113:各国の反応
【とある国その一】
「何だこの報告書は……」
「支援妖精を買い取ってほしいと我が国の買取店に来た日本人探索者についての報告書です」
「そんなものは読めば分かる!
何故即刻追い出さなかった!? 我らがこいつらに関わった事が神州丸に伝われば、何をされるか分からんのだぞ!?」
「問題ございません。この報告書を神州丸の外交大使であるナギ氏へも送付してあります」
「……この内容であれば、変な探りを入れようとしていない事は伝わるか。
しかし、報告書が正しいかどうか、どうやって証明するつもりだ?」
「証明の必要はないと考えております」
「どういう意味だね?」
「探索者の脳にはインプラントが埋め込まれています。
全ての探索者の視覚・聴覚から神州丸は情報を手に入れる事が可能だと考えております」
「つまり、この男と女へ質問した内容は、リアルタイムでナギ氏へ伝わっていただろうと言う事かね?」
「その通りです。
我々からこういう事があったという報告がない方が、変な勘繰りをされる可能性が高いと考えます」
「この二人の目と耳を通じて得たであろう情報と、我々から送った報告書の内容が一致しておれば、我々が神州丸に害意を抱いていないという証明になる、と?」
「そう受け取られるのが最上の結果であるという程度です」
「ふむ……。
なるほど、良くやってくれた。これで神州丸に我が国が友好国であると認められると良いのだが」
「それは難しいかと」
「やはり過去の先制攻撃が響いておるかね?
当時の首脳陣は一族郎党根絶やしにしてやったが、それでも足りぬか?」
「いえ、先制攻撃の有無は関係ないと考えます。
現在神州丸が友好国であると認めているであろう国は、一国もないと思われます」
「……同盟国である日本であってもか?」
「はい。彼女は所詮異星人が作り出した人工生命体でしかありません。
地球上の他国とすら価値観の違いで外交関係が上手く築けないような状況で、神州丸と友好関係を築くのは、非常に難しいと思われます」
「現状では害意がない事を証明していくしかないと言う事か。
分かった。引き続き日本での活動内容を上げてくれたまえ」
「かしこましました」
【とある国その二】
「こちらの質問に答えられない二人が、何故入店時に支援妖精の買い取りをしてほしいという発言が出来たんだ?」
「神州丸にとっては、支援妖精の買取自体は問題ないからではないでしょうか?
すでに我々が支援妖精に対して技術的価値を見出せない事を把握しているでしょうし」
「解剖してもモデルとなった動物の体内と大して変わらんという結果だったか。
買い取られても問題ないと思われているという事か」
「それとは別に、買い取り交渉時の情報を抜いてこちらの反応を窺うのも目的の一つの可能性があります」
「支援妖精だけでなく、探索者の目と耳からも情報が抜ける可能性、というヤツか」
「ええ。さすがに全ての探索者の目と耳をモニターする事は不可能だと思われますが、今回のような目立つ探索者であれば、リアルタイムでモニターされていても不思議ではありません」
「では、すぐに追い返したんだな?」
「はい。追い出すと共に、協定を結んでいる国々へ現状判明している事をリークしておきました」
「協定か。国力の低い国々にリスクのある行動を取らせて、我々がリターンを得る為の仕組み、だったか」
「満足に情報を得る事が出来ない国にとって、我々が当たり前に理解している情報すら貴重で得難い宝物だと喜んでくれますからね。
身代わりになってくれるのですから、彼らはかけがえのない友人ですよ」
「物は言いよう、だな」
「結局、ラスプチニスタンが彼らを手元に置いたようです」
「奴らに対して神州丸がどう動くか、情報収集と行動分析を頼むぞ」
「はっ」
【とある国その三】
「探索者二名を保護する事と致しました」
「良くやってくれた。
支援妖精は使えんとしても、あの二人から神州丸内部の情報を得る事が出来れば、内部へ侵入した時の役に立つだろう」
「しかし、彼らは質問に対して満足に答える事が出来ません」
「事前に用意した質問で、イエスとノーで答えられるようにしたのではないのかね?」
「複数の質問に対し、回答が矛盾する結果となりました。
また、同じ質問を繰り返した際も、イエスとノーで回答が異なる結果が出ております」
「探索者に舐められているのではないか?
金なり食事なり、待遇に対する要求はあっただろう。
許容出来る範囲内で与えてやれ」
「そのようにしているのですが、三日経った現在もなお回答は変わらず、支離滅裂なものになっております」
「……暴力は試したか? それと薬は?」
「いえ、まだ試しておりません。
探索者はスキルの影響で肉体と精神が強化されるケースがあり、暴力も薬も効果がない場合がありますので」
「その他、試した事は?」
「男にも女にも、それぞれ女と男を宛がいました。
ベッドの中での回答も、支離滅裂な内容に変わりはありませんでした」
「肉欲でもダメだったか。
ダメで元々だ、暴力も薬も試したまえ。潰れても構わん」
「替えは早々手に入らないと思われますが……?」
「だからこそ徹底的に試せる事を試すべきだ」
「了解致しました。
しかし、日本国内で潰してしまうのはリスクが大き過ぎます。
念の為こちらへ移送させた方が良いかと」
「それもそうだな。
では早急に手配したまえ」
「はっ!!」




