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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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064:週末の過ごし方

「では、買取総額は二千五百万円とさせて頂きます」


 艦治(かんじ)は視界に表示された買取金額承諾書に電子署名し、潤一(じゅんいち)へ頭を下げる。


「ありがとうございます。バタバタさせてしまい申し訳ないです」


 艦治へ早く買取金額を提示する為に、査定担当者達がベルトコンベアーの脇でずっと慌ただしく作業していた。

 査定担当者達も艦治へ頭を下げて、艦治の気遣いに応える。


「いえ、我々の仕事ですので。

 ところで、これからのご予定はお決まりですか? 私でお力になれる事がございましたら、何なりとお申し付け下さいませ」


「せっかくですが、今日はもう帰ります。また頼らせて下さい」


 潤一の申し出を断る艦治。

 買取査定中に、艦治は望海(のぞみ)が引いてしまっているのを察し、良光(よしみつ)と電脳通話でこれからの予定について話し合っていた。

 少なくとも今の段階では、望海を艦治の都合に巻き込ませない方針を立てた。従ってしばらくの間、学校以外では艦治と良光は分かれて過ごす事になった。


 潤一に見送られて、ミニバンに四人で乗り込む。走り出してから、艦治が良光に問い掛ける。


「僕らはこれから予定があるけど、良光と蒼井(あおい)さんはどうする?」


 艦治とまなみは神州丸(しんしゅうまる)にて、治療するよう指示していた飛馬(ひゅうま)詩歌(しぃか)の支援妖精の様子を見に行くつもりだ。


「あー、それなんだけさ。これから望海を家に連れて帰るんだ」


「え……?」


 艦治が思わず後部座席を振り返ると、望海が顔を赤く染めて俯いている。

 どうやら望海は事前に聞かされていたようだ。


「ほら、うちの姉ちゃんと妹、うるせぇだろ?

 望海と仲良くなったの、すぐに気付かれてさ。早く連れて来いって」


「えーっと、付き合ってもないのに会わせるの?」


 それはいくら何でもシスコンが過ぎるのでは? と思い、艦治が口に出してしまうが、どうやらそうではないようだ。


「いや、昨日から付き合い出したんだ。神州丸からの帰りに二人で話し合ってな」


「何だ早く言ってよ! おめでとう!!」


「……おめでとう」


 艦治とまなみの祝福の言葉を聞いて、二人が照れながら笑う。


「何か言い出しにくくてな、わりぃ」


「私はちゃんとまなみちゃんに報告してたけどね」


≪私が勝手にかんちに教えるのは違うなぁーって思ったしねぇ≫


「そっかそっか、それは良かったね。

 じゃあこの車乗って帰ってよ。僕らの用事は神州丸の中だから、ここで降りるし」


 ちょうど、四人を乗せたミニバンが入国管理局の前へと着いたところだった。


「ん、じゃあ遠慮なく借りるわ」


「ありがとねっ」


 艦治とまなみが降りると、ミニバンが良光と望海を乗せて走り去って行った。


「そっかぁ、良い感じだろうなぁとは思ってたけど、ちゃんと付き合ったかぁ。

 何だか嬉しいなぁ」


≪ね、良かったよねぇ≫


 二人は友達の幸せを喜びながら、入国管理局へと入って行った。



 ロープウェイに乗り、神州丸内部の医療施設へとやって来た。

 医療用ヒューマノイドに案内され、二人の為に用意された第一特別手術準備室へと向かう。

 他の手術準備室とは違い、シャワールームの他に応接セットが置かれており、さらに別室として寝室が用意されている。


「何で寝室……?」


≪えー、あった方が良いじゃん≫


 艦治は昨夜の仮想空間でのお楽しみと、その後の現実での不快感を思い出し、確かにあった方が良いな、と頷いた。

 ソファーに座り、二人がアールグレイのアイスティーを飲んでいると、二体の支援妖精が飛んでやって来た。


「ん? 随分変わったね」


 馬型支援妖精だった一体は体の色が白になり、羽が大きくなっており、馬と言うよりもペガサスと言って良い姿に変わっていた。

 鹿型支援妖精だったもう一体も体の色が白になり、折られた角が非常に立派になり、さながら神の使いとも言われる白鹿(はくろう)の見た目に変わっていた。


≪立派になったねぇ、良かったねぇ≫


 まなみが二体を抱き寄せ、無表情のまま頬擦りをしている。


「例えあの二人が改心したとしても、ペガサスや白鹿みたいな神々しい支援妖精を返してやりたくないね。僕とまなみのセカンド支援妖精として傍にいてもらおうか」


≪セカンド支援妖精賛成! ペガサスも良いし、白鹿も良いし、すんごい迷うぅぅぅ!!≫


「じゃあ二体ともまなみに付いてもらう?」


≪いやいやいや、それはさすがにダメだよ。この二体を助けるって決めたのはかんちなんだから。じゃあこうしよう! ナギと白鹿がペアで、ナミとペガサスがペア!! どっちも背中に横乗りするとすごい素敵になると思う!!≫


 二人の肩から飛び立ち、ナギが白鹿へ、ナミがペガサスへと横乗りする。ナギもナミも和装姿で乗っているので、さながら神様そのものに見える。

 二つのペアが艦治とまなみに見せるよう、ゆっくりと室内を飛び回る。


≪絵になるねぇ。そうだ、名前考えないと≫


「名前か、うーん。アメノカク、ケリュネイア……、何かしっくり来ないな」


 艦治は電脳ネットで白い鹿を検索し、良いアイディアがないか探してみたが、しっくり来るものがなかった。


「うーん、じゃあ白雲(はくうん)で」


 艦治は白鹿がゆっくりと流れるように飛ぶ姿から、雲を連想して白雲と名付ける事にした。


≪えっ、決めるの早くない!? 名付けとかした事ないからめっちゃ迷う……、どうしよどうしよっ≫


「別に焦んなくても良いよ。今すぐ名付ける必要がある訳じゃないし」


≪でもでもパッと決めたいじゃん。うーん……、分かった! シルヴァー!!≫


 まなみが名付けたのに合わせ、ペガサスのシルヴァーが前足を上げていななくような姿勢を取った。

 ナギが白雲に乗ってナミの乗るシルヴァーの隣へと移動し、艦治とまなみと相対する。


「名付けて頂いてありがとうございます。お二人のお傍に控え、より良い支援が出来るよう務めて参ります」


 改めて意気込みを伝えるナギに少し戸惑いならが、艦治が答える。


「うん、これからもよろしくね」


≪よろしくっ!!≫


 二つのペアが二人へ頭を下げた後、第一特別手術準備室の扉の前へ移動し、ナミが口を開く。


「では、私達は席を外させて頂きます。後はお若いお二人で、と言う事で」


 同じくナギが艦治へ連絡事項を伝える。


治樹(はるき)様と治佳(はるか)様は、本日はご自宅へ戻らないと心乃春(このは)心乃夏(このか)へ連絡がありました。

 せっかくですので、こちらで艦治様とまなみ様のお二人で過ごされてはいかがでしょうか?」


 ようやく艦治がこの部屋に寝室、ベッドがある意味に思い当たる。


「……なるほど、それはとても良い提案だね」


≪……ミャハ♪≫

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