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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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111:株式市場の反応

六月二十四日 月曜日

【機関投資家】



「引けで搔っ攫った奴がいるな」


「空売りの買い戻しでは?」


「いや、分析によると入っていた空売り以上に戻してる」


「今の状況のサクセサー商事を買って、何の得が?」


「明日になってみんと分からんが、注目を集めてボラを作り、日中の取引で益を出すつもりか」


「もしくは空売りをしやすいように上げただけか」


「もし一社のみでこの動きを作るのであれば、数日中に大量保有報告書が提出されるはずだが」


「何にしても、明日は注目を集めるのは間違いなしですね」


「まぁうちはこんな不安定な株には手を出さないがな」


「何らかの明確な材料が出て来ないとねぇ」


「持ってても仕方ないしな」



【空売り専門機関投資家】



「クソッ! 収支がマイナスだ!!」


「最後の動きはなかなか予想しにくかったですね」


「どんなアルゴ使ってやがる……、明らかに一社だけの動きじゃないぞ」


「複数の仕手が手を組んでいるんでしょうか」


「仕手が同業者を信じられると思うか?」


「いや、そうは考えにくいですが、まだ動き始めた初日ですからね」


「うちの分析ではサクセサー商事はまだ高いんだ。

 次の決算はまだしも、神州丸(しんしゅうまる)利権からハブられた以上、次の四半期は前年比で大きなマイナスは避け切れない。

 なおかつ役員が大きく刷新され、経営状況が安定していない。まだ下げる余地があるんだ。

 その状況で誰が買い集めていると言うんだ……」


「解散価値で買われている可能性は?」


「PBRで見るとその可能性は低いが、サクセサー商事の本社が富士市にある事を考えると、数年後の地価やビルの資産価値を見据えている可能性もなくはない。

 しかし、それでももっとPBRが下がってから動いても良さそうなものだが」


「何かしら別の思惑がある、とか」


迷宮(ダンジョン)関連株だからな、支配権を手にして経営陣を刷新。社名を変更して悪いイメージを払拭し、戦利品の売買ノウハウを手に入れるというのは悪くない手ではあると思う。

 それでも、やはりまだ割高なんだよな」


「海外資本が狙っている可能性は?」


「それも可能性は低いだろう。

 迷宮関連事業は法律で外国資本持ち株比率が20パーセントを越えてはならないと定められている。

 神州丸を刺激しない為に東証が徹底的に調査をするから、一時的に上限を超えたとしてもすぐに警告が出るシステムになっている。

 株式取得した法人の親会社やその上まで調査対象になっているから、余程の抜け道がない限り考えられない」


「……国内資本が裏から操られている可能性は?」


「なくはないが、バレた時点で裏に潜んでいる国は相当なペナルティを食らうだろうな。

 何にしても、今日のマイナスを明日以降取り戻しに行くか、それともヤバいと判断して手を引くか。

 上役の判断を仰ぐしなかい」


「もしかしたら何らかの情報を手に入れている方がおられるかも知れませんしね」


「だと良いが」



【国内企業】



「……これは一体何ですか?」


「君が知る必要のない事だ」


「私は情報システム部のセキュリティ担当です。

 自社のPCがハッキングされているログを発見した以上、黙っている訳にはいきません!」


「ハッキングなどされていない」


「しかし実際に外部から干渉されたログが残っています!」


「これはハッキングではない」


「では外部からの操作を受け入れたというのですか!?」


「そうだ」


「何の為にですか!?」


「それは君が知る必要のない事だ。

 君が仕事熱心なのは理解しているし、今回のログ発見からの行動も非常に評価が出来るものだ。

 しかし、何ら緊急性も犯罪性もない。問題ないんだよ」


「……上に報告しても問題ないと言う事ですね?」


「もちろんだ。これは私の独断で動いている業務ではない」


「法務部も経営戦略室も承知している事である、と?」


「そうだ」


「しかし! 何の為にサクセサー商事の株を買い集めているのですか!?

 我が社とは全く関係のない業種であり、投資的価値があるとも思えません!

 なおかつ、我が社は事業に関係のない投資を行わない社風です。

 これは明らかに異常です!!」


「これは通常業務の一環だ。問題ない」


「この株式売買の記録をIRで発表するという事ですね?」


「いや、IRで発表するべき内容ではない。

 大量保有報告書を提出する基準以下の取得であり、四半期決算を跨がない場合は帳簿にも資産として記す必要がない」


「短期保有目的という事ですか?

 売却した際に損益が出た場合は?」


「もちろん有価証券売却益もしくは売却損を立てるとも」


「……我が社の意思ではない売買なのに、ですか?」


「君が非常に優秀な社員であるからこそ、本当の事を伝えるとしよう。

 今から言う事は、決して口外してはいけない。

 守れるかね?」


「承服しかねます。

 仰る本当の事というのが犯罪性のある事であれば、私は法務部や警察や証券取引所や公正取引委員会など、ありとあらゆる場所に報告するつもりです」


「ならば私の口からは何も伝える事が出来ない。

 ご苦労だった。通常業務に戻りなさい」


「……必ず真実を突き止めます!

 失礼します!!」



「何で!? カメラには何も映っていない!?

 録音も出来ていない……!!

 どういう事なの……?」

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