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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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117/167

117:とある国の反応

七月二日 火曜日

「一体何が原因だ?」


「分かりません。急に戦利品市場から締め出されました」


「背後にいるのは?」


「恐らく、神州丸(しんしゅうまる)かと……」


「一体何が原因だ?」


「……分かりません。

 いえ、考えられる原因はいくつも挙げられるのですが、どれが神州丸の癇に障ったのかが分からないという意味でして……」


「そんな事は分かっている!! 一体どれが原因なのかと聞いているんだ!! 今の今まで我が国の行動は見逃されていた!! あの先制攻撃に対する報復攻撃を受けた後、復興に手を貸して来たは向こうだぞ!? その後も友好国とはまではいかないが、モンスターコアも問題なく輸入が出来ていた。日本政府からも日本資本の企業からも、第三国資本からも手に入っていたんだ!! 何が原因かと聞いているんだ!! すぐに原因究明して対策を練るんだ!! ヘマをした人間を探し出して首を刎ねて神州丸へ差し出せ!! どうすれば今まで通りになるか、ナギの靴を舐めてでも聞き出して来いと言っているんだ馬鹿者!!」


「は、はいっ!! 分かりましたすぐに取り掛かります!!」


「……全く。何をしても怒りを見せなかった神州丸の態度が突然変わるほどの何があったと言うんだ」


「閣下。原因究明は別としまして、このままモンスターコアが手に入らない場合、例年通りの電気使用量で計算致しますと、備蓄用と特別戦時用のモンスターコアを合わせましても半年も持ちません」


「そうか。特別戦時用は使わず、備蓄用だけとするとどれだけ持つ?」


「二ヶ月ほどかと」


「なるほど。国民には節制させねばならんな。それでどうだ?」


「必要最低限の電力使用量に絞った場合、備蓄用モンスターコアで四ヶ月、国民が全く抵抗を見せない場合は五ヶ月ほどと考えます」


「四ヶ月でナギを頷かせる事が出来ると思うか?」


「恐れながら、全く分かりません」


「国内の抵抗勢力を抑えつつ四ヶ月か。その先があるかどうかのアテもなく四ヶ月……。

 どう考えてもワシの余命に見えるんだがな」


「わっはっはっはっ!!」


「笑ってる場合か!! その時はお前も一緒なんだぞクソ息子が!! 最後まで側近としての体裁を取り繕わんか!!」


「いやいやそうは言っても無駄だし無理だろ。ここまでここまで。どこかの国に亡命しようぜ」


「亡命したらワシらは他国の目を窺い細々とした生活を強いられるだろうが! ワシは今まで通りの生活がしたいの!!」


「それこそ無理ってもんよ。親父も留学した事があるから分かってるだろ? この国の在り方がどれだけ異様かってな」


「そんなもん言われんでも分かっとるわ!! それでも今の今まで続けて来たんだ。これからも今まで通り贅沢でワガママな生活したいだろうが!!」


「その態度が神州丸を怒らせたんだろ? 変わらない事が一番の原因だったんだろ?

 もう無理無理。じいさんが死んだと同時にこの国を捨てるか、諸外国を倣って民主化するしか選択肢はなかったんだよ。

 親父がじいさんの跡を継いだ時点でこの結末は決まってたんだって」


「それを言うならお前もワシと変わらんではないか!? ワシの跡目を継ごうとしている以上、お前もワシの事を言えんだろうが!!」


「あー、俺は自分の資金で立ち上げた会社が国外にあるからいくらでも生きて行けんだわ。

 って事で、あと四ヶ月か五ヶ月か知らんが、精々頑張んだな。あばよ」


「何だと!? 貴様、それでもワシの息子か!? 待て、貴様らもあ奴について行くと言うのか!? 許さぬ、許さぬぞ!!」



「…………行ったか。あれでもワシの子供だ。無事に生きてくれるならそれで良い。

 さて、残っている者で今後の対応を考えるとしようか。

 誰か、この状況を打開出来るような案や人脈を持っているものはおらんか?」


「失礼致します。閣下、残念ながら……」


「この国が残念な状況にあるのは分かっておる! 報告は簡単に伝えよ、時間はそれほど残されておらんのだぞ!!」


「いえ。この国についての報告ではなく、閣下のご子息についての報告でございまして」


「何? 奴ならさっき出て行ったが。奴の向かう先は恐らく……」


「誠に残念ながら、先ほどご子息はご子息の部下の手で射殺されました」


「……何だと?」


「その部下はご子息を射殺後、自らも拳銃をこめかみに当てて発砲。自殺致しました」


「……何と言う事だ。何故そんな事を」


「ご子息の部下は、インプラントを埋める手術を受けておりましたので、恐らくは……」


「神州丸の仕業だと申すか!?」


「はい」


「何と……。我らは最初から神州丸の手のひらで踊らされていたという事か。

 しかし、インプラントを入れている者の行動を外部から操る事など可能なのか?」


「分かりませんが、他国の工作員は手術を受けた者を使わないという仮説は以前、報告書として上げておりました」


「ワシの記憶にはないが」


「恐らく、ご子息で止められていたのかと」


「何の理由で?」


「手遅れだと思われたのか、もしくは逆手に取って何かをしようとされていたのか。

 今となっては分かりません」


「何にしても、もはやこの国の行く先は絶たれたも同然という事か……。

 こんな事なら、次男を生かしておくのだったな」


「これからどうされますか?」


「日本以外の国にトウモロコシを用意するよう交渉しろ。無理だろうがモンスターコアも要求しろ。

 ……いや、待て。何故息子の部下を使ってワシを射殺せなんだ? いくらでも機会はあったはずであろう?」


「……別に目的がある、とか」


「一体何が目的だ?」


「……分かりません」


「原因も目的も何もかも分からんか。これはもうお手上げだな……。

 最期に残っているミサイルを全部ぶっ放すか」


「失礼致します! 報告致します、全てのミサイルが無力化されております!!」


「……本当にお手上げだな」

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