表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/167

131:視察

 正義(まさよし)侵略(インベーダー)迷宮(ダンジョン)の本格的攻略開始の件と同盟参加の件について、一度持ち帰って<恐悦至極>の構成員全員に確認したいと伝えた。

 が、その前に侵略迷宮内を確認しておこうという流れになった。


「目立つからナギちゃんはお留守番じゃな」


 (げん)はまるで自分の孫のようにナギに接しているが、ナギは源に対して反応を見せない。


「ナギ、通常業務に戻っててくれる?」


「了解致しました」


 ナギがワープゲートを使って退室した。


「現在、侵略迷宮内に探索者はおりません」


「……よっぽど人気がないんだね」


 とはいえ、艦治の肩に乗っている妖精ナギが引き続き皆を案内するのだが。

 艦治と妖精ナギのやり取りを、どこか羨ましそうに正義が眺めている。


「せーぎさん、人型の支援妖精が気になるんですか?」


「そそそそんな事ないぞ!?

 俺にはだーく★また子がいるからな!!」


 正義が肩に乗せている黒猫型支援妖精の頭を撫でる。

 それもナギが操作しているんですけどね、とは艦治からは言い辛い。


「ワシも銀太郎がおるからのぉ」


 源がそう言うと、あご髭に隠れていたゴリラ型支援妖精が顔を覗かせた。

 銀太郎と呼ばれた支援妖精は、源の首に捕まっている形で抱き着いている。背中の毛が銀色に染まったシルバーバックという、群れのオスに出る特徴が見られる。


≪二人の視線が白雲とシルヴァーの間を往復してるね≫


≪セカンド支援妖精をねだられるまで放置しよっか≫


 まなみと艦治がそんなやり取りをしていると、真美が手を叩いて注目を集めた。


「そろそろ侵略迷宮へ向かいましょうかぁ。

 今なら邪魔は入らないし、じっくりと侵略迷宮内を視察出来るはずよぉ?」


 源と正義が医療施設へ入るところは多くの探索者に目撃されているので、ワープゲートを使わずに徒歩で侵略迷宮へ向かう事になった。



「……相変わらず不気味じゃのぉ」


 侵略迷宮内部は、迷宮と言うよりも薄汚れた宇宙船の艦内そのままという雰囲気だ。

 汚れている箇所については、侵略者が出す強力な酸によって隔壁が溶かされた跡などである。


「それより明らかにこっちの方が不気味だろうが!!」


 正義が指差す先には、いつもは必死に駆除をしている侵略者の姿があった。

 しかし、いつものように手当たり次第探索者や妨害生物(モンスター)に襲い掛かるような事はなく、大人しく艦治達の前に跪いている。


 その外形は、全体的にてらてらと黒光りしており、頭部が前後に細長く伸びている。手足も異様に長く、身長は二メートル半ほどだ。

 目も耳も鼻はないのにも関わらず、横に大きく裂かれたような口があり、口内はねっとりとした粘液が見える。

 さらに、臀部には細長い尻尾が付いており、探索者が身体を貫かれて負傷する事も稀に見られる。


「ナギちゃんから話を聞いた後じゃが、実際にあの侵略者がこうも大人しいところを見せられると、納得せざるを得んのぉ」


「どうせですからこの子に案内させましょうか。

 じゃ、お願いね」


ぎしゃーーー!


 侵略者が返事をして立ち上がり、右手を掲げて歩き出した。



「それにしても広いのぉ。歩くだけで息が上がるわい」


「普段はこんなに深くまで来れないからなぁ」


 一同は上下左右とに複雑に分かれている区画を、侵略者の案内で進んでいく。

 同じ探索者であるとはいえ、源は戦闘職ではなく後方支援職なので、そこまで体力がある訳ではない。

 源の疲労具合を見て、艦治が休憩を申し出て、今は艦治・まなみ・穂波(ほなみ)・真美・源・正義の七名でレジャーシートの上に座ってお茶をしている。


「この子におんぶさせましょうか?」


「止めい! 想像しただけで鳥肌が立ったわ!!

 それにこの子という呼び方も止めんか。気持ち悪ぅてかなわん」


 源が温かい日本茶を啜り、深呼吸をする。


≪名前決めてあげる? 何が良いかな≫


≪うーん、頭が長いからロングヘッドとか?≫


≪それはなくない? インベーダーだからベーちゃんは?≫


 艦治とまなみがあーでもないこーでもないと侵略者の名前を考えていると、良光(よしみつ)から艦治へ電脳通話が着信した。


≪良光から通話だ、ちょっと出るね≫


≪りょーかい≫


 並行思考スキルで同時通話が可能な艦治ではあるが、片手間でまなみの相手をするのは違うと思い、いつも通話が入った際は断ってから受話するようにしている。


≪はい、もしもし≫


≪おう、今どんな感じだ?

 ある程度話が進んでんなら、後々の事を考えると俺らも合流して顔合わせしといた方が良いかなぁと思ったんだが≫


 良光は、正義に探索者としての心得を教えてもらったり、訓練の指導をしてもらったりなど、様々な事で世話になっているので、早い段階で隠し事をなくしておきたいと考えていた。


≪そうだね、その方が良いかも。

 えっと、全員来る感じ?≫


≪おう、姉貴も(あや)も入れて六人全員≫


≪了解。

 ナギ、ワープゲート開いて≫


≪了解致しました≫


 艦治がナギに指示を出したと同時にワープゲートが開き、ぞろぞろと良光達が侵略迷宮へとやって来た。


「うわっ!? 何だいこの化け物は!?」


「あー、これが侵略者か」


「何じゃ? また小僧が増えよったか」


「ドワーフのヒューマノイド?」


 一気に迷宮内が騒がしくなり、艦治が代表してぞれぞれを紹介する。


「で、こちらが良光のお姉さんの高須(たかす)(あきら)さんで、こっちが彩ちゃんです」


「どーもー、ぴっちぴちの十四歳♪ 高須彩です!」


 若さをアピールする彩だが、視線を向けるのは好々爺のように目を細めている源だけだった。


「あ、あのっ、私、高須輝と言います。よろしくお願いしますっ!」


「お、おう。俺は沢渡(さわたり)正義(まさよし)だ……」


 自分の名前を告げた後、輝と正義はぼーっとお互いを見つめ合っている。


≪姉貴のこんな表情初めて見るんだが≫


≪ついに輝さんにも春が来たかー≫


 良光と艦治がによによした視線を二人に送る。


「もー! いっつも私だけ除け者になっちゃうじゃん!!」


「何じゃ、腹が空いておるのか? 何ぞあったかいのぉ」


 一方、彩は源に醤油せんべいを貰っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ