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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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078:ランキング一位と二位

 黒いミニバンが入国管理局の前へ向かって進むと、集まっていた探索者やその他見物人達が道を開けた。

 ミニバンが停まり、中から艦治(かんじ)とまなみと(つかさ)(ナギ)が降りると、周囲が口々に騒ぎ始める。


『おい、あの細いモヤシみたいな奴か?』

『あれが一九九位? 俺より上ってか?』

『私はあれくらいスリムな方が好きだけどねぇ』

『お前が上に跨ったら骨が折れそうだな』

『あっちのかわい子ちゃんは俺が貰おう』


 全て英語だが、艦治とまなみは言語理解スキルを持っているので全て把握している。その上で無視をして入国管理局へ入ろうとすると、身長二メートルを越える男性黒人が遮った。


「ちょっと待て。俺を知っているか?」


『知らん、興味ない、どけ』


 艦治が男を見上げながら、あえて英語で話す。


≪わぁーお、ワイルドぉ!≫


≪……何故か分からないけど、英語で喋ろうとするとちょっと強気になっちゃった≫


 英語で返事をした艦治に少し驚いた様子の黒人男性が、右手を差し出して自己紹介をした。


『これはすまない。

 俺はアメリカ所属の探索者、ルーエンス・フィッシュボーンと言う者だ』


 黒人男性、ルーエンスが日本語よりも丁寧な口調で握手を求めて来たので、艦治はその手を握り返した。


『俺はカンジ・イジリだ。探索者になったばかりだからあんたが誰かは知らん』


 ルーエンスがまなみにも手を差し出すが、まなみは反応せず、ナギがその手を握った。


『ツカサ・シキブ。神州丸所属だ』


『神州丸所属だと!? 何故カンジと行動を共にしている!?』


『彼の護衛だ。もし累計ランキング一位のお前が面倒ごとを起こすつもりなら、それを排除するのが私の仕事なのだが?』


 ナギが握手しているルーエンスの手をぎりぎりと締め上げる。

 ルーエンスは左手を上げて降伏を示すと、その手が解放された。


『突然声を掛けて悪かったよ。国からカンジと仲良くしろと言われててな、どんな奴なのか見たかっただけだ。

 カンジ、迷宮(ダンジョン)の中で会う事もあるだろう。その時は遠慮なく声を掛けてくれ』


『……考えておく』


 艦治のつれない返答に肩をすくめてみせ、ルーエンスは仲間と共に入国管理局へと入って行った。


『それで、累計ランキング二位はどうするつもりだ?』


 遠巻きに様子を窺っていた、アメリカ所属とは別の黒人の集団が艦治に近寄って来た。


『私も彼らと同じくMr.イジリの顔を確認しに来ただけですよ。

 ご挨拶させて頂いても?』


『カンジ・イジリだ』


 艦治は先ほどのルーエンスよりマシな態度を受けて、自ら先に自己紹介をする。


『私はイギリス所属のダートン・リドリスと申します。

 現在、累計ランキング二位の探索者です』


 ダートンが日本人のような綺麗なお辞儀をして見せた。


『お茶でもどうですかとお誘いしたいところですが、またにしましょう。

 貴方達は<珠聯璧合(しゅれんへきごう)>に所属しているのですよね?』


『そうだ』


『ホナミとマミさんにはいつもお世話になっています。そちらのマナミさんとも何度かお会いした事もあります。

 いずれ一緒に探索出来る日が来る事を祈っております』


 それでは、とまたお辞儀をして、ダートンは仲間と共に買取店の区画へ向かって歩いて行った。


「累計ランキングの一位と二位は外国人なんだね。てっきり日本人だと思い込んでたよ」


≪あの人達は国から直接依頼されて探索者活動をしてるからね。それくらいしないと戦利品の確保が難しいんだって。日本政府が規制を掛けて日本人探索者を手放さないからねぇ≫


 累計ランキングの上位は素の肉体が持つポテンシャルが高い黒人が多く占めている。

 が、買取金額として見比べると、探索者人口の多い日本が圧倒的に多く、その状況を覆すのはほぼ不可能と言える。


 そもそも日本は神州丸との友好条約を締結して以降、世界でも有数の入国が難しい国となっており、日本語が通じなかったり、犯罪歴があったりすると観光ビザすら下りない。

 それとは別に、探索者ビザという査証が新設されていて、かなりの難易度に設定されている。このビザがないと、神州丸の入国管理局を通る事が出来ない。


 そういう意味では、先ほどのルーエンスとダートンが艦治達に危害を加えたり、敵対行動を取ったりする可能性はかなり低いと言える。

 そのような行動を取ると、日本政府から探索者ビザが取り消される恐れがあるからだ。


 そのような説明をナギから聞いた後、入国管理局へ入ろうとした艦治に声を掛ける者が現れた。


「すみません、私天辺(あまべ)商事グループの……」


「あ、専属契約ならお断りします」


 男性が差し出した名刺を受け取らず、艦治は素っ気なく断った。変に気を持たせても、どうせ断る事には変わりないからだ。


「各種好条件をご提示……」


「いえ、神総研(しんそうけん)との専属契約がありますのでお断りします」


「神総研よりも……」


「いえ、いくら好条件を提示されても乗り換えるつもりはないです」


 そんな取り付く島もない艦治の態度に、男性はその表情を歪めてしまう。


「せめて話くらい聞けよ!? こっちはわざわざ出向いているんだぞ!! お前何様だ!!」


 声を荒げた男性が握りめている名刺を、まなみが素早く取り上げてナギに渡す。

 艦治が男性に向き直り、改めてお誘いを断る。


「もう天辺(あまべ)雅絵(まさえ)さんという方からご提案を受けてまして、説明を聞いた上で断っています」


「天辺、雅絵……? そんな人間は知らん!! 適当な事を言って煙に巻こうなんてそうはいかんぞ! 社会人を何だと思ってるんだ!!」


 男性のポケットに入っている携帯電話が鳴るが、男性は気にせずに怒鳴り続ける。


「探索者がどれだけ偉いか知らんが、買い取り手がいての商売だろう! 売買というものはあくまで買い手と売り手が平等な立場であり……」


 艦治と男性の周囲を不機嫌そうな表情で腕を組む探索者が取り囲んでいるが、男性は全く気付かずに怒鳴り続ける。


「我々天辺商事が買い取っているからこそ……」


 そんな探索者に謝りながらかき分けて、壮年の男性が現れた。


「貴様は自分が何をしているのか分かっているのか!?」


 壮年の男性が怒っていた男性の胸ぐらを掴んで怒鳴る。


「店長!? 何ですか突然!?」


 壮年の男性は天辺商事系列の買取店の店長であり、ナギから雅絵経由で天辺商事に連絡が入り、怒っている男性を止めるよう連絡を受けたのだ。


「何ですかも何もあるか! お前は自分が何をしているのか分かっているのか!? 雅絵お嬢様の信頼を損ねるような事をしやがって!! こっちに来い!!」


「お嬢様……?」


 壮年の男性は艦治達と周囲の探索者に謝りながら、男性を引きずって去って行った。


「はぁ……、面倒臭いな」


≪もっと分かりやすくかんちが重要人物だって示さないとダメなんだよ。探索者はすぐに気付いても、一般の人には理解出来ないんじゃない? これからずっと同じような目に遭い続けると思うよ? 今日だけで何回目?≫


 艦治はまなみに言い返す言葉が思い浮かばなかった。

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