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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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156/168

156:ウミガメウォッチング

 (わたる)の視力回復手術はすぐに終わり、恵美(えみ)と共に戻って来た。

 亘が艦治(かんじ)に対し、背中を押してくれてありがとうと頭を下げ、艦治が強引に手術させようとしてごめんなさいと頭を下げてと、お互いがペコペコしている間に昼食の時間となった。

 昼食には、正義(まさよし)が銛で突いた魚を、(あきら)が開いて刺身にしたり焼いたりしたものが出た。


「旦那が釣った魚を捌ける妻って何か良いよねー」


 恵美は鯛の刺身を何度もおかわりしている。


「うん、おいしいね」


 望海(のぞみ)も、海遊びで冷えてしまった身体を鯛のアラが入った味噌汁で温まっている。

 皆が褒めてくれるものだから、輝はによによと落ち着かない笑みを浮かべながら、正義の隣で静かに食事している。


「本当は獲れてから何日か寝かしておいた方がもっと美味しくなるんですけどねぇ。

 いたっ!?」


 不要な一言を発した(あや)が、良光(よしみつ)に頭を叩かれている。


「……彩ちゃんも、お料理上手」


「まぁ小さい頃から家の手伝いさせられてますから。

 ちなみに女だからって理由じゃないので、おにいも割と料理上手ですよ」


 まなみは自分が料理をする分、輝もその手伝いをしていた彩も、普段からやっているのだろうと思って眺めていた。

 手伝わずに眺めていただけだったのは、輝が正義にアピールしたいだろうからと、目立たないようにする為だ。


「いやぁ、何食っても美味いな。

 あのダイビングマスクのお陰でずっと潜ってられっからさ、ついつい獲り過ぎちまったよ。

 おっ、ありがとうな」


「いえ……」


 正義の小皿やお椀が空になれば、すぐに輝がおかずやご飯をよそってやる。

 甲斐甲斐しく世話をする輝を見て、まるで新婚さんだなと一同は温かい目で見守っていた。



 サーフィンやウェイクボード、ヨットやパラセーリングなどは、鳳翔(ほうしょう)内でいつでも体験する事が出来る。

 わざわざ無人島を買って、整備してまでここにいるのだから、ここでしか出来ない事をしようという事になり、まずはウミガメを見に行く事に決まった。


 ウミガメは基本的に産卵時以外は陸に上がらないので、沖に出て探す必要がある。

 ウミガメが見られるスポットまでの移動手段として、家事ヒューマノイド(ナギ)が亜空間収納から自動運転クルーザーを取り出した。


「すごいね、自動航行クルーザーなんて本当の大富豪しか持ってないって聞くよ?」


 クルーザーに乗り込んだ亘は、操舵室がない事に気付いて驚く。


「まぁ作ってるのはナギだからね」


 亘は艦治(かんじ)の返事を聞いて、それもそうかと納得した。

 船も飛行機もオートパイロットという機能が付いているのが当たり前だが、出航から着岸、離陸から着陸までを全自動で制御出来るレベルには達していない。

 この自動航行クルーザーは、インプラント経由で行き先を指定するので、操舵室がない。


「うーん、音もなく動くっていうのは何とも不思議だねぇ」


「どうやって駆動しているのかしら」


 博務(ひろむ)雅絵(まさえ)は自動運転の仕組みが気になっているようだ。


「うん? 『クルーザーにおける自動航行の仕組みを表示しますか?』

 はい、っと」


 そんな二人の視界に、ナギから仕組み解説のテキストが送られた。


「…………制御部分の部品を作る事すら難しそうだね」


「全く理解出来ないわ」


 しばらく読み込んでいた二人だが、理解するのを諦めてしまった。

 ちなみに、自動航行クルーザーとはいえ波の影響で多少は揺れる。そんな船上で字を読むと酔ってしまうだろうと思いがちだが、スキルをインストールしている者達にとっては無用な心配となる。


「…………うっ」


「大丈夫? ほら、これ薬だって」


 亘はクルーザーが走り出して早々、船酔いの症状が出てしまった。

 車酔いする方ではないのだが、視力が回復したとはいえ、眼鏡越しで見ていた視界と現在の視界では感覚的な違いがあり、まだその違和感に慣れていない為、平衡感覚がやられてしまったようだ。

 家事ヒューマノイド(ナギ)から貰った薬を亘が受け取り、恵美から手渡されたペットボトルの水で飲み込む。


「……もう気持ち悪くなくなった」


「えー、逆に怖いねそれー」



 ウミガメが見れるスポットに到着し、クルーザーが停止した。

 家事ヒューマノイド(ナギ)から手渡された重り用のベストをそれぞれ羽織っていく。

 タンクを背負わない分、海に沈みにくくなるので、重りが必要なのだ。


「このマスク、顔に跡が残りそうだけど大丈夫なの?」


 マスクはお面のような形になっており、目を覆うゴーグル部分と、転移させた空気で呼吸をする為の口周り部分が一体化しているものだ。


「問題ございません」


 家事ヒューマノイド(ナギ)はそう答えて、彩がマスクを装着するのを手伝ってやる。 

 彩も亘同様、まだインプラントを入れていないが、こちらは全く船酔いしていない。


「見て見てー! ジャイアントストライドエントリー!!

 ……ぐえっ!?」


 クルーザーから一足先に海へ飛び込もうとした彩が、インストラクターヒューマノイドに首根っこを掴まれて止められた。


「皆様、こちらのインストラクターヒューマノイド達が常に安全を確認しておりますが、何かあればすぐに指示を出します。その指示には必ず従って下さい。

 万が一の際は、強制的にクルーザーへ引き上げますのでそのおつもりでいて下さい」


 家事ヒューマノイド(ナギ)の説明に、一同が深く頷いてみせた。

 その後何事もなく、ウミガメやサンゴ礁などを見て楽しんだのだった。

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