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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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068:夜の午後三時

 艦治(かんじ)はまなみの胸の中で眠ってしまい、目を覚ますともう昼時だった。


「ごめん、寝ちゃってた」


≪ううん、大丈夫。私の胸の中ですやすや眠ってくれるかんちを見れて、嬉しかったもん≫


 二人はプラネタリウムを出て空飛ぶ車に乗り、別の区画へと移動する。

 その区画は遠浅の浜辺が再現されており、家事ヒューマノイド達がバーベキューの用意をしていた。

 気温は高めに設定されているが、海から吹く潮風が心地良い。


「水平線が見えるけど、どこまで続いてるの?」


「この地点から二キロ先までは海が続いており、その先は壁になっています。立体スクリーンでどこまでも海が続いているように見せています」


≪イルカやクジラがいたら良いね、一緒に泳ぎたいなぁ≫


 まなみがそう言ったタイミングで、遠くでクジラが潮を吹き、イルカの群れが一斉にジャンプした。


「……すごい」


 まなみが感嘆の声を漏らす。


「全て人工生命体、支援妖精と同じ造りになっておりますので、一緒に泳いで頂いても危険はございません」


「まなみが水泳スキル使えるようになったらまた来ようか」


≪イルカに乗るだけなら水泳スキルなくても行けるんじゃない?≫


「いや、水着がないと何かしら怪我しそうだから、また今度にしようよ。

 それよりほら、焼けたみたい」


 家事ヒューマノイドが焼けた肉を皿に乗せていく。塩やタレなどが複数用意されており、お好みで食べられるようになっている。


「いただきます」

「……いただきます」


 艦治とまなみが肉を頬張る。じゅわっと滲み出す肉汁に目尻を下げる。


≪おいっしいぃぃぃーーー!!≫


≪ね、めちゃくちゃおいしい。

 そう言えば、さっきのクジラとイルカもそうだけど、鳳翔には自然の生き物はいないの?

 この肉も、鳳翔内で飼育してるヤツだったりする?≫


 艦治が咀嚼を続けながらナギへ問い掛ける。


「鳳翔内には探索者以外、人工ではない自然の生命体はおりません。

 伊之助(いのすけ)様がご自分の旅に連れて行くのは忍びないと、犬や猫などの愛玩動物も乗せたくないと仰いましたので。

 今お召し上がりの肉や米・野菜などは全てこちらの世界で購入した日本国産のものです」


≪そうなんだねぇ。でもナギもナミもいたし、伊之助さんはそれほど寂しくはなかっただろうね≫


「そうだと良いのですが」


 少ししんみりした空気になってしまった為、艦治が話題を変えるべく思い付いた事を話す。


≪生き物がいないって事は、鳳翔内に水族館も動物園もないって事か。

 やっぱデートと言えば水族館だよね。でっかい水槽にジンベイザメが泳いでたり、ウミガメがパタパタしてたり、そんな水中を眺めながら食事出来るレストランがどこか外国にあるって聞いた事あるけど、憧れるよねぇ≫


「すぐに手配致します」


≪……手配って? 僕、パスポート持ってないよ? それに長期間の海外旅行は夏休みにでもならないと難しいし≫


「いえ、神州丸(しんしゅうまる)のそばに建設致します。

 海底にお二人専用の食堂と寝室をご用意致します」


 場を和ませる為の思い付きで話した事が、まさか実現するなど思ってもいなかった艦治。

 しばし箸を止めて、ぼーっと海を眺める。


≪いいじゃん、海底秘密基地。建設はナギ達だけで出来るみたいだし、神州丸近海に潜水艦なんて来ないでしょう? ちょっと贅沢してもバレないんじゃない?≫


≪そういうもんなのかな……≫


「移動はワープゲートを使いますので、移動で気取られる事もありません。

 全て私にお任せ下さい」


 ナギにそこまで言われたので、艦治は頷く事にした。



 昼食のバーベキューを楽しんだ後、区画全体が暗くなり、夜空には大輪の花が咲き誇る。


≪たぁ~~~まやぁぁぁ~~~!!≫


ドンドンドンドンドンドンドーン!!


≪贅沢だなぁー≫


 艦治の視界の時計はまだ午後三時を示している。鳳翔内部だから出来る打ち上げ花火を、艦治とまなみの二人だけが楽しんでいる。


良光(よしみつ)蒼井(あおい)さんにも見せてあげたいなぁ。けどまだ蒼井さんに事情を打ち明けるのは早いよねぇ。

 あ、まなみと二人っきりが嫌な訳じゃないよ? でもさすがに打ち上げ花火を二人きりってのは贅沢過ぎるんじゃないかって思って≫


 艦治とまなみの鼓膜を花火の音が震わせる。胸に響く振動を感じながら、二人は抱き合ってリクライニングチェアに寝そべっている。


≪大丈夫、分かってるよ。でも鳳翔そのものがかんちのものなんだから、贅沢も何もないと思うけどね。まぁ無理に慣れる必要はないと思うけど、かんちはやりたいと思った事をやれば良いんじゃないかな?≫


≪やりたい事かぁ……≫


 艦治は高校三年生で、付属の大学へ内部進学するかどうかもまだはっきりと決めていない。

 そんな状況でやりたい事と言われても、具体的にこれと言って思い浮かばないでいる。


≪とりあえず、大学に進むのはアリなんじゃない? 将来特定の職業に就きたいと思っているなら別だけど、普通に通うだけなら時間に余裕はありそうだし。新卒で就活を、なんてする必要ないんだし、八年内に単位を取っちゃえば良いんでしょ?≫


≪なるほど、とりあえず通ってから考えれば良いのか≫


 艦治の成績は学年で上から数えた方が早く、内部進学を望めば進学が認められるだろう。


≪私も今から受験勉強しないとだね。一緒に爛れたキャンパスライフを送ろうよ!≫


≪爛れる事が前提なんだ……≫

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