044:後押し
「042:使い方次第」を二回投稿しておりました。
現在は削除済みです。
エンドレスエイト的展開ではなく単純なミスです。
深読みされた方、すみませんでした。
艦治と良光、まなみと望海はそれぞれ更衣室で着替えた後、一緒に帰る事になった。
「今日インプラント入れたばっかだったのか。
もしかして今日誕生日なんか?」
「ううん、誕生日は四月なんだけど、きっかけがなくって入れてなかったんだ」
望海は肩に乗せたトラの支援妖精を恥ずかしそうに撫でている。
そんな望海を無表情で見ながら、まなみが艦治の左腕へと抱き着く。
「……いやいきなりは無理だってば。順番っていうもんがあるんだから」
ごにょごにょと呟きながら、望海が良光の左側を歩く。
そんな様子を見て、艦治がまなみへ問い掛ける。
≪えっと、もしかして?≫
≪いやいやそれは私の口からは言えないからねぇーーー≫
≪……なるほど把握≫
状況を理解した艦治が、良光へ声を掛ける。
「良光、蒼井さんと連絡先交換しといたら?
僕はまなみに止められてるからパスね」
「ん? あぁ、交換しとくか」
「う、うんっ……!!」
艦治のすすめにより、良光と望海が連絡先を交換する。そんなやり取りをしていると、港側のロープウェイ乗り場へ到着し、エレベーターで地上へ降りた。
エレベーターの前、自動改札機付近に複数のスーツ姿の男女が騒いでいるのが見える。
「とにかく! 今すぐ外交大使を呼べと言っているだろう!!」
「あれは特定の役員とその指示に従った者達が勝手にやっただけで、サクセサー商事全体の意思ではないんだ!」
「ナギさんを呼んで下さい、お願いします!」
「一言謝罪申し上げるだけで結構ですので……」
「早く連れて来いと言っているでしょう! 私を誰だと思っているの!?」
艦治に喧嘩を売った難波吉三の父親が役員を務めていた会社の、他の役員達が警備ヒューマノイドに詰め寄っている。
警備ヒューマノイドは彼らに全く反応せず、フルフェイスのヘルメットの下の表情は窺えない。
「結構大事になってるみたいだな」
「あー、難波君のお父さんの会社だったっけ」
クラスで噂になっていたので、望海も今朝に吉三が起こした騒動の事を知っていた。
「えーっと、サクセサー商事っと。うわぁ、結構なニュースになってるみたい。
内部告発がきっかけで株価が暴落、ストップ安だって。難波取締役の行方は、不明?
難波君、どうなるんだろうね」
「少なくともあいつの性格からして、もう学校には来ないだろうな」
吉三は普段から父親の立場を利用して人に言う事を聞かせたり、女子生徒を口説いたりしていて、評判はあまり良くなかった。
艦治も良光も望海も、全く同情する気にならなかった。
≪とはいえ、ちょっとモヤモヤはするけど≫
≪別に良くない? 昨日声掛けられたけどめちゃくちゃ鬱陶しかったよ? 私は剣術の心得があるからまだ良かったけど、あれを普通の女の子がされてたら恐怖だし、言う事聞いちゃってされるがままになっちゃうかも知れないもの。ってかすでに被害者いるかも≫
≪まぁそうなんだけどさ。僕やまなみに突っかかって来た相手がどんどん不幸になっていくのかもと思うと、ちょっとなーと思って≫
≪艦治様。あくまで私が元々黒い人間を把握・特定しており、その人間がお二人やその周囲へ迷惑を掛けた場合、手持ちの情報を元に排除するよう動くだけです。
艦治様が気に病まれる必要は一切ございません≫
≪うん、分かってるよ。ナギが僕達を守ろうとしてくれているって事も理解してる。
でも、僕が気に入らないってだけで、ナギに命令して特定の人物を排除するのが当然みたいな感覚になっちゃわないように気を付けないとなぁと思っただけ≫
今や艦治は、気分次第で特定の国や団体を破滅に追い込む事も可能なほどの力を手にしている。
その力を当然のように行使するようになってしまったら、艦治は自分が自分でなくなってしまうだろうと思い、如何に自分自身の心を自制すべきかと考えていた。
≪ご安心下さい。私もナミも、艦治様やまなみ様の命令をそのまま愚直に実行する訳ではございません。
あくまでその命令を実行した場合、どのような影響が出るか、またはお二人自身がどのように感じられるかを思考致します。
また、私が問題ないと判断したとしても、上位人格である四人の電脳人格から待ったが掛けられる可能性もありますので、世界を滅ぼすような結果にはなり得ないと考えて頂いて問題ございません≫
≪じゃあ安心じゃん! かんちと私が二人っきりの世界を望んだとして、ナギに世界各国の核ミサイルの発射を命令したとしても、ナギはそんな事しないって事だよね。二人っきりの世界なんて、きっと後悔するだろうしさっ!≫
≪……そうだね。もし僕が間違った事を言ったとしても、止めてくれるのなら安心だね≫
道具は使い方次第で人を助ける事も、傷付ける事も出来る。が、少なくともナギは艦治の命令そのままに実行しないようになっているので、艦治はとりあえず安心する事とした。
四人は今も騒いでいるサクセサー商事の役員達に背を向けて、入国管理局を出た。
「いたぞ、撮れ!」
それと入れ替わりに、カメラを構えた報道陣が役員達に詰め寄って行くのだった。
誰か教えてよねーーー(´;ω;`)ウゥゥ




