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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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147:進路指導

 テスト休み明けの水曜日。今週はテスト返しという本来重要なイベントが控えている。


井尻(いじり)君と式部(しきぶ)君は放課後職員室に来るように」


「「はい」」


 ただし、艦治(かんじ)(つかさ)(まなみ)は付属大学の国際日本学部への進学が内々に決まっているので、さほど重要という訳ではない。

 とはいえ、艦治もまなみもしっかりとテスト勉強をしていた為、返って来た答案用紙は非常に良い数字ばかり。


≪何で未だに紙の答案用紙なんだろうねぇ≫


≪アナログが一番小細工しにくいから、とか?≫


 放課後になり、まなみと艦治は担任の英子(えいこ)に言われた通り、職員室へと向かう。


「失礼します」


 扉を開けて入室すると、一斉に教師からの注目が二人に集まった。

 目的の英子の姿はなく、艦治は体育教師の武則(たけのり)へ声を掛けようと口を開いたが、その前に社会科教師の栄三(えいぞう)が立ち上がり、艦治を見つめながら近付いて来た。


「井尻、体調に問題はないか? 怪我はしていないか? インプラントで得た力を自分本来の力だと勘違いするんじゃないぞ?」


「あ、はい。今のところ問題ないです。

 お気遣いありがとうございます」


「ほんの少しでも異変を感じたらすぐに病院に行くんだぞ?

 あ、探索者が言う病院じゃなく、日本国内の病院の方だからな? 分かったか?」


「はい、分かりました」


 栄三は艦治の返事に対し頷いた後、まなみを睨み付け、そして自分の席へと戻って行った。


神州丸(しんしゅうまる)に対して恨みでもあるのかな?≫


河島(かわしま)氏の経歴を確認しましたが、息子が探索活動をしているようです。

 特に怪我やトラブルはないようですが、家に帰って来なくなったらしいという事は分かっています≫


 まなみの肩に座っているマーシェ(雅絵(まさえ))から報告された通り、栄三には息子がいる。


 神州丸を信じ過ぎるべきではないという考えの元、学生達に言うよりもさらに強い論調でインプラント埋入(まいにゅう)手術の同意を求めた息子へ捲し立てた為、それ以来毛嫌いされているのだ。


 栄三の息子は結局、大学在学中にインプラントを入れて、探索活動で得た戦利品で学費を稼ぎ、親から独立して生活を始めた。

 その事が余計に栄三を意固地にさせていたが、雅絵もそこまでの事情は知り得なかった。


「あら、ごめんごめん。ちょっと校長先生に呼び出されちゃってた。

 ……何かあった?」


 席に戻る栄三の背中を見て、英子が艦治へ尋ねる。


「いえ、何も。生徒想いの先生にお気遣い頂いていただけです」



 場所を進路指導室へ移し、英子と向かい合わせに座る艦治とまなみ


「面倒だから加見里(かみり)さんと呼ばせてもらうわね」


「あ、はい」


 学校側が付属大学への進学希望について聞いているのは、艦治とまなみの二名分のみ。

 式部司という男性の進学については要望が上がっていない事と、学食で艦治の支援妖精であるナギが空を飛んだ事を合わせて考えた上で、英子は司の中身がまなみであるとほぼ確信を持っていた。


「あ、やっぱり」


 ただし確信はなかったので、この場でまなみの名を出したのはカマを掛けたようなものだ。


≪今さら過ぎて返事しちゃったよ≫


≪まぁ別に問題ないから良いんじゃない?≫


 とは言え、バレたところで艦治にもまなみにも特に不利益はないので、気にしない事にした。


「文部科学大臣官房人事課所属の山中(やまなか)さんからうちの校長へ連絡があって、うちの理事長と学長、山中さんと井尻君と加見里さんとで形だけの面接を行う事になったの」


「分かりました」


 その件については、博務(ひろむ)を経由して雅絵から事前に説明を受けていた。


「日取りは七月十二日の金曜日、放課後に大学構内の応接室で。親御さんの立ち合いは必須ではないけど、ご希望があれば出席は可能だからね。

 予定は大丈夫?」


「大丈夫です」


≪面接が終わったらすぐ無人島に向かいまーす≫


≪面接終わってからだから、気が楽になって良いね≫


 鳳翔(ほうしょう)の海も良いが、本物の海でスキューバダイビングがしたいという一同の希望で、売りに出ていたサンゴ礁に近い無人島をナギに購入させて、そこで三連休を過ごす予定になっている。


「うちの校長が、俺は立ち会わなくて良いのかーって私に聞いて来んのよね。

 そんなの一教師である私に言っても仕方なくない?」


「はぁ」


 校長に関する愚痴を一学生に零している英子も英子であるが、それはそれとして。


「内閣国家安全保障局迷宮対策室所属の天辺(あまべ)さんも大学の別室で待機するらしいけど、同席の必要はなさそうな雰囲気だって山中さんから聞いてる」


「そうですか」


「……もしかして、事前に聞いてた?」


「はい」


 英子が艦治の肩に座っているナギと、司の肩に座っているマーシェ。そして白雲とシルヴァーに視線を巡らせて、ため息を吐く。


「これだけの好待遇を受けてて、良く普通に授業を受けてるわね。

 普通の年頃男子だったら威張り散らして好き放題しててもおかしくないと思うけど」


「こう見えて、割と好き放題させてもらってるんですよ」


 艦治が心の底から本音で話す。

 事故で低下した視力が回復し、まなみという恋人と知り合い、親友とは今まで通りの付き合いが続けられ、新たな友も加わり、亡くしたと思っていた妹さえ取り戻せそうな現状。

 艦治としては、これ以上を望むつもりはない。


「せーぎから聞いたけど、侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)の攻略に乗り出すんだって?」


「はい。大学進学も決まりそうなので、夏休みに入ったら本格攻略開始ですね」


 高校のスケジュールとして、テストを全て返し終わった後、成績を加見した上で内部進学が選択可能な生徒、内部進学が選択出来ない生徒、外部の大学に進学を希望する生徒、就職を選択する生徒など、全ての三年生生徒に対して進路確認の面接を行う。

 それが終われば夏休みだ。


「夏休みだし、先生も参加します?」


「うーん、たけりと相談かなぁ?

 夏休みって言っても、教員はずっと休める訳じゃないからねぇ。

 ……おっと、後藤(ごとう)先生、って言い直しても相談してる時点でおかしいわよね。

 忘れてちょうだい」


≪秘密結社の加入候補者発見!≫


≪先生が二人も入って来るのはちょっとなー≫

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