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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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074:リハビリ

 授業中の(つかさ)(まなみ)は思いの外、真剣に先生の話を聞いており、艦治の邪魔をする事はなかった。

 休み時間に声を掛けられるなどしたが、まなみはほぼ無視して艦治とのみ会話しており、クラスメイト達の表情を引き攣られていた。


≪なぁ≫


≪その通りだよ≫


 良光(よしみつ)から入った電脳通話。艦治は要件も聞かずに肯定する。


≪だよなぁー≫


≪僕も聞かされてなかったんだ、勘弁してほしいよ……≫


≪艦長がんばえー≫



 そして昼休み、艦治(かんじ)まなみを連れて職員室へ向かった。


「お弁当は持って来た?」


「はい」


「じゃあ行きましょうか」


 英子は二人を連れて進路指導室へと移動した。


「お弁当を食べながら話を聞かせてもらうわ」


 英子も持って来た弁当の包みを解いので、艦治も亜空間収納から弁当を取り出して広げた。


式部(しきぶ)君は? お弁当忘れたの?」


 ただ座っているだけの司を見て、英子が声を掛ける。


「えっと、先生。彼は食事を必要としません。

 彼はヒューマノイドです」


「え、どういう事……?」


 昼休みになるまでの間に、艦治はまなみとナギとの間で口裏を合わせる事に決めていた。


神州丸(しんしゅうまる)が日本の学校教育の現地調査をしたいそうで、探索者である僕に白羽の矢が立ったらしいです。

 まぁ僕も今朝彼と会ってから聞いたんですけど」


「それで日曜日に突然転校が決まったのね……」


 迷惑そうな表情を隠そうともせず、英子が司を見つめる。

 ちなみに、現在まなみは遠隔操作を解除し、電脳通話を繋いだ状態で自宅で昼食を摂っている。

 現在司を操作しているのはナギで、翔太は静観中だ。


「でも、私に式部君の正体を教えても良かったの?

 学校からは何も聞いてないんだけど」


「校長もご存じだそうですよ。神州丸から多額の寄付金を贈ったそうです」


「あんのクソじじい……」


 英子は真面目に事情を聞き出そうとしているのが急に馬鹿馬鹿しく思えてきて、弁当を食べるのを優先させる。


「別に口止めされている訳ではないんですけど、一応彼はヒューマノイドではなく人間という事にしておいて下さい。

 その方が僕も面倒事が少ないと思いますんで」


「そうね。

 はぁ……、お互い苦労するわね」


 艦治は英子に合わせて苦笑いを浮かべるが、英子は仕事である事に対し、艦治は単なる恋人のワガママなので、申し訳ない気持ちが込み上げていた。



 弁当を食べ終えて、艦治とまなみが教室へと戻った。艦治が今日から移動した一番後ろの席に座ると、良光(よしみつ)が話し掛けて来た。


「どうだった?」


「んー、まぁ問題ないよ」


≪ちょっと良いかい?≫


 英子とのやり取りを簡単に説明していると、艦治が翔太から話し掛けられた。良光と口で会話をしつつ、インプラント経由で翔太に返事をする。


≪何でしょうか≫


≪君の事だから、まなみが過去に何かがあって今のような屈折した性格になったのだろうと気付いているよね?

 あ、念の為に伝えておくけど、この会話をまなみに聞かせるつもりはないから安心してよ≫


 翔太は艦治がどこまでまなみの事を理解しているか、確認したいようだ。


≪……そうですね。でも僕はまなみから打ち明けられるまで、僕の方から聞き出すつもりはありませんよ?≫


≪もちろんそれで良いよ。でも、ヒューマノイドを遠隔操作している時は自然な表情が出る事にも気付いてるはずだよね?

 ボクの狙いはそこにあるんだよ≫


≪狙い、ですか?≫


≪そう。ヒューマノイド越しならば自然な表情で人と会話する事が出来る。相手が君じゃなくてもね。

 これは良いリハビリになると思うんだ。別に今が悪い訳じゃない。でも、ありのままのまなみが笑顔でいる方が、君は嬉しいんじゃない?≫


≪……そうですね。決して今が悪いとは思いませんが、僕はまなみの微笑みを見て一目惚れをしたので、仰る通りありのままのまなみに戻れるならば、その方が良いんだと思います≫


≪高校卒業まで半年近くある。それまで司を遠隔操作する事で、素のまなみがどんどん表情豊かになれば、素敵だと思わない?≫


≪思います≫


≪もしこの方法が素のまなみに変化をもたらさなかったとしても、君はがっかりしたりしないでしょ?

 だからそこ、やってみても良いと思うんだ≫


 艦治は今のまなみに不満がある訳ではない。

 が、まなみ自身は自分が無表情で口数が少ない事を気にしていると、艦治は気付いている。

 時々見せる自然な表情に触れた時、艦治がとても喜んでいる事にまなみは気付いているはずであり、その事自体は本人も嬉しいと思っているはずだ。

 だからこそ、まなみが自然な表情を取り戻せるならば、それに越した事はない。

 そして、万が一上手く行かなかったとしても、艦治もまなみも何かを失う事はない。

 その事が原因で、二人が別れる事などあり得ないと、艦治が思っているのだから。


≪君に相談なく勝手に進めた事は悪かったと思ってるけど、こういう理由だったって事で納得してくれない?≫


≪分かりました。

 とはいえ、僕は翔太さんに対して怒ったり何かを命令したりはしないと思うので、翔太さんが必要だと思われる事をして下さればそれで良いと思ってます≫


≪そう?

 君は顔だけじゃなく性格まで伊之助(いのすけ)にそっくりだね。やっぱりDNAはちゃんと心にも影響を与えるんだねぇ≫


≪そういうもんですか?≫


≪そういうもんだよ≫


≪……翔太さん、僕とまなみを見守って下さいね≫


≪随分いきなりだね。まぁ元々そのつもりだから、安心して任せて良いよ≫

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