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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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140/167

140:『『『マーム、イエス、マーム!!』』』

『貴様らは口ほどにもない蛆虫だ。相手がひ弱な子供だと思って油断したか? 仲間蛆虫がボコボコにされたのはたまたまだと思ったか? まさか神州丸(しんしゅうまる)内で殺される訳がないと高を括っていたか? 神州丸が特別扱いしている艦治が、蛆虫共と同じように罰せられると思うか? 何故蛆虫が艦治と同じ立場だと思った? この迷宮内で全ての探索者が平等だと思ったか? 何故探索者がランク付けされているか理解していなかったのか? 一度の探索で蛆虫どもより上にランクインした艦治に勝てると思った根拠は何だ? 蛆虫どもには脳みそがないのか? ならば言われた事に全てはいと返事して言われた事をそのまま実行しろ蛆虫どもが!!』


 平穏(チュートリアル)迷宮(ダンジョン)内、地面には<日本(ジャパニーズ)爆夢(ドリーム)>所属探索者達が死屍累々と横たわっている。

 全員が疲れ切り、どこかしら骨が折れていて、どこかしら出血しており、呼吸が乱れたままなので、真美(まみ)に対して反応する事も出来ない状態だ。


 そんな探索者を、真美が一人ずつ蹴り上げていく。わざわざ骨折していたり、出血していたりする箇所を狙っているので、探索者達の口から呻き声が上がる。

 団長であるルーエンスと副団長であるマーリンは、顔を顰めながらその様子を見つめていた。


『返事が聞こえん!!』


『『『マーム、イエス、マーム!!』』』


『蹴られんと分からんかこの蛆虫どもが!!』


 返事をしないと蹴られ、返事が遅いと蹴られ、いつまで横になっているんだと蹴られ、起き上がろうとしていると遅いと言って蹴られ、またいつまで横になっているんだと蹴られるエンドレス地獄が繰り広げられている。


『蛆虫らしく這ったままがお似合いか』


 艦治の暴力と真美の教育的指導を受けた探索者達は、立つ事さえ出来ない状態まで追い詰められた。

 優しい真美は、そのまま話を聞く事を許した。


『それでは今さらだが、蛆虫どもに質問する事にしよう。

 もちろん私の質問に対する答えはイエスだ』


『『『マーム、イエス、マーム!!』』』


『艦治はお前達の上官に等しいと思うか?』


『『『マーム、イエス、マーム!!』』』


『艦治を鍛えた私と穂波(ほなみ)、まなみもお前達より立場は上だと思うか?』


『『『マーム、イエス、マーム!!』』』


『私達が何故神州丸から特別扱いされるのか知りたいか?』


『マーム、イエス、マーム!!』

『『マーム、ノー、マーム!!』』


 イエスと答えた探索者達が真美から追加で蹴られる。

 答えはイエスしかないからと、真美が何を話しているかを理解せずに返事をしていただけなので、蹴られて当然である。


『私達が神州丸から特別扱いされるのは当たり前だと思うか?』


『『『マーム、イエス、マーム!!』』』


『そんな私達から指導を受ける事が出来て蛆虫どもは幸せだな』


『『『マーム、イエス、マーム!!』』』


 真美は倒れている探索者達の様子を確認し、これで教育的指導を終える事にした。


『楽にしろ。

 私は優しいからな。死に掛けの蛆虫どもに水を飲ませてやろう』


 真美が水魔法のスキルを使って空中に水球を作り、探索者達の顔に投げつけていく。

 穂波がそれを真似し、艦治とまなみも次々に探索者達をずぶ濡れにしていく。


 やられている探索者達はもはや何の反応も出来ず、口に入って来た水分を本能のままに摂取するのだった。



「さて。依頼通り殴って分からせた訳だけど、お気に召したかしらぁ?」


「……十分だ。私の日頃の教育がいかに足りなかったのか思い知らされたよ」


 ルーエンスが真美の言葉を否定しなかった事で、ようやく落ち着きを取り戻して来た探索者達にざわめき出す。


『団長の依頼……?』

『これじゃ<珠聯璧合(しゅれんへきごう)>の下部組織扱いじゃないか……』

『本国の連中に何と言えば良いんだ……』

『どうせなら<珠聯璧合>に入りたいわ……』

『力が欲しい……』


 そんな探索者達に見えるように、艦治が火魔法のスキルで手に炎を出現させて黙らせる。


侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)攻略の件は、<恐悦至極>の意思統一がされてからという事になるかしらぁ」


 真美がルーエンスにそう言うと、艦治が待ったを掛けた。


「真美さん、すみません。

 本格攻略の開始は夏休みに入ってからで良いですか?」


「あらぁ、そうだったわね。

 それじゃあ、それまでは下部組織を鍛え直す事を優先しましょうかぁ」


 わざわざ下部組織と口にして真美が探索者達の感情を逆なでするが、学習した者達は反応をせずにじっと耐えていた。


「蛆虫とは言え、鍛え直す前に治療してやらないとねぇ」


 真美は肩に乗せていたジャガー型支援妖精のたまを抱き上げて、その目を見て喋り掛ける。


「ナギちゃん。蛆虫どもを病院に移動させたいのだけれどぉ」


 真美がそう言うと、横たわっている探索者達が平穏迷宮の地面に沈み込んで行った。


「これでわざわざ蛆虫どもを運ばなくて済むわぁ」


 たま越しにナギへ礼を言っている真美の姿に、表情を引き攣らせるルーエンス。

 遠巻きに状況を窺っていた別の探索者達が、それぞれ自分の支援妖精を抱き上げて、何事か話し掛けているのが見える。


「そ、それじゃあ私達も病院に向かう事にするわ」


 マーリンが真美達に頭を下げた後、ルーエンスを引っ張ってその場を去って行った。


「すごいすごいすごい! すごいぞ艦治殿!! その魔法スキルはどうやって手に入れたのだ!? ガチャか? それに武術も! そもそも英語もペラペラだし、完璧ではないか!! まなを任せるに値する男性だ!!」


 ルーエンス達が去った事で、ずっと見守っていた(めぐり)の感情が爆発し、すごい勢いで艦治を質問攻めにする。

 そんな廻を、まなみが足払いして転ばせて寝技を掛けて止める。


「いたいいたいいたい! 良いじゃないかボクも混ぜてくれよ!! まなも艦治殿もどっちも平等に愛すると誓うぞ!!

 ……いや待てホントに痛いぞ!?」


 そんな二人を、艦治が苦笑を浮かべて眺める。


「小僧、あんな孫じゃが良ければ貰ってやってくれ。あれが男を好いたのは初めてなんじゃ。

 これも何かの縁じゃろ。うちの息子夫婦にはようよう言っておくからのぉ」


「いや良い話風にしても受け入れませんからね?」

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