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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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143/167

143:親友

 まなみが皆に自らのトラウマを告白し、何故まなみが無口で無表情なのかについて説明した後。


「……もう一人、この、秘密、結社? に、引き入れたい、人が、いるの」


奥菜(おきな)さん?」


「……そう。私の、大事な、親友。

 ……皆に、打ち明けた、のに、めぐに、聞かせて、ないのは、少し、心苦しいから」


 まなみがトラウマについて告白したのは、トラウマを刺激する原因が良光(よしみつ)の妹である(あや)が一番大きな要因であり、何故彩を苦手とするかを説明する必要があったからだ。


 まなみと(めぐり)が出会ったのは中学生の時。

 すでにまなみは無口で無表情な事を、周りからクールビューティーというキャラ付けで受け入れられていた。

 そんなまなみにガンガンぶつかっていった廻は、まなみが周りが思っているよりも優しくて人懐っこい性格であると知っていった。


 最近になり、お互いがインプラントを入れて電脳通話越しに喋った際、その見た目よりもテンションが高いまなみに触れても、廻は驚かなかった。

 そして、まなみは自分を見た目や上辺だけで判断しなかった廻の事を、大切に思っている。


「……かんちの、秘密を、めぐに、教えても、良い?」


「もちろん良いよ。僕の秘密はまなみの秘密でもあるしね。

 奥菜さんもまなみの気持ちに応えてくれるんじゃないかな?」


「……ありがとう」


 艦治(かんじ)の了解を得た後、まなみは電脳通話で廻に呼び掛けた。

 廻は自宅の自室にいたので、断りを入れてからワープゲートを開き、まなみがいる鳳翔(ほうしょう)の浜辺へと招いた。


「……どこ? ここ」


「……今から、全部、説明、する」


 まなみの希望で、廻への説明はまなみ一人で行うと決めていた。

 まなみと廻の二人を残し、一同は海の家でダイビングスーツに着替え、クルーザーに乗ってクジラやイルカ、シャチなどと一緒に泳ぐ事にした。



「めっちゃ驚いてんな」


「あんまり見たら悪いよ」


「いや、お前も見てんだろうが」


 イルカ(ナギ)に跨った良光と、シャチ(ナギ)に跨った艦治がまなみと廻の様子を窺っている。


「そりゃ、心配だし。

 けど、極力顔は向けずに目だけ向けるようにはしてるよ」


「廻さん? が遠見のスキル持ってなかったら大丈夫だろ」


 艦治も良光も、遠見のスキルを使って二人の様子を見ていた。


「ナギ?」


「廻様は遠見のスキルをお持ちではありません」


 ナギは白雲に跨って、艦治の頭上を浮遊している。


「それでもまなみにはバレバレだしなぁ。

 あ、手招きしてる。ちょっと行ってくるね」


「おう」


 艦治はシャチに跨ったまま、沖から浜辺へと向かった。

 まなみと廻に近付くにつれて、二人の目が赤く、頬に涙が流れた跡があるのがよく分かった。


「お待たせ。お邪魔じゃないかな?」


「……そんな事、ない」


「艦治殿! ボクはあなたに感謝する!!」


 立ち上がり、艦治へと手を伸ばし掛けた廻だが、途中で思い留まった。


「僕は何も感謝されるような事はしてないんですけどね」


 手をわきわきとさせている廻と、それを見つめてるまなみを見て、艦治は苦笑を浮かべた。


「まながまならしくいる為に、艦治殿の存在は必要不可欠だ。まさにこれは運命であり、奇跡!

 欠けてしまったまなの一部を、艦治殿が埋めてくれたのだと思う。

 時間は掛かるかも知れないけれど、これから本来のまなに戻っていくんだ。悔しいけど、こればかりはボクには出来ない事だ」


「……鬱陶しい」


 話している間にどんどん興奮が高まっていき、廻がまなみに抱き着いた。

 口では嫌がっているまなみだが、艦治には嬉しそうに見えている。


「正直、艦治殿が神州丸(しんしゅうまる)の艦長だとか、ここが木星の近くだとか言われてもピンと来ない。

 けど、まなが幸せならそれで良い。

 いずれボクも二人の仲に入れてくれたらさらに良いんだけど……」


≪かんちのアバター借りて良い?≫


 艦治とまなみを窺うような表情を見せる廻を放置して、まなみが艦治にアバターの使用許可を求める。


≪僕のアバターを、まなみが使うって事?≫


≪そう。仮想空間でめぐの望みを叶えてあげようかと思って≫


≪……ダメ≫


 艦治はまなみが自分のアバターをどう使うつもりでいるのかに思い至り、申し出を断った。


≪ダメかー。じゃあ私の身体データを元に男性化したアバターを作ってもらって……≫


≪そもそもまなみが僕以外を抱くのがダメ。仮想空間でもダメ。

 浮気、ダメ、絶対!≫


「……電脳通話でケンカしてる?」


 まなみを見つめる艦治の表情が曇ったからか、廻に二人が密かに会話している事を悟られた。


≪……そっか。私がめぐを抱いても浮気になるんだ≫


≪当然でしょ!? まなみほどじゃないかも知れないけど、僕にだって独占欲はあるからね!!≫


 浮気の定義は人それぞれである。

 仮想空間なので肉体的接触には当たらないと考える者もおれば、仮想空間であれ二人きりで会う事は浮気だと感じる者もいるだろう。


 女性であるまなみが、仮想空間で男アバターを使用し、女性である廻を抱いた場合、艦治から見れば浮気にあたるので、それは浮気なのだ。


≪うーん。じゃあめぐには一生春は来ないね≫


≪……それはそれでマズイかもね≫


 廻に艦治とまなみの秘密を打ち明けてしまった以上、もし廻に恋人が出来た際、その恋人に対して廻は一生打ち明けられない秘密を抱えたままになるだろう。

 艦治とまなみは、廻に対して申し訳ない気持ちになってしまった。


「ねぇ、ケンカしないでよ! ボクの為に争わないで!!

 ……いたっ!?」


 艦治とまなみは、同時に廻の頭にチョップをお見舞いしたのだった。

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