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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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070:スキルインストール

六月十六日 日曜日

 まなみが波の音を聞きながら寝たいと希望した為、キングサイズのベッドが波打ち際に設置され、艦治(かんじ)とまなみは熱い夜を過ごした。


 日曜日。朝から穂波(ほなみ)真美(まみ)と会う約束をしている為、身支度を済ませて朝食を摂り、艦治とまなみは神州丸(しんしゅうまる)へと移動した。


≪もう着いちゃったから、先にスキルのインストール作業をしてもらうわぁ≫


≪分かった、じゃあ私もそうするね≫


 すでにナギが医療用ヒューマノイド経由で穂波と真美を第二特別手術準備室へと案内しており、スキルのインストール作業の準備が進められている。

 まなみも第一特別手術準備室で身体を洗浄した後、医療用ポッドへ入り、全スキルのインストールが実施された。


「あまり差が実感出来ないわねぇ」


 真美はそう零すが、持っていなかったスキルを手に入れた他、すでに持っていたスキルにおいても熟練度が百パーセントに上昇しているので、実際はかなりの変化になる。

 真美も穂波も、日常生活を問題なく送る為に力を完璧に制御しているので、あえて全力を出してみないと変化を実感する事が出来ない。


平穏(チュートリアル)迷宮(ダンジョン)に行って試してみる?≫


 穂波と真美とまなみのスキルインストール作業が終了し、艦治を含めた四人で第一特別手術準備室で集まりお茶をしていると、白雲の上に乗っているナギが四人へ提案をしてきた。


「もしよろしければ、神州丸内にある別のダンジョンで試されませんか?

 そちらはまだ誰にも開放していないダンジョンですので、誰の目も気にする必要がございません」


「あらぁ、それは良いわねぇ。そこに案内してもらおうかしらぁ」


 真美が興味を示すと、第一特別手術準備室にワープゲートが現れた。


「こちらからお入り下さい」


 ワープゲートを抜けた先は、何もない真っ白な空間。果てが見えず、どこまで続いているのかも分からない。


「こちらはまだ詳細の設計をしておりませんので、お望みのままの環境をご用意可能です」


「うーん、どうしようかしらねぇ。やっぱり修行と言えば山、かしらぁ?」


 真美の言葉を受けて、何もなかった白い地面から青々とした山がせり上がって来た。


「……とりあえず頂上まで走って登りましょうか」


 四人は身体強化スキルを使いながら、標高千メートルの山を登って行った。



 四人で木刀の打ち合いをしたり、艦治が魔法スキルの使用方法を教えたりして、あっと言う間に正午を迎えた。

 昼食はまなみの希望により、昨日と同じく浜辺でバーベキューとなった。


「……あそこに見えるのはベッドかしらぁ?

 もしかして二人は、あそこで夜を明かしたの?」


 真美からの質問に、艦治の表情が若干引き攣る。


≪そうなの! すっごいロマンティックなんだよ!! さざ波の音を聞きながら満点の星空を眺めるの。この鳳翔(ほうしょう)には蚊がいないし、突然の雨に吹かれる事もないし、他人の目も気にする必要もないんだ。最高でしょ!?≫


「それは羨ましいわねぇ。私達もここで寝てみたいわぁ」


 真美が艦治に視線を送る。


「どうぞ、いつでも来て下さい。ベッドは別のものを用意させます。ポチくんかたまちゃん経由でナギがご案内すると思います」


 艦治の言葉を受けて、白雲に乗ったナギが大きく頷く。


「あらぁ、頼りになるお婿さんで嬉しいわぁ。

 孫はいつ見れるのかしらねぇ」


「ごほごほっ!!」


 艦治が肉を喉に詰まらせ、まなみからお茶の入ったコップを受け取る。


「…………娘はやらん」


「ぶはっ!?」


 穂波の小粋なジョークで、艦治が鼻からお茶を吹き出した。

 


 昼食後、まなみがイルカと泳ぎたいと言い出したが、その前に済ませてしまわないとならない事があるので、四人は第十三手術室へとやって来た。


「心なしかやつれたように見えるわねぇ」


≪そうかなぁ? 相変わらずふてぶてしい顔に見えるけど≫


 隣同士に並んだ治療用ポッド、それぞれにロン毛男こと飛馬(ひゅうま)、金髪ギャルこと詩歌(しぃか)が入っている。現在もなお、自らの支援妖精に対して行った仕打ちを自分が受ける側として追体験させられている。

 艦治と穂波は前もって用意させた衝立を背にして、ソファーに座って待機している。


「それでは追体験を終了し、覚醒させます」


「ええ、よろしくねぇ」


 真美の言葉を受けて、二つの治療用ポッドから徐々に緑色の液体が抜けていく。艦治とななみによって負った怪我の治療自体は早い段階で終わっている。

 液体が全て抜け切った後、二人の口元を覆っていたマスクが外れ、ポッドのガラスがせり上がった。


ばちんっ!!


 真美は一切の遠慮なく飛馬の頬を引っ叩いた。すぐに反応がなかった為、髪の毛を掴んだ状態でさらに往復ビンタをかます。


ばちんばちんばちんばちんっ!!


「……っは!?

 すみませんもうしません許して下さいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


 目を見開き、焦点の合っていない怯えた瞳で真美を見上げる飛馬。


「ダメねぇ、壊れてるんじゃなぁい?」


 真美は飛馬から離れ、同じように詩歌をビンタして起こす。


「……申し訳っ!?

 違うんですそうじゃなくてむしろ本当にもうどうすれば良いかと考えても考えても答えが出て来なくてだからやはりこの場合は……」


「こっちもダメねぇ。どうしようかしら。

 そもそも私達がこれをどうこうする責任ってないのよね。罰が終わったからもう放り出してしまいましょうかぁ?」


 真美がそう零すも、二人は怯えたまま治療用ポッドから出ようともせず震えている。

 三日間の追体験無間地獄が余程精神に負荷を与えたようだ。


「ナギ、こいつらを普通の社会生活を送れる程度に回復させられる?」


「はい、問題ございません」


 このまま放り出すのは艦治としても罪悪感が芽生えそうなので、ナギに面倒を見させる事にした。

 ノックをして入室した医療用ヒューマノイドが二人を車椅子に乗せ、別室へと連れて行った。


≪よし! じゃあクジラとイルカと泳ぎに行こう!!≫


 空気を変えるべく、まなみが海へと誘う。


「じゃあ水着を用意しないと……」


「皆様のお身体に会う水着をご用意致しましたので、こちらへお持ち致します」


≪水着じゃなくてウエットスーツを用意出来る? ママの水着姿をかんちに見せたくない!≫


「あらあらぁ」


 その日、四人は夜まで海で過ごした。

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