表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/166

007:入国審査

六月七日 金曜日

 艦治(かんじ)の眼鏡が壊れた翌日、艦治と良光は再び港の入国管理局へと向かっていた。

 シャトルバスが港のバス停へと到着し、プラカードを掲げる団体に背を向けて歩いていく。


「やっぱ変なんだよなぁ」


 教室内の生徒が連れている支援妖精も、ここまでの道中ですれ違って来た支援妖精達も、昨日同様全てが艦治の事を見つめていたのだ。

 それも、宇宙船『神州丸(しんしゅうまる)』に近付けば近付くほど支援妖精達が嬉しそうな表情に変わっていくように良光からは見えた。

 

「何が?」


 良光が違和感を口にしようとした際、近くにいたフクロウの支援妖精がウインクをして見せたように思えた。


「いや、何でもない。

 今日こそは妖精ガチャ引けるといいな」


 良光は不思議そうな表情を浮かべる艦治の肩に手を回し、周りから守るようにして入国管理局へと入った。


 今回は迷わずに初回入国審査の窓口へと進み、列に並ぶ。窓口にはカメラとディスプレイが設置されており、流れるアナウンスに従って申請を進める方式が取られている。

 と、窓口の奥からテレビでよく見る人物が顔を出す。


「なぁ、あれって神州丸の外交大使じゃね?」


「え? 何でナギさんがここにいるの?」


 二人だけでなく、ロープウェイへ向かう途中の探索者達も足を止めてその人物を見つめる。


「ナギさんって普段から和服なんだな」

「日本政府から色んな伝統和装を贈られてて、気分によって着替えてるらしいよ」

「普通に人間っぽいよねぇ、黒髪だから良く似合ってる」

「身体の造り的には支援妖精と同じ人工生命体だって自分で言ってたよ」

「って事はナギさんも浮けるのか……?」


 入国管理局にいる人間全てから注目を浴びている人物、ナギはその事を気にする様子もなく窓口を出て、艦治と良光へと歩み寄った。


「ようこそいらっしゃいました。お二人の受け付けは私がさせて頂きますので、こちらへお越し下さいませ」


 神州丸の外交大使からの思わぬ対応を受けて、二人は言われるがままナギについて行く。

 案内された対面窓口にてナギと相対し、二人は差し出されたタブレットに必要事項を入力していく。


「はい、確認出来ましたので返却しますね」


「「あ、はい」」


 二人は住民票などの書類を通学鞄に仕舞う。艦治は緊張のあまり、手を震わせて書類がしわくちゃになってしまっている。

 艦治がわたわたとしている間に、ナギが二人分の入国準備を進めていた。


「はい、これが今回使用して頂きます仮の入国許可証です。中に非接触型のICチップが入っており、これであちらの自動改札機をくぐる事が出来ます。

 神州丸にてインプラント埋入(まいにゅう)手術を受けて頂きますと、この入国許可証は不要となります。

 手術をお受けになるまでは首から掛けておいて下さいね」


 ナギが入国許可証の入ったネックストラップを艦治と良光へ掛けてやる。


「それではさっそく神州丸へと向かいましょう。ご案内致します」


 その言葉を受けて、二人以上に周りの見物人達が反応を示した。


「え、あの子らどっかの御曹司?」

「あの制服、どこの高校だ?」

「重要人物だな、写真撮っておこう」

「いや、さっきからやってんだけど謎のエラーが出て撮れないんよ」

「|YoungNatterやんなったーも開けねぇ」


 探索者だけでなく、タブレットなどのデバイスで写真を撮ろうとしている人々も、しきりに首を傾げている。


 再び窓口から出て、ナギが艦治の手を取り歩き出す。いつの間にか控えていた警備ヒューマノイド四人が艦治とナギ、そして良光を中心として囲んでいた。

 警備ヒューマノイドは全身黒ずくめの軍服姿で、フルフェイスのヘルメットを被っており顔は見えない。

 この状況に置かれ、さすがに艦治も疑問を口にせずにはいられなかった。


「あの、ナギさん? 僕らの事、誰かと間違えておられませんか?」


 その疑問に対し、ナギは笑顔を見せる。


「ふふっ、どうでしょうね? 人違いでなければ良いのですが」


 その返答を受けて、艦治はさらに戸惑いを見せる。一方、良光は空気を読むかのように口を閉じたままついて行く。


 設置されている自動改札機をくぐり抜けて、ちょうど良いタイミングで開いたエレベーターに、艦治とナギと良光、そして警備ヒューマノイド達が乗り込んだ。エレベーター内は大勢の探索者が利用する為、数十名が入れるほどの広さがある。

 エレベーター内でもナギに手を取られたままの為、艦治はとても居心地悪そうにしている。

 良光は艦治達から離れて、ガラス越しに見える外を眺める。


「うおっ、はっや!!」


 ロープウェイ乗り場は地上三百メートル地点のタワー最上階にあるが、神州丸の技術で作られたエレベーターなので、揺れや重力を感じさせる事なく数秒で到着した。


「こちらです」


 扉が開き、ナギが歩き出す。ロープウェイ側にのみ壁がないので、地上よりも若干ではあるが気温が低い。衣替えをした直後の半袖姿では、肌寒く感じられる。


「ナギさん!?」

「えっ、何事!?」

「誰だあの高校生は!?」

「生ナギさん初めて見た……、何で写真撮れないんだ?」

「美しい……」


 またもタイミング良く探索者が降りてきて、空になったロープウェイが待機している。

 乗り込み口には複数の探索者達が並んで待っていたが、ナギが別経路でロープウェイへと歩いて行く。

 警備ヒューマノイドに守られながら、艦治達はロープウェイへと乗り込んだ。


「それでは出発致します」


 艦治達以外を乗り込ませず、ロープウェイが宇宙船『神州丸』へ向けて動き出した。


「あー、楽しみだなぁー」


「そ、そうだねぇー」


 良光と艦治は、ここからの展開が予想出来ず、ただただロープウェイから見える巨大宇宙船を眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ