125:裸の付き合い(男子高校生版)
七月六日 土曜日
「なぁ。視界録画とか視界共有を使えばよぉ、めっちゃリアルなAVが撮れんじゃね?」
「あぁ、一般の人はそうかもね」
「それはマズいのではないかい?」
朝。各自シャワーを済ませた後、まなみの提案により男性陣と女性陣に分かれた。
男性陣は軽食を摂った後、コテージから出て傾斜を降り、川岸に設置されているサウナ小屋へ向かった。
現在、サウナ部屋で良光と艦治と亘が男同士のくだらない話が繰り広げられている。
「ナギ、どうなの?」
サウナ室内には全裸の三人の外、白い馬型妖精の白雲と、白雲に跨った妖精ナギ、そしてライオン型支援妖精のテオもいる。
「艦治様とまなみ様、そして良光様は、電脳OSの設定で視界共有や視界録画を拒否するようにしてあります。
これは特別な設定ではなく最初から電脳OSに備わっているものですので、気付いている方は設定されているかと」
≪僕がまなみを撮ってた時は?≫
艦治がまなみの撮影会をした時はどうだったのかと、ナギに確認する。
≪ナミがまなみ様に電脳OSの設定方法をお教えし、艦治様のみ許可に変更されました≫
≪……一方的に撮れるのはフェアじゃないから、僕の電脳OSの設定もまなみのみ許可に変更しとこう≫
艦治が自分の電脳OSの設定を確認しながら、電脳通話越しに良光に設定変更方法を教える。
「この設定は皆に教えておいた方が良くねぇか?
艦治とまなみさんの秘密を知ってしまってる以上、変な奴らに目ぇ付けられたらヤバイだろ」
「確かにそうだね。撮影対象になる事を拒否しといた方が良いだろう。
特定の人物のみ常時許可の設定をするのと、事前に撮影許可申請があった場合は許可するか拒否するか選べる、みたいな事は出来るのかい?」
亘はまだインプラントを入れていないが、彼女である恵美にも関わる事なので、電脳OSの設定についてナギへ詳しい説明を求めた。
「可能です。
相手との親密度によって細かく設定可能ですし、撮影された写真や動画について第三者への共有を許可するかどうかまで設定する事が可能です」
「……これはインプラントを入れている人全員に詳しく設定出来るという事を公開すべきじゃないかい?
何故十八年もこんな重大な問題が発覚しなかったのか不思議でならないんだが」
ナギの説明を聞き、亘が電脳OSの使用方法や設定などについてを詳しく公開すべきであると訴える。
実際、一部探索者が、勝手に第三者を撮影しYourTunesに公開してトラブルに発展したケースも存在する。
「電脳OSを使ったトラブルや犯罪については、私達がインプラントの提供を開始してしばらくして発足した宇宙船内探索者集団<天怒人怨>の皆様が、抑止や解決に向けて動いておられます」
電脳OSを悪用した迷惑行為や犯罪が増えてしまうと、反神州丸派が騒ぎ立てて、結果として地球文明が神州丸から得ている恩恵そのものを失ってしまう可能性があると考えた人物がいた。
その人物が中心となり、<天怒人怨>という探索者における風紀委員のような役割を担っているのだ。
「実際、YourTunes内に電脳OSのおすすめ設定方法などの解説動画が上げられています」
「何だ、単に俺らが知らなかっただけか」
良光と艦治には、最初から全てを知っているナギという存在が身近にいた為、自ら調べるという事をしてこなかった。
その弊害として、熟練の探索者が知っている事を知らなかったりする。
「あと、電脳OSを詳しく調べる人が少ないっていうのも理由なんじゃないかな?
パソコンやタブレットを持ってても、全ての設定について詳しくなる訳じゃないし」
「なるほどな。
そろそろ一回出ねぇか?」
良光は立ち上がり、艦治と亘を誘ってサウナ部屋から出た。
川が流れているすぐそばに、檜で出来た一人用の水風呂が並んでおり、それぞれがゆっくりと水風呂に身体を沈める。
「ん゛ん゛~~~」
「あ゛あ゛~~~、目がチカチカする……」
「ひぃっ!? よく入れるね!?」
足を入れただけで冷た過ぎると判断した亘が、良光と艦治が肩まで浸かっているのを見てビックリしている。
「一度入っちまえば何ともねぇよ」
「身体の表面は冷たく感じるけど、サウナで身体の芯まで温まってるから大丈夫だよ。
入ってからじっとしてればめちゃくちゃ気持ち良いよ。
まぁ僕もサウナ初めてだけどね」
良光と艦治の説明を聞いて、亘も思い切って水風呂に浸かってみる。
「ぐぐぐぐぐ……。
確かにこれは、気持ち良いね」
亘が入ったのを確認し、艦治と良光は水風呂から上がってインフィニティチェアに座る。
「ずっと入ってっと身体の芯まで冷めちまうから、ほどほどにして椅子に座るんだ。
そしたらまた気持ち良いんだこれが!
サウナ最高!!」
良光が目を閉じて回る世界に身を委ねている。
「ふぅ~~~。
お酒飲んで酔っぱらったらこんな感じなのかな?」
「んー?
全然そんな感じにはならないんだけど」
艦治も良光のように整う事が出来たが、亘はまだその域に達する事が出来ていないようだ。
「んじゃ二週目行くか!
おっと、その前に水分補給しとかねぇと」
良光が水風呂から出て、汲み出されている湧き水を柄杓で受けて、ごくごくと飲み干す。
艦治も柄杓で受けて、湧き水を飲んでいると、ようやく亘も水風呂から上がった。
「うーん、やはりまだサウナの良さが分からないな。
暑い部屋に籠って、冷たい水に浸かる。何が良いんだ?」
「うっせ! 考えんな、感じんだよ!!
お前は川にでも入ってろ!!」
ざっぱーーーん!
良光がうんうん唸っている亘を引っ張って、川に落としてしまった。
「何するんだ!?
こうなったら、こうだ!!」
ジャバジャバジャバジャバ!!
「うわっ、止めてよ! 悪いのは良光でしょ!?」
「おまっ、止めろ!!」
とばっちりを食らった艦治が、良光の腕を引っ張って一緒に川へ飛び込んだ。
その後、全裸の男子高校生達は、身体の芯まで冷えるほど川遊びを楽しんだ。




