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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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166/167

166:受け取る収益の分配方法

「良いんじゃないかしらぁ」


 艦治(かんじ)侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)へ入ってすぐ、<仁狐怒兎(じんこどと)>の実況取材を受けるか検討している事を、真美(まみ)穂波(ほなみ)に相談した。

 二人はそのような取材を受け入れた事はないが、YourTunes(ゆあちゅうんず)の実況動画自体は何度か目にしている。


「それで、<仁狐怒兎>から受け取る収益の分配方法についてなのですが……」


「そんなもの、分配する必要なんてないわよぉ。全部艦治君が預かっておいてくれるかしらぁ」


「…………必要ない」


 艦治が実況取材を受けるとなると、必然的に周りにいる関係者の姿も映ってしまう。

 まなみは自身が<仁狐怒兎>の団長、敏子(としこ)とやり取りしているので事情を把握、納得しているが、穂波や真美、正義(まさよし)(げん)らに関しては収益の分配方法以外にも話し合う必要があると艦治は思っていた。


≪各集団の団長からの了解を得られれば、かんちの取材については問題ないんじゃない?≫


≪……まぁ、穂波さんと真美さんがそう言うならそれで良いのかな?≫


「せーぎ君と源さんには私から言っておくわぁ。鬱陶しい報道陣を遠ざける為だと言えば、ダメだとは言わないと思うけれど」


 真美はそう言って、正義がいる方へと歩いて行った。

 今日は仮拠点を構える事になるだろうが、攻略を始めてすぐにとはいかないので、源率いる<堅如盤石(けんにょばんじゃく)>はまだ姿を見せていない。


「そう言えば、ルーエンスさんは何で<仁狐怒兎>と顔見知りだったの?」


 ルーエンスは艦治達と共に侵略迷宮へ入り、すでに集まっていた<日本(ジャパニーズ)爆夢(ドリーム)>の面々に檄を飛ばしていた。


「たまに取材を受けている。

 アメリカ国民に我らの活動を伝える為、自分達で動画投稿しているのだが、自分達の投稿のみでは信頼度が低くなるからな。

 日本人探索者の目を通した我々の活動を見てもらうのも大事なんだ」


 YourTunesはインプラント埋入(まいにゅう)手術を受けていない一般人でも閲覧出来るよう運営されている。

 神州丸の内部は特別な許可がない限り、報道陣のカメラでさえ撮影する事は出来ないが、探索者の目を通した映像については許可されている。

 ナギがリアルタイムで監視しており、都合の悪いものが映っている場合は、撮影自体出来ないようにする事も可能だ。


「<日本爆夢>が受け取るYourTunesの収益についてはどうしてるの?」


「運営費用として管理している。いちいち個々人へ細かく分配したりはせん」


 探索活動の様子を投稿する際、どれだけの人数の所属探索者が映り込んでいるかなどチェックしていたらキリがない。

 あくまで<日本爆夢>が受け取る収益であって、出演している個人へ分配などしないという事だった。


「であれば、僕らの取材で映り込んだ探索者に対しても分配しないって事で良い?

 逆に、僕やまなみが<日本爆夢>の動画に映り込んだとしても、収益を請求しない事にするから」


「それで良い。俺達の本業は探索活動だ。生主じゃない」


「なまぬし……?」



 真美が正義と源にも話を付け、<仁狐怒兎>からの実況取材については正式に受ける事が決まった。

 しかし、侵略迷宮の攻略初日という事で、いきなり今日からという事はせず、仮拠点が構築出来次第連絡するとまなみから敏子(としこ)へと連絡を入れた。


≪ある程度自分達で自衛は出来るって言ってるんだけど≫


≪ダメ。自衛出来たとしても、僕が気を取られて何らかの事故が起こる可能性があるから≫


 艦治は今からでも取材を始めたいという敏子の申し出を断るよう、まなみに指示した。

 いくら迷宮はナギの完全な管理下にあり、侵略者(インベーダー)を遠隔操作しているのがナギであったとしても、そこに人間の意思が介在する事でどのような事象が起こるのか、高度人工知能であったとしても完全には読み解く事が出来ない。

 

≪分かったー。じゃあ改めて連絡するって事にしとくね≫


≪よろしく≫


 侵略迷宮は全迷宮の中でも屈指の難易度である為、艦治の慎重な姿勢は結局、<仁狐怒兎>に受け入れられた。



 <珠聯璧合(しゅれんへきごう)>・<恐悦至極>・<日本爆夢>と、攻略進行担当の探索者集団の準備が整い、仮拠点を構えるつもりの場所まで攻略を進めるかというタイミングで、(めぐり)が侵略迷宮へやって来た。


≪あれー? めぐ何してるの? まだ攻略開始してないよ?≫


「いや、今電脳ネットで艦治殿の話題で持ち切りなのでな。

 ちょっとご本人の様子を見ておこうかと」


 さりげなく艦治に抱き着こうとした廻の額を、まなみがぺちんと叩いて止めた。

 廻は艦治を諦め、まなみに抱き着いた。


「僕の話題で持ち切り? 何かしたっけ?」


「<仁狐怒兎>のチャンネルで『あの話題の超大型新人探索者、井尻艦治に密着取材シリーズ投稿開始予定! 攻略先は何と、最難関の侵略迷宮!!』という動画が上がっている」


 今日からの実況取材については諦めたが、視聴者数を稼ぐ方法は他にもある、という事だろう。

 敏子は艦治から取材許可が出来たのを良い事に、艦治の名前を使って自チャンネルの宣伝を打ち出していた。


「あー、そんなやり方があるなんて思いもしなかったな……」


≪ナギにお願いして止めてもらう?≫


≪いやいや、そこまででもないよ。

 ってか僕の覚悟なんて全然足りなかった事がようやく分かった。もう目立つ前提で活動するよ≫


 ナギに指示して<仁狐怒兎>のチャンネルへの投稿を止める事が出来たとしても、廻のように動画を閲覧した人々の記憶まで書き換える事は出来ない。


≪まぁそれが良いかもね。でもかんちが目立てば目立つほどミーハーな女が沸いて来そうで嫌だなぁ≫


 まなみが廻を引き剥がして、艦治の腕に抱き着く。


「あぁ……!!」


 引き剥がされた廻は、艦治とまなみ二人共に抱き着こうとするが、目の前に出現したワープゲートに吸い込まれ、この場から消えてしまった。


≪目立って良いならいくらでも対処する方法はありそうだね≫


≪ちょっと!? ここどこ!? 暗いよ狭いよ怖いよーーー!!≫

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