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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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161/167

161:バナナボートに四人乗り

「何で水着じゃないんだ!!」


 (めぐり)がまなみのダイビングスーツを指差して怒鳴る。

 廻が朝食を摂っている間に皆が先に着替えていたのだ。


「……下に、着てる」


「脱げーーー!!

 いたっ!?」


 まなみに掴み掛かろとした廻の頭に、艦治(かんじ)がチョップを食らわす。


奥菜(おきな)さん、やり過ぎです。

 仲が良いのは良い事ですが、みんなの前では控えて下さい」


 廻が見せるまなみへの態度を前にして、他の皆が興味津々で眺めている。

 基本的にまなみは男性と電脳OSの連絡先を交換しないので、本来どのような性格なのかを実感していない。

 まなみと廻の関係性が非常に新鮮に映るのだ。


「艦治殿! いい加減ボクの事はめぐと呼んでくれたまえ!!

 ぐえっ!?」


 艦治に抱き着こうとした廻の首を、まなみが右手で掴んだ。


「……帰る?」


「ごめんなさい! ボクも着替えて来ます!!」


 廻が家事ヒューマノイドの案内され、コテージへと入って行った。


「これって三角関係なのー?」


「しっ、見ちゃいけません」


 恵美(えみ)(わたる)が茶々を入れると、艦治が恨めしそうな目を二人へ向ける。


「恋人の親友が自分と恋人を狙って来るっていうの、結構困るからね?

 亘にも体験させてあげようか?」


「お断りするよ」


「えー? 楽しそうだよー?」


 恵美がそう言った瞬間、近くにいた家事ヒューマノイドが走り寄り、恵美に抱き着いた。


「恵美さん! 私と一緒にパラセーリングしに行きましょう!!」


「ちょっ!?」


 亘が止める間もなく、家事ヒューマノイドは恵美をお姫様抱っこして砂浜を駆けて行った。


「艦治!?」


「僕は遠隔操作してないよ」


 亘に睨まれた艦治が、両手を上げてそう言った。


「ほら、早く追いかけないと空に連れ去られちゃうよ?」


「……はっ!?」


 慌てて亘が走って行った。

 ちなみに、艦治は本当に家事ヒューマノイドを遠隔操作していないが、ナギに指示は出した。嘘は言っていない。


良光(よしみつ)蒼井(あおい)さんはどうする?」


「俺らは海に潜るわ」


 望海(のぞみ)は空にトラウマが出来てしまったので、当分空を飛ぶレジャーは避ける事になるだろう。


「せーぎさん、私もサーフィンしてみたいです」


「お、じゃあ行くか!」


「はいっ!」


 正義(まさよし)(あきら)はサーフィンへ行くようで、博務(ひろむ)雅絵(まさえ)も二人に続いた。


(あや)ちゃんはどうする?」


 艦治が一人残ってしまった彩に声を掛ける。


「私は廻さんと一緒が良いです。廻さんと仲良くなりたいので」


「そうなの? 無理していない?」


 艦治は彩と廻以外の皆には恋人がいる事を気にしていた。

 彩が皆に気を遣っているのだろうかと思ったが、彩は首を振る。


「いえ、本当に廻さんと仲良くなりたいだけなので。

 でも最初だけ、艦治さんとまなみさんと四人で遊んでくれます?」


「ああ、もちろん。

 奥菜さんの事はまだそれほど知らないけど、彩ちゃんは人見知りしないし、すぐに仲良くなれるんじゃないかな?」


「……大丈夫」


「まなみが言うなら大丈夫だろうね」


 そんなやり取りをしていると、ダイビングスーツに着替えた廻が戻って来た。


「お待たせ! って随分人が減ったね」


「それぞれしたい事をした方が楽しいですからね。

 廻さんは何かしたい事とかありますか?」


 彩が廻に問い掛けると、廻は顎に手を当てて考え出した。


「そうだなぁ……。

 バナナボートとか、どうかな?」


 廻が彩へ返事する。

 ジェットスキーで引っ張られ、すごい勢いで揺れるバナナボートであれば、艦治であれまなみであれ自然に抱き着けるだろうと思って提案をした廻だが、その下心が成就する事はないだろう。


「バナナボートってある?」


「ご用意しております」


 家事ヒューマノイド(ナギ)が用意してあると言ったが、その前に確認しておく事があった。

 艦治は沖の方で波待ちをしている博務へ電脳通話を掛ける。


≪バナナボートしたいんですけど、ある程度離れてたら問題ないですかね?

 ジェットスキーって波とか結構立てるイメージがあるんですけど≫


≪浜辺に対して縦の位置だと影響あるけど、横に離れてたら問題ないよ≫


≪了解です。

 最初だけ横切ります≫


 家事ヒューマノイド(ナギ)が浅瀬で亜空間収納から自動運転ジェットスキーとバナナボートを取り出した。


「廻さん、私インプラント入れてないので不安です!

 後ろから支えてもらえません?」


 彩が両手を胸の前で組み、廻にお願いした。


「えっ? あぁ、うん」


 中学生である彩に頼まれて、嫌だという廻ではなかった。

 バナナボートの先頭に彩が跨り、そのすぐ後ろで廻が支える。

 そしてその後ろにまなみが跨って、一番後ろが艦治という配置になった。


 音もなく自動運転ジェットスキーが走り出し、バナナボートがゆっくりと引っ張られていく。


「もうこれだけで楽しぃー!」


「ホントだなぁ!

 この速度ならバンザイ出来るんじゃない?」


「バンザーーーイ!!」


「いえーーーい!!」


 艦治とまなみの予想通り、彩と廻はすぐに仲良くなった。


「……良かった」


「そうだね」


 恋人がいない参加者でも楽しめるのか。

 この海鷹島(かいようとう)に来た時に懸念していた事が解決して、艦治もなまみもひと安心するのだった。

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