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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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080:進学の影響

六月十八日 火曜日

≪世界各国から転入希望者が殺到しておりまして、念の為お伝えしておくべきと思いまして≫


≪そうですか、わざわざありがとうございます≫


 艦治(かんじ)が朝食を摂っていると、文部科学省所属の博務(ひろむ)から電脳通話が入った。

 内容は、世界各国から日本の外務省へ、艦治が通う高校への転入希望者がいるので受け入れてほしいという要請があったという報告だ。


 留学ビザはある一定の学力を有している事を条件に、比較的取得しやすくなっている。

 日本の学校で勉強した若者が国に帰る事が、日本の国益になると考えてられているからだ。もちろんそのまま日本で就職するケースも見られる。


≪正規方法での留学を拒否する事はありませんが、恐らくほとんどの希望者が通われている高校へ転入する事は出来ないでしょう≫


 艦治が通う付属高校はレベルがそこそこ高く、母国語が日本語でない留学希望者には転入試験をパスするのは難しいだろう。


≪ですが、大学となると話は変わります。元々留学生を受け入れている大学ですし、まだ来年度の入学生も確定しておりませんから、多くの国は大学へ人員を送り込むと考えられます≫


≪なるほど、分かりました≫


≪……こちらで手を回して審査基準を引き上げさせる事も可能ではありますが≫


≪いえ、留学生を受け入れ拒否させるような権利は僕にはありません。

 外国人の同級生が増えるだけですし、その同級生が困った人でなければ、僕がとやかく言う事ではありません≫


≪承知致しました。

 そうそう、早ければ明日にも国会で空飛ぶ車特区構想が議論されるようですよ。神州丸近辺で使用可能にするのだとか。外交大使のナギさんから素案が提供されたと聞いております≫


≪……そうですか。それは楽しみですね≫



 身支度を整え、艦治が家を出て(つかさ)(まなみ)を乗せたミニバンに乗り込む。

 すかさずまなみが艦治の腕に抱き着く


「はぁ……、今日もBLか」


「中身が私なの知ってるんだし良いじゃん。別に教室でちゅっちゅする訳でもないんだしさー」


「どうせならまなみそっくりのヒューマノイドを作るんだった」


「それは、何か嫌。自分で自分を遠隔操作するくらいなら自分自身がかんちの隣にいた方が良いもん」


「じゃあまなみによく似た別のヒューマノイドとか」


「例えヒューマノイドでも私以外の女とイチャイチャするのは禁止!!」


「中身がまなみでも?」


「それでもダメなの! あ、急に心乃春(このは)心乃夏(このか)の事が危険分子に思えて来た……」


「いやいやあの二人は元々ナギなんだから、そんな事したりしないよ。

 そもそもそのナギも妖精の姿でずっと僕のそばにいるんだし」


 今朝も妖精ナギは、翔太(しょうた)が遠隔操作する白雲に乗っている。

 ナミとシルヴァーは、まなみ本体が寝転がっているベッドの上で待機している。


「そっか、ナギの心乃春と心乃夏は良いとして……。同級生には目を光らせないと!  やっぱり司を転校生として学校に送り込んで正解だね!!」


 まなみは艦治から、高校への転入希望者が殺到している事をすでに聞いている。


「それに私が無条件で大学に入学出来るようお願い出来たのも良かった。成績は悪くなかったけど、さすがに世界中からの入学希望者に勝てるほどの点数が取れる自信はないもん。司経由で高校の時の成績を文科省の山中(やまなか)さんに送ったら、問題ないだろうって連絡来て安心したよー」


 艦治目当てに付属大学への入学希望者が殺到するという事は、それだけ一般入試の合格レベルが上がるという事だ。

 大学は一定の条件を満たしていれば誰でも入学試験を受ける事が可能だ。すでに大学を卒業している社会人であろうが、他の大学の教授であろうが、政府中枢のエリート官僚であろうが、他国が送り込んだスパイであろうが……。


「……僕が大学へ進学する事で、かなりの人達の人生を変えてしまったのかもね」


「それはもう考える必要なくない? 別に人を殺した訳でもないんだしさ。それに大学なんて誰もが入学出来るところじゃないんだし、一つだけって訳でもないしさ。そんな事を気にし出したらそれこそ鳳翔(ほうしょう)に引き籠んないとダメになっちゃうよ? そうなると神州丸(しんしゅうまる)をずっと駿河湾に置いとく意味もなくなっちゃうじゃん。神州丸を鳳翔に戻しちゃうと地球全体が困るでしょ? かんちが地球にいるだけで地球全体がおこぼれを貰ってるようなもんなんだから、かんちは好きな事してれば良いんだよ」


「うーん、そうなのかなぁ……」


「そうだよ、もっと楽しい事だけを考えようぜ☆」


 まなみが艦治の頭を胸元に抱き寄せる。


「……ない」


 まなみの柔らかな胸がない事に、艦治が不満を漏らす。


「ありゃ、それはごめんね。司におっぱいオプション付ける?」


「いらないよ、周りから変な目で見られるじゃん」


 艦治のご機嫌が斜めである事を察し、ナギが二人へ提案する。


「艦治様。先日ご要望頂いた海底秘密基地が完成致しました」


「「はやっ!?」」


 艦治とまなみが同時に声を上げる。


「つきましては、ぜひともお越し頂きたいのですが、今からいかがでしょうか?」


「いやいや、今から学校だから無理だよ。

 そうだなぁ、今日は迷宮(ダンジョン)に行かないから、学校終わったら見せてもらおうかな」


 まなみが侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)を攻略する件について、穂波(ほなみ)真美(まみ)へと相談した結果、次の土日から<珠聯璧合(しゅれんへきごう)>として本格的な攻略を開始する事に決まった。

 その為、今日は神州丸へ向かわないつもりだったので、予定が空いていたのだ。


「やった! ちょー楽しみ!! ペンギンいる? シロクマは?」


「……ペンギンもシロクマも、ご用意しておりません」


 ナギが申し訳なさそうな表情で、まなみに謝る。


「海底だし無理でしょ」

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