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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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127:内緒話

 男性陣と女性陣が合流し、昼食は雪山にある山小屋に移動し、ゲレンデを眺めながらカレーを食べた。


「季節感バグるって」


「でも楽しみだよね」


 望海(のぞみ)がスノーボードをしたがったので、皆が付き合った形だ。

 良光(よしみつ)も口では文句のような事を言いつつ、表情は満更でもなさそうにしている。


 スキーもしくはスノーボードの経験があるのは(あきら)望海(のぞみ)だけで、他は未経験者だった。

 スキーとスノーボードのスキルはガチャで排出されない。

 ナギがスキーとスノーボードのスキルをインストールする事は可能だと説明したが、皆は一から練習する事を選んだ。

 大きな怪我を負う可能性はあるが、医療用ポッドですぐに完治するのと、出来ない事を練習して出来るようになる過程も面白いのでは、と艦治が提案したからだ。


 なお、本音としてはインプラントを入れていない(わたる)(あや)への配慮である。



「お前の彼女は頂いたー!」


「お先!」


 輝が望海の腕を取って、リフトに向かって歩いて行った。二人ともボードを抱えている。


「急にキャラにない事言い出したな……」


 姉の心境の変化を感じつつ、原因が何かまでは思い至らない良光。


「それでは初心者講習を始めます。

 まず、スノーボードよりもスキーの方が初心者の事故率が低い為、先にスキー技能を取得して頂きます」


 インストラクターヒューマノイド(ナギ)によるスキーの講習が始まった。



 スキースキルをインストールしていないとはいえ、亘と彩以外は身体強化スキルを持っているので、すぐに上達した。

 亘と彩も決して運動が苦手という訳ではないので、艦治達を待たせる事なく、同じタイミングでリフトに向かう事が出来た。


≪かんち、お願いね≫


≪了解≫


 まなみからの電脳通話を受けて、艦治が亘を同じリフトに乗ろうと誘う。


「まなみさんは良いのかい?」


藤沢(ふじさわ)さんと一緒に乗るでしょ」


 艦治の言葉通り、まなみは恵美を誘ってリフトへ乗り込んだ。


「何か怪しい」


「良いから早く乗るぞ」


 疑うような目で艦治と亘を眺めていた彩だが、良光に腕を引かれてリフトへと乗り込んだ。


「それで、何か内緒話かい?」


「さすがに分かるか」


 艦治と亘もリフトに乗り込むと、亘の方から切り出して来た。


「昨日、藤沢さんとセックスしたでしょ?」


「……随分はっきりと聞くんだね」


「はっきり言わないと伝わらない事もあるからね」


 艦治が照れたり茶化したりする事なく、何かしら言うべき事を言おうとしている雰囲気を感じて、亘は頷く事にした。

 そもそも、初体験を済ませた話で盛り上がりたいのなら、先ほどのサウナの時にいくらでもバカ話をするタイミングはあったのだ。


 艦治は亘が聞く気になったのを感じて、真っ直ぐ目を見て話を進める。


「藤沢さんの身体中にキスマークを付けたらしいね」


「……そんな事まで伝わってるのか。

 いや、夢中になってて、気付いたら、ね」


 亘も艦治の真剣な表情につられ、真面目に返答する。


「その様子なら、やっちゃったって事に気付いてるみたいだね。

 服で隠れない場所には付けない方が良いよ。

 僕もまなみに色んなところに付けられて、後から聞いてめちゃくちゃ恥ずかしかったからね」


「そうなのか。

 いや、こんな事わざわざ聞かせる方も恥ずかしいだろうね。ごめんよ」


「まぁあれは僕がまなみのものだっていう学校の女子達へ向けたマーキングだったみたいだけど。

 ……僕の事は置いといて。

 後で藤沢さんに謝った方が良いと思う。男女に分かれたのもキスマークを消す為に病院に向かったからだしね」


「病院!? そんな大事だったのかい!?」


 艦治の言う病院が、そのまま一般的な病院として受け取った亘が慌てる。


「いや、病院って呼んでるけど、神州丸(しんしゅうまる)内の医療施設の通称みたいなもんなんだ。

 まぁでも病院ってイメージで間違いないか。内出血を消す為にわざわざ病院に行ったりしないもんね」


 このままだと恥ずかしいだろうから消してあげよう、程度の思いやりで、まなみが医療用ポッドを使う事をすすめたのだ。

 一般探索者にはそんな使い方が認められる事はないだろう。


「そうか、キスマークがあるって事はセックスしましたって言っているようなものだものね。

 気を付けるようにするよ。ありがとう」


 亘が艦治に感謝を伝えたタイミングでリフトは頂上に着き、二人同時に地面へ降りた。

 雪による照り返しはそれほど強くなく、風も吹いていない。

 当然艦治達八人以外の利用者はいないので、初心者でも安心して滑る事が出来る。


「じゃ、ゆっくり滑ろうか」


 艦治は教わった通りのボーゲンで、速度が上がり過ぎないよう慎重に板の内側に体重を掛けて滑って行く。

 亘も艦治から少し距離を取って同じくらいの速度で滑っていると、後ろから勢い良く近付いて来た輝が、亘のスキー板の上をスノーボードで滑っていった。


「うぇーーーい!!」


「うわっ!?」


 突然の事に驚き、亘は尻もちを着いてしまう。


「大丈夫?」


 隣に止まった艦治が亘へ手を貸してやり、立たせてやった。


「問題ないよ。びっくりしただけだから」


 亘がウェアに着いた雪を払いつつ下を眺めると、輝がスノーボードの勢いそのままにワープゲートに飛び込んだのが見えた。


「うううぇーーーい!!」


 そして輝の声がゲレンデの上から聞こえて来た。


「……リフトの意味なくないかい?」


「いや、スキー場にリフトはいるでしょ」

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