072:国内の反応
【首相官邸】
「敵対勢力掃討の事後報告、か」
「はい、御殿場市内の火災について説明を受けました。大陸系の潜入部隊の拠点となっていたようです」
「あそこはかなり前から動いていただろう。何故今処理した?」
「恐らく何か事前に察知し、大きく動く前に消したのでしょう」
「我が国民に被害が出ても動かなかったのに、随分と勝手なものだな」
「……むしろそれは我々が非難を受けるべき事案かと」
「ふん、仕方ないだろう。上は先方が動かないのであれば様子見だ。核の傘の次は宇宙船の影にってな。
勝手な事をして虎の尾を踏むのは避けたいという気持ちは分からんでもないが」
「スパイ防止法さえ未だに制定出来ない国ですからね。もう神州丸に飲み込まれた方が良いのでは?」
「ん? 君は宙派だったか?
頭から否定するつもりはないが、外交大使殿が我が国に取る態度を見て何も感じないのかね?
あれは虫や実験動物を見る目だ。人だとは思っていない。自らの目的の為にただ必要だからこちらに歩み寄っているに過ぎない。
正直、何度も薄ら寒い思いをさせられたものだ。……とても国民には言えんがね」
「ですが、先日の緊急記者会見を行ったのは、その国民を守る為なのでは?」
「だから言っているだろう? 自らの目的の為に必要な人物が、たまたま我が国の国民だっただけだ。
もし例の高校生が他国の人間なら、我々の現在の立場が揺らいでいたかも知れない」
「……それは由々しき事態ですね」
「そうだとも。
従って今我々がすべきなのは、彼がより快適に探索活動が出来るよう支援する事。周辺警備も必要だろうが、恐らく我が国の別の機関がすでに動いているだろうし、何より先方もすでに手配しているだろう。
まぁ我が国としても彼を大事に扱いますよというアピールは必要だろうから、警察官に周辺を巡回させるべきだろうな」
「すぐに手配致します」
「後は……、直接面会して彼に政府に対する要望がないか聞くか」
「私が参りましょう」
「君がか?
情報によると、彼には非常に嫉妬深い婚約者がいるとされているが」
「とは言え、十八歳の血気盛んな男子高校生です。実際に攻める訳ではなく、攻める隙があるかを確認する程度は問題ないでは?」
「…………私の権限では許可出来ないな。上に確認するから少し待つように。
くれぐれも勝手な行動を起こしてくれるなよ?」
「はっ」
【文部科学省】
「今さらどういうつもりだ?」
「教育現場での神州丸の捉え方を確認する、とかでしょうか」
「それならば全ての小中高、いや最低でも各都道府県にひと学校ずつは派遣するはずじゃないか?」
「……他に目的がある、とか」
「まぁそうだろうな。この付属高校でなければならない何かがあるのか、もしくは誰かがいるのか」
「あくまで日本人の生徒として潜入させるほどの目的となると……、何も思い浮かびません」
「高度な文明が作った人工生命体がする事だ。考えるだけ無駄だろう。
それより、要請があったからには間に合わせるぞ」
「はぁ……、今日日曜日なんですけど」
「今すぐ現地に飛んで学園長でも学校長でも何でも良いから首を縦に振らせるんだ」
「今日は早く帰るって彼女に言ったんですよ?」
「そうか。実は私も娘が誕生日でね」
「……分かりました、行きましょう」
「必要書類はこれだ。リニアのグリーンのチケットを用意した。必要ならばホテルも取りたまえ」
「帰ったら娘さんの写真、見せて下さいよ?」
「もちろんだとも。最高のプレゼントを貰ったよと伝えておこう」
【国内大手企業】
「どうにか彼の専属契約をもぎ取れ! ひと月の買取金額の下限を二千万円にしても良い!!」
「しかし彼は高校生です。しかも高校三年生とか。
付属高校なので受験しないかも知れませんが、それでも内部進学の為の試験や面接があるはずです。
一ヶ月間一度も探索しない月があってもおかしくありません」
「なら年間買取金額の下限を二億円に設定しろ。とりあえず専属契約を取れればそれで良い!」
「ねぇ、部長の案どう思う?」
「とりあえず契約出来れば後の事はどうでも良いと思ってそう。契約獲得して自分の成績になった後は他の担当者の責任だからって考えてるんじゃない?」
「あー、それね。
契約内容で揉めても自分は関係ないってか。その頃には役員になってるはずだって想定してるのね」
「世襲経営だけど兄弟間で競わせるのは良い事だって記事になってたけど、実際は醜い足の引っ張り合いと見せかけの功績だもの。中からどんどん腐っていってる気がするわ」
「部長は次男で、一応兄弟の中で一番役員に近いって言われてるけど、実は一番優秀なのは官僚になった次女だって噂よ」
「そうなのね。長男と長女は絵に描いたような金持ちのボンボンとお嬢様ですものね。
社内の三人に比べれば、末っ子の次女が一番要領が良いのかもね」
「良いか、絶対に専属契約をもぎ取るんだ! 分かったな!?」
「「「「「はい!!」」」」」
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【せーぎ】
お疲れ様です
艦治が火竜を一人で倒したって聞いたんですが
本当ですか?
累計ランキングにも名前が載っているので
疑っている訳ではないんですけど
事が事だけに直接確認したくて
お時間がある時で良いので教えて下さい
【穂波】
≫正義様
お疲れ様です。その噂は本当です。私も妻も娘もその場に立ち会っていました。
彼は非常に素晴らしい探索者としての素質があります。剣術スキルをものにして火竜にも臆さず真正面から闘いを挑んでいました。
しかし武器性能なのか筋力が足りないのか、火竜の鱗に傷を付ける事が出来ませんでした
そこで彼は火炎を吐こうとしている火竜の口へと水魔法を打ち込んだのです。
未発見の魔法スキルを完璧に制御し、火竜の口元で水蒸気爆発を起こして火竜を倒しました。
もし他の探索者のスキルガチャに魔法スキルが出現しても、彼ほどに使いこなせるかどうか、現状では何とも申し上げにくいです。
魔法なんぞ使える訳がない、という思い込みが邪魔して、発動させるだけでもなかなか難しいのです。
日々是精進とはよく言ったものです。私もまだまだだと実感させられました。
正義様も、現状に満足せず高みを目指して日々精進されますよう、陰ながら応援させて頂きます。
【せーぎ】
え?
穂波さんも魔法スキル使えるようになったんですか?
【せーぎ】
もしもし?
【せーぎ】
もしもーし!!




