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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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055:望まぬ再会

「ちょっとビックリしたわねぇ、魔法のスキルなんてあったのぉ?」


 幻想(ゲーミング)迷宮(ダンジョン)の中層で火竜が出て来た事にも内心驚いていた真美(まみ)だが、それ以上に艦治(かんじ)が水魔法を放った事の方がより驚きが大きかったようだ。


「お望みでしたら医療用ポッドへお越し下さい。

 全てのスキルをインストールさせて頂きます」


「うーん、どうなのかしらねぇ?」


「………………」


 真美がナギの返答を受けて、穂波(ほなみ)と見合って少し悩んでいる。


「艦治君が披露した水魔法を、私達も持っているって知れ渡ったらさすがに変に思われないかしらぁ?」


≪ママ、周りの目を気にする必要ないよ。もうかんちは神州丸から特別に優遇されている優秀な探索者だって知れ渡ってるんだもん。その師匠であり所属探索者集団の団長と副団長が普通の探索者な訳ないじゃん? だから、パパもママも全てのスキルを持っていても不思議じゃないんだよ! あ、私も全部欲しいしお揃い揃い!!≫


 まなみはナミという特別な支援妖精を与えられていたが、艦治のように全てのスキルを与えられてはいなかった。

 ナミからすると、探索などせずに今すぐにでもコールドスリープしてほしいと考えていたからだ。

 ナギが艦治を見つけた為、まなみをコールドスリープさせる必要はなくなった今、まなみも艦治同様全てのスキルを手に入れる事が出来る。


「はぁ……、周りの目もあるからとりあえず奥に進んでしまったけれど、そろそろ戻りましょうかぁ。

 艦治君は明日も学校ですものねぇ」


 火竜を倒した後、艦治は先頭に立って、穂波に渡された刀で出現するモンスターを片っ端から切り捨てていた。

 スライムや一角ウサギやゴブリンやオークなどの死骸は、全てシリコンへと溶けて迷宮へと吸収され、迷宮から与えられる戦利品は手を振れずに亜空間収納へと放り込んでいた。

 倒す時間が圧倒的に早い事と、落ちている戦利品を集める時間が必要ない事、そして荷物は全て亜空間収納へ入れてあるので身軽なので、他の探索者よりもかなりのペースで迷宮内を進んで来ていた。


≪かんち、そろそろ引き返そうってママが言ってるよ!≫


 とはいえ艦治は学生であり、迷宮内で一泊する予定はない。


≪了解、結構疲れたなぁ……≫


 ずっと走りっぱなしだった艦治は立ち止まり、後ろを振り返る。

 まなみが亜空間収納から水筒を取り出してコップにお茶を注いだので、艦治が受け取って飲み干した。


「ふぅー、ありがとう。

 今は……、五時半か。結構経ったな」


 常に視界に表示されている時計だが、戦闘に集中していると意識出来なくなるようだ。


「それじゃあ来た時同様に走って戻りましょうかぁ」


 真美が艦治に、再び先頭に立って走るよう指示を出す。


≪直接医療施設へと飛べるワープゲートを出す事も出来ますが、いかが致しますか?≫


≪いや、目があり過ぎる。それに楽しいからこのまま帰るよ≫


 肩に乗っているナギからの提案を断り、艦治が走り出した。

 集団で走っても、洞窟の横幅が広くてある程度の光量がある為、他の探索者にぶつかる心配も少ない。


≪私が戦利品拾って行くからかんちは切る事に集中してくれれば良いよ!≫


≪お、頼むね≫


 艦治とまなみの連携でさらに移動速度が上がり、あと少しで迷宮の扉へと戻れるかという場所で、思わぬ邪魔が入る。


「いた! あの妖精を捕まえればウチも強くなっていっぱい稼げるっしょ!!」


「あれは俺んだ、どけ!!」


 左から飛び出して来た人影に、艦治は無意識で刀を振り下ろしてしまった。すんでのところで相手が人間であると気付き、刀の向きを変えて峰で打ち付ける。


「ぐはっ……!!」


 ロン毛男が艦治に肩を強打され、あまりの痛みに意識を飛ばして崩れ落ちる。


「やっべ……」


「……スキあり!!」


 艦治が人間に危害を加えてしまったとショックを受けていると、金髪ギャルがロン毛男を足蹴にして艦治に飛び掛かろうとした。金髪ギャルの目線は完全にナギに固定されている。


「ぐほっ……!!」


 まなみの刀により、ロン毛男同様に金髪ギャルも地面へと沈む。

 さらにまなみが女を蹴飛ばそうとして、我に返った艦治に羽交い締めにされる。


≪かんち離してそいつ殺せない≫


≪ダメだって! ナギ、そいつら病院に転移させられる?≫


≪了解致しました≫


 ナギが艦治の命令を受け、倒れているロン毛男と金髪ギャルが迷宮に吸収された。


「ええっ!?」

「迷宮に吸収されたって事は……」

「これヤバいんじゃね?」

「ぼぼぼ僕は何も見てましぇん!!」

「お前ら全員手ぇ上げろ! 姐さんに逆らうな!!」


 穂波と真美が騒ぎ出した探索者達を睨み付ける。


≪さぁて、どうしようかしらぁ?≫


≪………………どうなった?≫


 真美は周囲を牽制しており、穂波が艦治を振り返り、二人の状況を確認してきた。


≪あの二人は治療の為に病院に運ばせました≫


≪………………問題ないな≫


 穂波が手を掛けていた刀を離し、構えを解く。それを受けて、真美も周囲を睨むのを止めた。

 穂波がこちらへと注目している探索者達へ向けて、口を開く。


「…………迷宮の、救命救急機能だ」


「……何だって!?」

「人命に関わる事態になった際、迷宮が探索者を保護する為に取り込むんだ」

「初めて見たなぁ」

「って事はやっぱり死に掛けてるって事?」

「いやあれは完全に襲い掛かった方が悪いだろ」


 口数少ない穂波の説明を、周りが補って状況を理解し受け入れていく。


「さぁて、ここは問題なさそうねぇ?

 じゃ、事情聴取しに行きましょうかぁ?」


≪ナギ、治っても治療用ポッドから出しちゃダメだよ≫


≪了解致しました≫


「「「「「ひぃっ!?」」」」」


 真美とまなみが浮かべた表情は、周囲の探索者達を恐怖に陥れた。

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