いていた。まなみは無表情で無口なだけで、人との関わりを極度に避けていた訳ではなく、友達もそれなりにいる。

 今は艦治を最優先にしている為、会ったりはしていないが。


≪……まなみ以外でそういう事するのは違うかなって思って、全部捨てたんだ。まなみも嫌がるだろうしさ≫


≪でも初めてした時から二回目まで、それなりに時間空いたよね? あ、でもその前に仮想空間でしたか。でも男の子って一日一回は一人でするんでしょ? どうしてたの?≫


 まなみのこの問い掛けに対し、さすがに艦治も答えるのを躊躇っている。


≪ナギ?≫


≪私からは何とも申し上げられません≫


 ナギの返答を受けて、まなみが艦治の股間にそっと手をやる。そこには激しく自己主張するものがあった。


≪え、もしかして自分ではしてないの?≫


≪毎日腕に抱き着かれて、柔らかい感触を押し付けられて、我慢出来る訳ないでしょ?

 ……まなみとの初めてを思い出しながらしてるんだよ! 言わせんな恥ずかしい≫


 艦治はまなみに対し、正直に打ち明けてしまった。まなみに対して極力隠し事をしたくないと思っているとはいえ、直後に少し後悔し始める。


≪はぁ、言うつもりなかったのに……≫


≪えっと、何て言って良いか分かんないけど、嬉しい、よ? うん、ホント……≫


 まなみの顔は無表情のままだが、少し頬が赤く染まっている。

 そして照れ隠しの為か、ナギに並行世界の日本の性事情を聞いてみる。


≪ナギ、向こうの日本ってそういうのはどうしてるの? 仮想空間で出来るからって、実際に会ってするのは変わらないでしょ?≫


≪はい。会える距離にいる恋人や結婚相手との性事情は、こちらの世界とそう変わらないと思われます。

 大きく違うのは避妊方法でしょうか。特定の相手に限定して性交渉を行う場合、避妊具は使用されません≫


 まなみの照れ隠しの為の質問で、かなり大きな情報がもたらされた。


≪避妊具を使用しないって、赤ちゃん出来ちゃうじゃん。避妊したらダメな法律でもあるの?≫


≪いいえ、排卵そのものを手術で抑制致します。従って妊娠も致しませんし、生理も来ません≫


≪……それって女性の身体に影響ないの? ホルモンバランスとか崩れそうだし、そもそも手術で妊娠しないようにするってのが危ない気がするんだけど≫


 艦治がまなみの胸から顔を離し、ナギに問い掛ける。


≪全く影響はありませんし、再度手術で排卵を再開させる事も可能です。

 初潮を迎えて数年のような、身体が未成熟な女性には禁止されておりましたが、全ての成人女性が排卵抑制の手術を受ける権利がありました≫


≪ナギ、神州丸の医療用ポッドでも手術出来る?≫


≪もちろん可能です≫


 艦治の自宅へ向かっていたミニバンは、まなみの指示によって進路を神州丸の方向へと変えるのだった。

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