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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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059:戦利品

「いやはやこれは……。

 皆様のお力を察する事が出来ず、誠に申し訳ございません」


 潤一(じゅんいち)が最敬礼にて頭を下げる。

 真美(まみ)の言葉の通り、テーブルの上には載せ切れず、床にも戦利品が置かれ、それでもまだ出し切れていない戦利品が艦治(かんじ)の亜空間収納に入れられている。

 せっせと取り出していた艦治(かんじ)とまなみは一旦その手を止めて、どうしようかと顔を見合っている。


「いいえ、良いのよぉ。次は直接倉庫へ通してもらおうかしらねぇ」


「倉庫内に応接スペースをご用意しておきます」


≪二人とも、出してもらったところ悪いんだけど、入れ直してくれるかしらぁ?

 今日は火竜のコアだけ渡して、他の換金は後日にしましょう≫


≪えー!? せっかくいっぱい出したのにまた入れるの!? 何でそんな面倒な事するの!?≫


≪これだけあるのよって見せ付けただけよぉ。舐められないようにしないとねぇ?≫


 艦治は真美の思惑を聞き、素直に戦利品を亜空間収納へと放り込んでいく。


 大小様々なモンスターコア、煌めくダイヤなどの宝石、換金性の高い金やプラチナなどの貴金属、レアメタルやレアアースなどの希少資源、一目見ただけでは分からない何かの部品や基盤、美容液や乳液や化粧水などが入ったボトル、何かの肉の真空パック、酒瓶、宇宙にあるどこかの銀河の立体地図ホログラム、宇宙にあるどこかの星の立体地図ホログラムなどなど、艦治とまなみが出してすぐに仕舞い直しているのを見て、潤一が真美の意図を正確に読み取っていた。


「ふむ、本日はお急ぎとの事でしたか。

 お預かりして査定し、後日口座へお振り込みさせて頂く事も可能ですが、それよりも先に私どもを信頼して頂かないとなりませんね」


「話が早くて助かるわぁ」


 先ほど専属契約を交わしたが、不満があれば探索者側から一方的に破棄する事が可能な条件となっている。


「とりあえず、一番の目玉商品にいくら付けるのかを見させてもらおうと思うの。

 艦治君、お願いねぇ」


 艦治が片付けている手を止め、亜空間収納へと両手を入れて、一抱えの大きな半透明の球体を取り出した。


「これは……!?

 これだけ大きなモンスターコアとなると、ドラゴンでございますか?」


「ええ、この子が一人で倒したのよぉ」


「何と!? お一人でドラゴンを!?

 にわかには信じられませんが、外ならぬ加見里(かみり)様が仰るのであれば……」


 まじまじと見つめる潤一に、艦治がちょこんと頭を下げる。


「モンスターコアはその大きさに比例して発電量が増します。これだけの大きさであれば、弊社研究所の数年分の消費電力を賄えるでしょう。

 正確な埋蔵電力量を測らせて頂きますが、よろしいでしょうか?」


「はい、もちろんです」


 艦治が答えると同時に、個室のドアがノックされて、大きな電源盤のような機械が運び込まれた。

 機械を運んで来た白衣の男達が、艦治が抱えているモンスターコアを目にして息を呑んでいる。


「こちらはエーテルコンバータです。この機械にコアを接続する事で、コアからどれだけの電力を取り出せるかを測ります」


 迷宮(ダンジョン)内で活動する妨害生物(モンスター)、その身体を動かす為のエネルギーがコアに込められており、そのエネルギーをエーテルと呼んでいると、日本と交渉をし始めた頃の外交大使ナギが説明をしていた。

 エーテルから電力を取り出す為の技術も、神州丸(しんしゅうまる)がもたらしたもので、便宜上エーテルコンバータと呼ばれるようになった。

 神州丸ではエーテルをエーテルのまま動力として使用するが、地球の科学技術はまだその域に達していない為、エーテルを電力へと変換して使用するのが一般的となっている。


「準備を」


 潤一が白衣の男達に声を掛けると、ようやく男達が測定の準備に取り掛かった。

 艦治からモンスターコアを受け取り、エーテルコンバータへと接続し、測定を開始した直後。


ボンッ!


「すみません! 埋蔵電力量が多過ぎて測定出来ません!!」


 エーテルコンバータが音を立て、煙を上げた。


「……最低でもどれほどの埋蔵電力量か分かりませんか?」


「恐らくではありますが、一億八千万kWhは下らないかと……」


 艦治は桁違いの電力量を聞き、想像出来ずに首を傾ける。


「そうですか、分かりました。

 さて、お待たせして申し訳ございませんでした。

 今回は概算で先にお支払いさせて頂き、後日正式な買取金額との差額をお振り込みさせて頂くという形でよろしいでしょうか?」


「艦治君、良いかしらぁ?」


「えっと、僕は良いんですけど、穂波さんと真美さんは良いんですか?」


「あなたが一人で倒したのだから、あなたが代金を受け取るのよぉ?」


≪そうそう、これは正当な報酬ってヤツだよ!!≫


「…………問題ない」


 真美もまなみも穂波も、火竜のモンスターコアの代金は艦治が受け取るべきだと主張した。


「分かりました。

 じゃあ、村藤さんが仰る通りで問題ないです」


「かしこましました。

 それでは概算の買取金額は、三十億円とさせて頂きます」


「さっ……、えぇっ!?」


 視界に買取金額承諾書が表示され、金額が三十億円と明記されているのを見て、艦治が動揺するが、すぐに落ち着きを取り戻した。


≪ヤバくない!? 三十億円ってもう一生働かなくて良いじゃん!!≫


≪……ごめん、よく考えたら僕の口座残高、一千億円だったわ≫


≪いっせ……、えぇっ!?≫


 この日、艦治の銀行口座の残高が一千三十億円になった。

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