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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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101:高須家へ集合

六月二十二日 土曜日

 朝、艦治は身支度を整えた後自宅に戻り、(つかさ)(まなみ)がミニバンで迎えに来るのを待ちながら勉強会の準備を済ませた。


「制服しか着なかったから変な感じがするよ」


「そう言えばそうだね」


 ミニバンに乗っていたまなみはTシャツに七分丈のズボン姿で、少し落ち着きなさそうにしている。

 艦治も同じようなラフな格好だが、それぞれが肩に乗せているナギとマーシェ(ナミ)の和服姿が浮いてしまっている。

 ちなみに、今日は土曜日なので雅絵(まさえ)には休むように伝えてある。なので司の支援妖精という設定のマーシェは、ナミが遠隔操作している。


 艦治の自宅からそれほど離れていない区画に、高須(たかす)家の屋敷は存在する。

 良光(よしみつ)は古くからこの周辺を所有していた地主の家系で、神州丸(しんしゅうまる)が墜落して以降、元々裕福だったのが高騰し続ける土地を売ったり貸したりする事で、さらに莫大な富を得る事となった。


≪着いた≫


≪今行く≫


 インターフォンを押す事なく玄関で待っていた艦治を、良光が迎えに出て来た。


「わー! 艦治、久しぶりじゃん!!」


「お久しぶりです、(あきら)さん」


 良光と共に迎えに出て来たのは、良光の二つ上の姉である輝だ。現在大学二年生。

 ボーイッシュな見た目と性格で、昔は良光と三人でよく公園で遊んでいた仲だ。

 輝の肩にはリス型支援妖精が座っている。


「初めまして、式部(しきぶ)(つかさ)です」


 輝と艦治に割り込むようにして自己紹介をするまなみ


「初めまして、いらっしゃい。転校生なんだって?

 大変な時期だろうけど頑張ってね!」


「……ありがとうございます」


 輝はまなみの手を取って握手をした。分け隔てのない性格だと知って、まなみはやや警戒心を解いた。


「輝さん、これ僕達からの手土産です。皆さんで召し上がって下さい」


「えー!? そんなの良いのに。でも、ありがたく頂くね」


 艦治はナギにお願いして用意してもらった洋菓子の詰め合わせを渡した。


 屋敷に上がり、艦治達は良光の案内で板敷きの廊下を進み応接間へ通される。


「適当に座れよ。俺もノートとか取ってくるわ」


 良光が自分の部屋へと戻って行った。

 応接間ではすでに望海(のぞみ)が座ってお茶を飲んでおり、まなみに向けて手を振っている。


「おはよっ」


≪望海ちゃん、早いね。もしかしてお泊り?≫


≪そんな訳ないでしょ!? あなた達じゃないんだから……≫


 望海ちゃんが顔を赤くさせてツッコミを入れるが、まなみが否定しない事から、さらに顔を赤く染める。


≪え、もしかしてホントに一緒に……?≫


≪半同棲みたいな感じかな?≫


「えー!?」


「きゃっ!? 望海さん、どうしたんです?」


 まなみの告白に驚き、突然声を上げた望海を見て、(あや)がお茶を運んで来たお盆をひっくり返しそうになる。


 彩は良光の三つ下の妹で、現在中学三年生だ。艦治の妹である治奈(はるな)と同い年で、治奈が事故に遭うまでは良く一緒に遊ぶくらい仲良くしていた。


「彩ちゃん、久しぶり。うちの高校目指してるんだって?」


「艦治さん、お久しぶりです。

 お兄ちゃんが勉強教えてくれないんですよ、艦治さんが代わりに見てくれません?」


 彩は輝とは違い、髪の毛を長く伸ばして非常に女の子らしい雰囲気を醸し出している。

 まなみはまたも彩と艦治の間に割り込んだ。


「お邪魔してます。式部司です」


「あっ、こんにちは。彩です。

 すみません、艦治さんとお会いするのは久しぶりだったので、嬉しくてつい……」


 ぺろっとわざとらしく舌を出して謝る彩を見て、まなみは警戒心を高める。


≪友達の妹に対抗意識出したりしないでね。テスト勉強しに来たんだから≫


≪分かってるけどさーーー≫


≪それに今のまなみは司だから。ああ見えて二人とも、勘が良いからバレちゃうよ?

 ……まぁ別にバレても問題ないんだけどね≫


 運んで来たお茶をそれぞれに配り終えて、彩が艦治と司の肩を見比べて質問する。


「お二人とも、人型の支援妖精なんですね。すごく珍しいんですよね?

 おねえのチャンピーはリス型だし、おにいのテオもライオン型だし」


「さぁ、どうかな。

 彩ちゃんも十八歳になったら探索者になるつもり?」


 艦治は肯定も否定もせず、彩へ質問を返す。


「どうだろう……。

 お兄ちゃんが結構楽しそうに迷宮(ダンジョン)に通ってるのを見てるので、私も行けちゃうのかなぁとは思ってるんですけどね。

 艦治さん、手取り足取り指導してくれますか?」


 彩は両手で口元を隠し、上目遣いであだとらしく艦治を見つめる。


「僕はダメみたいなんだよね。教えるのが下手だって良光に言われちゃってるし」


「止めとけ。艦治についてったら絶対大怪我すんぞ。

 ほら、勉強するっつってんだろ」


「えー? もうちょっと良いじゃん!」


 まなみの不機嫌そうな様子を察し、良光が彩を応接間から追い出す。


≪何かごめんね≫


≪まぁしゃあないだろ。

 でもあれだな、司が嫉妬してるのって何か、アレだな≫


≪だよね。もう感覚バグって来てるからちゃんと言ってくれた方が修正出来て助かるわ≫


ピーンポーン♪


「おっと、チャイムが鳴ったって事は(わたる)かな」


 良光が玄関に亘を迎えに行く。


「もう! 今は司なんでしょ? 我慢しないと」


「うぅぅ、分かってるんだけどさぁ……」


「彩ちゃんも本気で井尻君を狙ってる訳じゃなくて、小さい時から知ってるから懐かしくて甘えてるだけじゃん?」


「いやそれは違うと思うよ! だって……」


 望海とまなみが小声でやいやい言い合ってるのを、艦治は見て見ぬ振りをしつつノートや筆記用具を鞄から出して勉強の準備をしている。


「おはよう、今日はよろしく頼むよ」


「おはよー、みんな早いねー」


 (わたる)恵美(えみ)を連れて良光が戻って来て、ようやく勉強会がスタートする事となった。

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