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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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103/167

103:将来の話

「何で地球じゃなくて木星なんだよ!?」


 木星のそばで宇宙遊泳を楽しんだ良光(よしみつ)達が、戻るなり艦治(かんじ)へ詰め寄った。


「だって、地球から見える位置で宇宙遊泳なんてしたら地球から観測されちゃうじゃん」


「……そう言われれば」


 望海(のぞみ)がまなみの肩を揺さぶっていたが、理由を聞いて納得してしまった。


「叫んだらお腹減ったぞ。家に帰してくれ」


 (あきら)がお腹をさすっているのを見て、艦治が皆を食事に誘う。


「じゃあバーベキューでもしましょうか。山か川か湖か海、どこが良いですか?」



 話し合いの結果、浜辺でバーベキューする事となった。ワープゲートを使い、海のある区画へ移動する一同。

 外交大使のナギが肉を焼く姿を見て恐縮する皆だが、良光が気にせずばくばく食べているのを見て、徐々に緊張と遠慮をしなくなっていった。


「井尻君が前艦長と同じDNAで、まなみさんがその奥さんと同じDNAなんだね。

 ホントにすごい確率だよねー」


 恵美(えみ)が焼きおにぎりを食べながら、しみじみと呟く。


「そう、運命なんだよ!」


 まなみが操る(つかさ)が恵美の皿に追加の焼きおにぎりを乗せていき、そんなに食べられないと恵美を困らせている。


「宇宙遊泳が出来て、海も川も湖も山もある宇宙船を持ってるなんて、すっごく、…………すごいよね!!」


 望海(のぞみ)が上手く表現出来ず、とにかくすごいと言うに留まった。


「他にも色々あるんだよ。ゲームセンターとかボウリング場とか、プールも遊園地もあるんだって。

 僕もまだ見てない施設がいっぱいあるんだ」


「えー! 一緒に見に行こうよ!!」


 (あや)が興奮した様子で艦治に抱き着こうとしたのを、まなみが割って入って止める。


「あっ、ごめんなさい。

 でも、艦治さんを盗るって言ったのは冗談で、今もついつい昔の癖で……」


「……良い」

「でもかんちは私のなんだからね! 抱き着くなら司を貸してあげるよ!!」


 まなみが司を使って彩にそう提案した。

 彩は司をまじまじと見つめる。


「ちょっと艦治さんに似てるような……」


「あ、やっぱりダメ。司も貸してあげないから!」


 まなみがまなみの後ろに隠れてしまった。


「あのクジラは本物なのかい?」


 (わたる)が遠くで潮を吹き上げているクジラを見つめ、艦治に尋ねた。


「あれもナギが遠隔操作している人工生命体なんだって。

 だから一緒に泳げるんだ。めちゃくちゃ気持ち良かったよ」


「えーーー!? 泳ぎたい!!」


 彩がまた艦治に抱き着こうとしかけたが、またまなみに嫌な思いをさせてしまうと感じて自制し、今度はまなみに抱き着いた。

 まなみは彩を抱き返し、頭を撫でてやる。


「何か変か感じだなー」


 まなみの気持ちを司が口にするその光景を、周りの皆がこっちのセリフだと思って眺めていた。



 輝と彩は、ナギが用意したウエットスーツに着替え、クルーザーに乗って沖へと出て行った。

 元々テスト勉強が目的で集まった高校生組は、浜辺にビーチパラソルとテーブルを立て、波の音を聞きながら勉強の続きに取り掛かった。


「……井尻君って、テスト勉強する意味ある?

 ってか大学行く必要ある? 仕事する必要もないよね?

 気になって勉強に集中出来ないよー」


 心に浮かんだ疑問を処理し切れず、恵美が艦治に問い掛ける。


「分かんない事があればナギさんに聞けばいいでしょ?

 お金もいっぱい持ってるだろうし、そもそも何かを買う必要もないよね?

 将来どうしたいとかあるの?」


「んーっとね。

 今のところ、僕が神州丸(しんしゅうまる)の艦長だって世界に公表するつもりはないし、表向きは大学生という身分でいたいと思ってるんだ。

 大学を卒業した後は探索者として活動するつもりで、これと言って将来何をしたいかとかは考えてないんだ」


 艦治がそう話しつつ、まなみに顔を向ける。


「あえて言うなら、まなみと楽しく暮らしたい、かな」


 まなみが無表情のまま、艦治に抱き着く。

 その様子を見て、他の皆が苦笑いを浮かべた。


「仲が良いのはうらやましいが、正直そう簡単には行かないんじゃないかい?

 付属大学でも艦治の噂が回ってるとの事だし、探索者としても注目を集めているんだろう?」


「それは私も思う。

 まなみちゃんの行動があまりにも素直過ぎるし、井尻君も絶対にバレたくないって感じじゃないんだよ。

 そのうち二人が神州丸にとって重要人物だっていうのは知れ渡るような気がするんだよね」


 亘と望海がそう指摘して、良光も二人の意見に頷いてみせる。


「もういっその事、自分で会社作っちゃえばー?

 で、神州丸の技術を地球に普及させてってよ。そしたら私達も嬉しいし。

 ワープゲートが一般的になれば、日帰り海外旅行が出来るでしょ?

 気軽に宇宙旅行が出来るようになるでしょ?

 家事もヒューマノイドがしてくれるし、お肉も食べ放題じゃん!」


 無邪気に笑う恵美の発言を受けて、艦治が腕を組んで考える。


「えっと、お肉は普通に日本の国産牛だって事は先に伝えておくとして……。

 会社を作れば、その会社経由でお金を対価として技術を広めていく事が可能なのか」


 今現在、神州丸は技術を求める国や団体、会社などに対して指導する事はしていても、直接販売する形はとっていない。

 車の自動運転技術についても、神州丸からもたらされた資料を元に、日本の自動車メーカーが開発したものだ。

 ただし、ナギが用意した艦治と良光のミニバンは除く。


「一から会社作るのって面倒じゃね? ちょうど良い会社を買収しちまえよ。

 社長に指示を出すだけで後は全部やってくれる。お前は何もする必要ねぇんだぞ?」


 良光が悪い笑みを浮かべて艦治に囁く。


「買収……?」


「あるじゃねぇか、最近急激に株価が下がってる手頃な会社が」


「サクセサー商事か!」

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