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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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135/167

135:解散するのも一苦労

 一同は侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)の視察を終えて、神州丸(しんしゅうまる)へ戻る事になった。


「この後お時間ありますか!? 良かったら一緒に幻想(ゲーミング)迷宮(ダンジョン)に行きませんか!?」


「あぁ、良いぞ。

 <恐悦至極>の仲間がいるはずだから、皆に紹介しよう」


「……紹介!?」


 (あきら)正義(まさよし)はすっかり仲良くなっており、その他の者達から温かい目で見守られている。


「私も……、むぐっ!?」


「お前はまだインプラント入れてねぇんだから邪魔になるだけだ」


 輝と正義のデートの邪魔をしようとした(あや)が、良光(よしみつ)に止められた。


「うわぁーん! 艦治(かんじ)さん、入れて下さいよぉ!!

 うげっ!?」


 良光を振り切って艦治に飛び掛かろうとした彩が、まなみによって取り押さえられた。


「……卑猥」


「こらっ。相手は中学生だよ」


 艦治がまなみの発言について窘めるが、彩を取り押さえている事については指摘していない。


「えぇ!? 何がどうなって卑猥になるんですかぁ!?」


 彩の表情から、わざと煽っている事が窺える。


「お前マジでいい加減にしろ。艦治が許しても俺が許さねぇぞ」


 良光が、まなみに取り押さえられている彩の額にデコピンをかました。


「いった!? おにいひどーい!!」


「艦治、俺の家にワープゲート繋げてくれ。連れて帰るわ」


「ごめんなさい!! もうしません!!」


 兄が本気だと理解して真剣に謝る彩だが、すでに手遅れのようだ。


「ダメだ。一回ちゃんと叱っとかねぇと付け上がるだろ。

 ナギ、頼む」


「了解致しました」


 ナギが良光に応えて、ワープゲートを開いた。

 まなみから引き取り、良光が彩を連れて帰った。


「私も一回家に帰ろうかな。さすがに何日も泊まりっぱなしは良くないし」


「あー、私もー」


「まぁそうだね」


 望海(のぞみ)恵美(えみ)(わたる)も帰宅を希望したが、金曜日の放課後に高須家へ向かい、そこからワープゲートを使って鳳翔(ほうしょう)にやって来たので、神州丸から出て行くのはまずいだろうという事になった。

 ちなみに高校生組は、明日の月曜日と明後日の火曜日はテスト明けで学校は休みの予定だ。


「ナギ、直接それぞれの家に送る事は可能?」


「可能です。

 それぞれのご自宅には誰もおられませんので、今なら直接玄関にワープゲートを繋ぐ事が可能です」


 ナギが蒼井家(あおいけ)藤沢家(ふじさわけ)千石家(せんごくけ)に繋がるワープゲートを開き、それぞれが自宅へと戻って行った。


「じゃ、俺らも幻想迷宮に向かうわ。またな。

 穂波(ほなみ)さん、真美(まみ)さん。本格攻略の開始日が決まったらまた教えて下さい」


「艦治、ありがとう!」


「ちょっと待たんか! おぬしらはワープゲートを使って帰るのとは訳が違うんじゃぞ!!」


 肩を寄せ合って去ろうとする正義と輝を、(げん)が止めた。


「ここは侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)じゃ!

 小僧の事情を知っとるワシらは侵略者(インベーダー)に襲われんのを知っとるが、一般の探索者からすればたった二人で未攻略区画から出て来るのはおかしいんじゃ。

 そもそもそっちの嬢ちゃんも、神州丸のロビーを通らずにここに来たんじゃなかったか?」


「あっ……」


 源の話を聞いて、輝が一度自宅に帰る必要がある事に思い至った。

 輝は正義の顔を見つめながら、とても寂しそうな表情を浮かべる。


「しゃあねぇよ。明日はどうだ?」


「……大丈夫です! 明日幻想迷宮に連れて行ってくれますか!?」


「もちろんだ。ストンポールって言う喫茶店で待ち合わせしよう。

 場所は電脳OSで送る」


 見つめ合う正義と輝の眺めながら、艦治が良光へ電脳通話を掛ける。


≪あー、もしもし。

 よく考えたら輝さんも家に帰さなきゃダメだった。今からワープゲート開くけど大丈夫?≫


≪おう、そうだったな。

 よし、彩を抑えておくから頼むわ≫


 再びナギが開いたワープゲートへ、輝が名残惜しそうに入って行った。


「全く……。手が早いのは今も変わっとらんのぉ」


「じいさん、人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ。

 ……今回はマジなヤツっス」


 正義が穂波の顔を見ながら、真剣な表情で宣言した。


「…………良かったな」


「はい!」


 拳を突き合わせる穂波と正義を眺め、まなみが艦治の腕を取った。


≪輝ちゃんに伝授した技が活かせる日も近いねっ!≫


≪いやそれ僕が聞いて良い話?≫



 穂波と真美を先頭に、正義と源、艦治とまなみが侵略迷宮の入り口付近まで戻って来た。


「おい! 本当にいたぞ!!」

「穂波さん、何を始める気なんですか?」

「じいさん、教えろよ!」

「あれ? 武器持ってないぞ?」

「何か怪しいよねぇ……」


 電脳掲示板の噂を見て、自分の目で確かめに来た探索者達が穂波達を質問責めにする。


「じゃかぁしいわい! ここは侵略迷宮じゃぞ!! いつ侵略者が来てもおかしくないんじゃぞ!!」


「んな事言ったって六人とも戦闘した形跡ないじゃねぇか!」


「バカモン! 不用意に戦闘したら奴らが集まって来よるじゃろが。

 もっと頭を使わんか」


 源が知り合いの質問に答えてやっていると、探索者達を掻き分けて、探索者累計ポイントランキング一位のルーエンス・フィッシュボーンがやって来た。


「<珠聯璧合(しゅれんへきごう)>と<恐悦至極>と<堅如盤石(けんにょばんじゃく)>が侵略迷宮の本格攻略を目的とした同盟を組むという噂を聞いてやって来た。

 本当なのか?」


「本当じゃったら何なんじゃ?」


 源が胡散臭いものを見るような目でルーエンスに問い返すと、ルーエンスは口元を緩めて答えた。


「参加を申し出るつもりだ。もちろん指示には従う」


 累計ランキング一位のルーエンスが穂波達の下に着くと発言したのを受けて、見守っていた探索者達が騒ぎ出す。


「ルーエンスは何かを知っているのか……?」

「やっぱり人型妖精の素材か?」

「侵略迷宮で得たポイントでガチャを回すと魔法スキルが出やすくなるらしい」

「遠隔操作スキルって聞いたけど?」

「二体目の支援妖精が貰えるらしいよ?」


≪艦治と嬢ちゃんが持ってるもん全部バレてんじゃねぇか≫


 探索者の噂を聞いて、正義が艦治へ電脳通話を掛けて来た。


≪まぁ必死で隠そうとしている訳ではありませんからね≫


≪何にしても面倒だ。ナギさんに言って侵略者を出してもらえ。

 そしたらこいつらは逃げてくはずだ≫


≪なるほど≫


 艦治がナギに指示を出し、迷宮の奥から複数体の侵略者を出現させる。


ぎしゃーーー!!


 侵略者の姿を確認した探索者達は、蜘蛛の子を散らすかのように迷宮の出口から逃げて行った。


「お前さんは逃げんのか?」


 槍斧(そうふ)を構えているルーエンスを見て、源が問い掛ける。


「ここで逃げるくらいなら、最初から参加させてくれなんて言わないさ」


 そう言い残し、侵略者に向かって一人走っていくルーエンス。


「…………悪くない」


「そうねぇ」


 その背中を見つめながら、穂波と真美が刀を構えた。


≪やりますかぁー≫


≪了解!!≫

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