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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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137:本音

≪で、本当のところはどうなの?≫


≪あれれ? 受け入れるんじゃなかったのかな?≫


≪ランキング一位に言われたら引き下がるしかないだろう?

 ボクが人型妖精を羨ましがっているのを知っているのに、さらに二体目のペガサスまで手に入れてるなんてズルイ! 今まで隠してたのもズルイ!!

 これは親友に対する裏切り行為だ! 同窓会には呼ばないぞ!?≫


≪良いよー。私はかんちさえいればそれで良いし。それにかんちの友達の彼女とかとちょー仲良くなったし、そっちはかんちが全ての事情を話してるから隠し事する必要なくてちょー気楽だからねー≫


≪なぁっ!? 何でボクをそこに入れてくれないんだ!! こんなにも君を愛していると言うのに!!≫


≪それが理由なんだけど≫


 他の者らが自己紹介を続ける中、まなみと(めぐり)が電脳通話内でやり合っていた。


≪ボクは君に恋人がいても良い。井尻殿と二人でまなを幸せにすると誓おう!≫


≪私がかんち一人だけで十分幸せ≫


≪井尻殿が望むなら、この身体を……≫


≪殺すぞ?≫


≪……すまない、失言だった。

 とにかく! ボクはまなを諦めてないからな!!≫


 いつも通り無表情のまなみと、それを睨み付ける廻。

 一通りの自己紹介が終わったので、二人の間で何かしらの因縁があるのかと正義(まさよし)が眉を顰めるが、(げん)が説明する。


「ワシの孫は放っておけ。ちとややこしい奴なんじゃ」


「……ややこしい?」


「多様性という奴じゃな。女子校に入ったからなのか、元々の気質なのかは分からんが。

 それより、話を進めろい」


 源に促されて、正義が進行を再開する。


「んじゃ、侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)攻略についての話をするか。

 ぶっちゃけて言うと、<珠聯璧合(しゅれんへきごう)>・<恐悦至極>・<堅如盤石(けんにょばんじゃく)>間の摺り合わせは終わってる。

 <堅如盤石>はじいさんがトップダウンで参加を決定し、<恐悦至極>は電脳掲示板で参加意思を確認しているところだ」


 <恐悦至極>は探索者集団としての拘束が緩く、組織としての団結力は低い。

 艦治の高校の教師が所属している事から分かるように、兼業探索者や大学在学中の者も多数所属しており、参加義務やノルマなどはほとんど設定されていない。

 今回の侵略迷宮攻略については通常探索とは違い、難易度が高く怪我などのリスクも高くなるので、希望者のみ攻略に参加させる予定だ。


「で、<日本(ジャパニーズ)爆夢(ドリーム)>はどうすんだ?

 戦利品は少ない。艦治が持ってる情報を与える事もない。そちらが得られるメリットはあんまりないんじゃねぇかと思うが」


 正義が話を振ると、ルーエンスは持っていた小倉トーストを皿に戻し、紙ナプキンで口を拭いてから話し出す。


「確かに<日本爆夢>としてのメリットは少ない。

 が、本国からカンジと親密になれというミッションが課せられている。同盟を組めるなら組みたい」


「随分と本音で話すんだな」


「いや、これはまだ本音ではない。単なる事実だ。

 同盟に参加出来るのであれば、俺達はいくらでも本音を話すつもりだ」


「いや、アメリカ政府の情報とかを聞かされても使い道がねぇんだわ」


 正義はルーエンスが、<日本爆夢>の同盟参加を認めるならば、アメリカの動向を流すつもりだと受け取った。

 しかし、ルーエンスが伝えたかったのはそういう事ではなかった。


「本音を話すつもりだ、じゃなくて本音を打ち明けたい、の方が良いんじゃないかしら」


「打ち明けたい? 話すから聞いてくれ、って事か?」


 マーリンとルーエンスが表現の仕方で議論を始める。

 彼らが日本語で自分の気持ちを表すのに苦労しているのだろうかと感じたので、艦治が助け舟を出す事にした。


『本音が話したいなら英語でも良いよ』


『あぁ、カンジはネイティブだったな!

 じゃあまずは俺の簡単な経歴から聞いてくれ』


 二人が英語で会話しているのを見て、正義と茂道(しげみち)と源と廻が渋い表情を浮かべた為、まなみの指示により妖精ナギと妖精ナミが口頭で同時通訳を始めた。


『俺は元々米軍の海兵隊に所属していた。政府からスカウトされて、探索者になるべく日本に来た訳だが、今ではここが故郷だと思ってる。

 合衆国で生まれ育ったが、常に視線を感じ、警官であれ教師であれ俺達に対する扱いは良くない。難癖を付けられて殴られる事も珍しくないんだ』


 黒人に対する差別は根が深い。厳密に言うと差別されているのは黒人だけではないのだが、そんな事はルーエンスにもマーリンにも関係のない事だ。

 重要なのは、彼ら二人がアメリカ社会に対してうんざりしていると言う事だ。


『殴られる事のないように身体を鍛え、自衛するようになった。だが、それでも殴り掛かって来る奴はいる。殴り返せば俺だけが捕まるからな。

 で、志願して軍に入った。クソみたいな国を守る為じゃなく、社会的な信用があれば扱いがマシになるかと思ったからだ。

 結果としては良かった。こうして日本で暮らせるようになったからな』


『日本人は私達に対して露骨に嫌な視線を向けない。内心どう思っているかは分からないけれど。

 でも、私たちにとってはそれだけで天国のようだわ』


 マーリンもルーエンスと同じような経験があるようだ。


『上からカンジと接触し、信用を得られるようにと指示を受けている。この同盟に参加するようにとも言われている。

 だが、俺は俺達の為に同盟に参加するつもりなんだ』


 ルーエンスがマーリンの手を取り、改めて艦治に向き直る。


『俺とマーリンは、日本国籍を取得したい。もうあの国に帰りたくないんだ』


『その為ならお金にならない侵略迷宮の攻略だって手伝うし、上からの情報を横流しする事だって何だってするつもりよ。

 お願い。私達に力を貸してほしい』

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