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20/22

嫌いが恋の入口だなんて――誰が想像しただろう

ワスト領の重臣として仕えるオーエンは、

朝から胸の奥がざわついていた。


それは天候のせいでも、体調のせいでもない。


もっと“政治の空気”に近い、嫌な兆しだった。


――ミンスタ領から、“領主夫婦の離縁を求める書状”が届いたのだ。


ワスト領とシズル領は昔から助け合う友好国。


そのシズルを、ミンスタ領主ゼンシが突然攻め込んだ。


本来はミンスタが同盟を裏切った形である。


それにもかかわらずゼンシは、自らの非を覆い隠すようにして――


「同盟は破れた。妃シリを返せ」


と一方的な離縁を言い渡してきた。


領主グユウと前領主マサキの顔は朝から険しい。


今日の重臣会議は、ただの政治判断では済まない。


そして、問題の中心にいるのは――ミンスタから嫁いできた妃、シリである。


オーエンは彼女が苦手だった。


“人を惹きつけ、意のままに動かす”と噂されるミンスタの血。


青い瞳に射抜かれると、言い知れない畏れが胸に残る。


ーーミンスタの魔女。


心の奥で、そう呼んでしまう自分がいる。


その日の会議室に足を踏み入れた瞬間、


オーエンは、背筋にざらりとした違和感を覚えた。


ーー女の匂いがする。


政治の場には似つかわしくない、

柔らかく、それでいて強い“気”が満ちていた。


――まさか。


グユウの後ろから、青い瞳が現れた。


妃シリが、自らの意思で会議に入ってきたのだ。


「何事だ、女を会議に通すなど・・・!」


マサキの怒声が響く。


オーエンは深くうなずいた。


まったくの同感だった。


政治は男が担うもの――そう教えられ、そう信じてきた。


だが次の瞬間。


「私が望んで参りました。よろしいでしょうか、義父上」


シリの凛と響いた声が、場の空気を一瞬で凍りつかせた。


青い瞳がこちらを見るたび、理由もなく胸がざわつく。


その瞬間――オーエンは悟った。


この会議は“ただでは済まない”。



家臣ジムが読み上げた書状の内容は、想像以上に理不尽だった。


「ワスト領、盟約破りにつき離縁と妃の返還を命ずる」


重臣たちがざわめき出す。


「同盟が崩れたなら離婚は当然だ」

「妃を返すのも、古来の流儀だ」

「やむを得ん・・・」


年嵩の重臣ほど、“形式を守るべし”という意見が強い。


オーエンも、内心ではその一人だった。


妃がどう思おうが、政治の決まりごとは政治の決まりごと。


男たちで決め、淡々と進めるべき事柄だ。


そう――思っていた。


だが。


静まり返る空気の中、シリがすっと立ち上がった。


その瞳には冷たい青の光が宿っている。


「私は――離婚いたしません」


その声は、予想よりもはるかに落ち着いていた。


重臣たちの息が一斉に止まる。


「な・・・」

「離婚しない?」

「そんな前例はないぞ!」

「妃の意見で政治が動くと思うのか!」


怒号が飛び交う中、ただ一人、シリだけが微動だにしなかった。


「兄上が先に約束を破りました」


静かな語り口の奥に、怒りの炎が燃えているのがわかった。

怒りの色を宿した青い瞳が星のようにきらめいた。


「シズル領を攻め、同盟を踏みにじったのはミンスタ領です。

それなのに“ワストが同盟を破った”と断じるのは、あまりに筋が通りません」


青い瞳が、まっすぐに重臣たちを射抜く。


オーエンは息を飲んだ。


ーーこんな女が、いるのか。


その言葉は“言い負かす”という生やさしいものではない。


場の支配そのものだった。


重臣たちの言葉が、次々と消えていく。


「私はミンスタ領には戻りません。私はワスト領の妃です」


その一言に、空気の層が変わった。


誰もがシリの瞳を見るのをためらった。


視線を合わせれば、負ける。


オーエンでさえ、胸の奥に冷たいものが落ちる。


ーーこの女は、“妃”という枠をすでに逸脱している。


言葉ひとつで、この重臣会議をねじ伏せる力を持っている。


そして次の瞬間、場の均衡を破る言葉をシリは告げた。


「離縁の引き渡しは――私が対応します」


部屋が凍りついた。


「マ、マズいぞそれは・・・!」

「妃自らが行くなど聞いたことがない」

「向こうの家臣に囚われたらどうする!」


重臣たちの慌てふためく声が飛び交う。


だが、シリは微笑んだ。


その微笑みにさえ、場の空気を変える力があった。


「前例がないのは承知しています」


その笑顔に、重臣たちの空気が変わる。


コロコロと表情を変えるシリに、重臣たちが引き込まれていくのを感じた。


ーー人を虜にして惑わす。


そんなシリを苦々しくオーエンは見つめた。


「ですが、兄上の命令もまた“前例のない離縁”。ならば、こちらも前例に倣う必要はありません」


その瞬間、オーエンの胸に雷が落ちたような感覚があった。


ーーこの女。何を考えている?


妃の域ではない。

騎士でもない。


だが、政治の流れと人の心を、誰よりも読む女。


そして、まさかの瞬間が訪れる。


「離婚協議に同行する家臣は――オーエンを希望します」


空気が完全に止まった。


オーエンは、自分の名が呼ばれたことが信じられなかった。


ーーなぜ俺なんだ。


よりによって、“ミンスタを最も嫌っている自分”を。


「オーエンはワスト領のことを第一に考えています。

何か・・・困った事があれば、オーエンはその事を念頭に対応するはずです」


シリは淡々と説明をする。


そして、視線をまっすぐに向ける。


「そうですよね。オーエン」

オーエンを見つめながらシリは質問をした。


目を逸らしたくても、シリの瞳が逃がしてくれない。


挑むように、揺るぎなく、

ただ真っ直ぐにこちらを見つめている。


「それとも難しい?」

挑戦的な瞳でシリはオーエンの目を覗き込む。


彼女の言葉が、最後の一押しとなった。


オーエンの喉が、乾いた。


ーー逃げたら負けだ。


「・・・承知しました」


その瞬間――胸の奥で何かが小さく弾けた。


それがなんなのか、オーエンはまだ知らなかった。


「小休止しましょう」

ジムが声をかけた。



重臣たちは廊下へなだれ出て、口々に興奮を漏らした。


「参りましたね・・・」

「妃様、恐ろしいほど肝が据わっている」

「あの瞳で見つめられたら、敵わん」

ジェームズが、ほほ笑みながら肩をすくめる。


オーエンだけは黙っていた。


廊下に立ったまま、腕を組み、眉間に深い皺を刻んでいる。


隣に立ったジムが、ちらりと横目で見た。


「・・・型破りで大胆不敵」

オーエンは噛み締めるように呟く。


その声には、呆れだけでなく、よくわからない悔しさが混じっていた。


「次に何を言い出すか、ワクワクしますよね」

ジムは軽やかに笑う。


オーエンは顔をそむけた。


「男に生まれていたら、きっと――」

そこまで言って口をつぐむ。


シリを認める言葉など、喉が裂けても言いたくなかった。


ジムはそんな彼の心の内を見抜いているようだった。


「私はね、オーエン」

柔らかな声で続けた。


「グユウ様がすごいと思うんですよ」


「・・・何がだ」


「前例のないシリ様の提案を恐れず受け入れる。

彼女の力を信じて、任せようとする。あれは、普通の男にはできません」


オーエンは口を閉ざしたまま、ゆっくり頷いた。


小休止が終わり、会議が再開された。


「それでは引き続き重臣会議を始めます。冒頭で、シリ様からの提案があります」


ジムが告げると、会議室に再び静けさが戻った。


シリは椅子から立ち上がり、

離婚協議に同行する三名の家臣の名を呼んだ。


「ジム、ジェームズ、オーエン。お願いがあります」


呼ばれた三人が同時に顔を上げる。


どの顔にも緊張がにじんでいた。


「離婚協議中、もし命の危機に見舞われたら――私を置いて逃げてください」


場がざわめいた。


「シリ様・・・それは・・・」

ジムでさえ返す言葉を失う。


「女を見捨てて逃げるなど、できません」

オーエンは不機嫌そうに、しかし強く言い切った。


「そうです。シリ様を守るのが私たちの務めです」

ジェームズも不安げに続いた。


シリは静かに、しかし揺るぎなく言葉を重ねる。


「私はミンスタの人間。仮に連れ去られても、命までは奪われないでしょう。

それよりも――ワストの重臣三人を失うほうが、領にとっての損失は大きいのです」


重臣たちは、思わずグユウを見た。


領主は、凪のような瞳で短く答えた。


「あぁ」


ただその一言で、全員が“領主の了承済み”と悟った。


シリは小さく息を吸い、前に進み出た。


「領主からも了解を得ています。

ですから――必ず生きて帰ってください。これは命令です」


その眼差しに逆らえる者はいなかった。


「・・・承知」

オーエンは一刻も早く目を逸らしたいように呟いた。


続いてジェームズ、ジムがノロノロと頷く。


シリはにっこりと微笑んだ。


その笑顔は、覚悟を秘めた戦士の微笑みにも見えた。


そして――会議はそのまま、シリの独壇場となる。


会議が進む中、シリは、

兵糧封鎖や城の備蓄に至るまで、重臣たちを圧倒するほどの戦略眼を見せた。



会議が終わると、領主夫婦は静かに部屋を出ていった。


マサキも深々とため息をつき、頭を振りながら続く。


残された重臣たちは、興奮冷めやらぬ様子で口々にシリを称えた。


「・・・すごいお方だ」

「まさか、ここまでとは」

「これが・・・妃、なのか」


ただ一人、オーエンだけは黙ったまま廊下へと向かった。


その先で、ジムが壁にもたれ、彼を待っていた。


「オーエン。警護の件、後ほどジェームズと打ち合わせを」


「承知しました」


ジムは、意味ありげに微笑む。


「先ほど、シリ様と少しお話ししました。

 警護についても、何か考えておられるようですよ」


「あの妃は・・・いつもあんな感じなのか?」


オーエンの問いに、ジムは迷いなく頷いた。


「ええ。グユウ様とシリ様の会話は、だいたい“未来のワスト領”についてですね」


「・・・変わっている」

オーエンは低くつぶやいた。


「ええ。でも、とても優秀ですよ。

ゼンシ様が二十歳まで嫁がせなかった理由も・・・理解できますね」


ジムの声は淡々としていたが、そこには確かな敬意があった。


オーエンはゆっくりと顔を伏せる。


胸の奥にあるざわつきは、会議の最中よりも強くなっている。


――離婚協議まで、あと六日。


嵐の前の、最後の平穏が静かに過ぎてゆく。



離婚協議は、ついに明日に迫っていた。


「・・・こんな緊張する任務は初めてだ」

オーエンが深くため息をつく。


ジム、ジェームズ、そしてオーエンの三人は、

城の中庭の片隅で肩を寄せ合うように立ち話をしていた。


明日はシリに付き添ってミンスタ家臣団と対面する日だ。


「ジム、本来の離婚協議の流れを教えてくれ」

ジェームズが問いかける。


ジムは少し考え、淡々と口を開いた。


「通常であれば、妻本人は出席しません。

双方の家臣が条件を詰め、そのまま妻と子は生家――つまり実家に戻されます」


それが、この世界での“当たり前”。


だが。


「ところが、あの妃は生家に帰らない」

オーエンは、呆れとも諦めともつかない声で言った。


「それどころか、妃自らがミンスタ領の家臣と交渉するつもりらしい」

ジェームズが半ば楽しそうに言う。


「離婚を拒否する・・・なんて聞いたことがない。

 俺はあんな気の強い女――いや、妃は見たことがない」

オーエンは、シリの鋭い眼差しを思い出し、思わず顔をしかめた。


あの青い瞳は、どうにも落ち着かない。


「シリ様の采配を信じるしかありません」

ジムは静かに言った。


シリは、離婚しないと決めた。


この時代、女性が自分の意思で結婚・離婚を選ぶことなど皆無だった。


まして嫁ぎ先に居残るなど前代未聞で、揉め事になるのは避けられない。


それでも――シリは、その道を選んだ。


オーエンは胸の奥がざわつくのを感じた。


理由はわからない。


ただ、彼女の決断の重さだけが、妙に胸に引っかかった。


離婚協議は明日。


嵐のような一日が、近づいていた。




離婚協議の当日、朝。


薄曇りの空の下、城の馬場には緊張が漂っていた。


ジムとジェームズは馬車の前で最終確認をしている。


オーエンも合流したが、胸の奥のざわつきは消えない。


ーー今日、あの妃はミンスタ領に踏み込む。


考えるだけで、胃のあたりが重くなる。


「オーエン。大丈夫か?」

ジェームズが声をかけてきた。


「問題ない」

と答えたが、声は少し硬かった。


城門の周辺には、すでに多くの者たちが集まっていた。


離婚協議に向かうのは――

シリ、ジム、ジェームズ、オーエン、そして馭者二名。


馭者を二名にしたのはシリの指示だった。


どちらか一人が不慮の事故に遭っても、必ず帰れるようにするためだ。


人間より馬の数のほうが多い。

計画は前例がない。

だからこそ、多少の無茶でもやるしかなかった。


「無茶苦茶だ・・・」


オーエンが呟いた言葉は、誰の心にも同じように響いていた。

だが誰一人、反論しなかった。


ジム、ジェームズ、オーエンの三人は緊張で顔が強張っている。


やがて、城からシリが姿を現した。


青のドレスの胸元から首筋へかけて、陶器のように滑らかな肌がのぞき、

金糸のような髪が朝の光を受けてきらめく。


その瞬間、城の者たちは息を呑んだ。


見慣れているはずの妃。


けれど今日のシリには――強さと、美しさと、そして覚悟。


いつもとは違う、研ぎ澄まされた光が宿っていた。


オーエンは、その姿を見た瞬間、わずかに呼吸を忘れた。


シリは同行する三人に目を向け、

緊張を解くように、いたずらっぽく微笑む。


「行きましょうか」


まるでピクニックに出かけるかのような、軽やかな声だった。


「はい」

ジムが穏やかに答える。


「行きましょう!」

根が明るいジェームズは、まるで楽しんでいるかのようだった。


――妙だな。


オーエンは周囲をぐるりと見渡した。


城の者たちの目は、シリを一心に見つめている。


これから行うことは常識外れで、前例もなく、危険なものだ。


下手をすれば――もう、シリは戻らないかもしれない。


それなのに。


彼らの瞳には恐怖ではなく、

“シリなら必ずやり遂げる”という信頼と期待が満ちていた。


ーー城の者たちの心を掴んでいる。


その事実が、なぜか胸の奥をざらりと揺らした。


オーエンは悔しそうに、小さくため息をついた。


シリは人々の視線を受けながら、まっすぐグユウのもとへ歩み寄った。


城門脇に立つ領主の前で、立ち止まる。


「行ってきます」


深く頭を下げるでもなく、かといって寂しさを見せるでもない。


ただ、凛とした声だった。


グユウは静かに頷いた。


「行ってこい」


わずかに震えるその声を、

重臣たちは誰ひとり口に出さなかった。


シリはかすかに微笑む。


「はい」


その一言に、覚悟と信頼と別れのすべてが込められていた。


そしてシリは馬車の扉を開け、乗り込んだ。


城門に、冷たい朝の風が吹き抜けた。


オーエンは馬上で、その一連のやり取りを見ていた。


シリの背がゆっくり馬車の中へ消えていく。


その瞬間――胸の奥がひどくざわついた。


ーーグユウ様があんな声を出すのか。


自分でも理由のわからないざわつきが、喉の奥に小さな痛みとなって残った。


「出発します!」

馭者の声が響く。


馬車がゆっくり動き始める。


オーエンは馬の腹を軽く蹴った。


馬が前に進み、馬車の後ろにつく。


朝の光を受ける金の髪――馬車の小窓からわずかに揺れて見えた。


思わず、目で追ってしまう。


すぐに視線をそらす。


前を向き、手綱を握り直した。


馬車は城門を抜け、シリはゆっくりとワスト領を後にした。


その背を馬で追いかけながら、

オーエンは胸のざわつきを振り払おうとする。


だが風が吹くたび、

そのざわつきはかえって強くなるばかりだった。




四時間ほどかけて、馬車は領境の宿へと到着した。


「・・・すごい数の兵士だ」

オーエンが思わず声を漏らす。


宿の周辺には、ミンスタ領の旗印を掲げた豪奢な馬車が二台。


そしてその周囲に、およそ八十名の兵士が待機していた。


対するワスト領は――

馬車一台。

馭者を含めて、わずか五名。


あまりにも対照的な姿に、ジェームズでさえ不安げに眉をひそめた。


「争いの最中でも、シリ様を迎えるために兵をこれだけ出せる。

やはり力のある領です」

ジムが静かに言う。


「さて・・・どうする気だ?」

ジェームズが馬車へ視線を向ける。


声には隠しきれない緊張があった。


ワスト領の馬車が宿前に止まった瞬間、

ミンスタ兵たちは無言のまま大きな輪を作り、馬車をぐるりと囲んだ。


重い鎧の擦れる音、

鋭い視線――圧が空気を押しつぶす。


オーエンは無意識に、

腰の剣へ手を伸ばしかけていた。


ーー囲む必要があるのか?威嚇か、それとも“示威”か。


五人の心臓に、一斉に圧力がかかったようだった。



そのとき。


ミンスタ領の重臣――

ゴロクとキヨが、宿の奥から姿を見せた。


重い足取りでこちらへ歩いてくる。


ゴロクの胸には威厳があり、キヨの瞳には鋭い光が宿っている。


二人とも、

“迎えに来た”というより――“連れ戻しに来た”そのほうが近い。


オーエンは、馬車の中のシリを一瞬思い浮かべた。


ーー大丈夫なのか。


自分でも驚くほど、その胸のざわつきは大きかった。



彼らの視線の先で、馭者が馬車の扉を開いた。


青いドレスに身を包んだシリが、静かに姿を現す。


――その瞬間、場の空気が変わった。


ミンスタ領の兵士たちからも、低いざわめきが漏れる。


朝の光に照らされたシリの髪は、溶けた黄金のようにきらめき、

その青い瞳は親しげな柔らかさではなく、強く鋭い光を宿していた。


ただ立っているだけで、周囲の空気を支配するような圧がある。


シリはまっすぐにゴロクとキヨを見据えた。


その瞳に射抜かれると、ひれ伏したくなるような力すら感じられた。


「・・・シリ様! お久しゅうございます!」


ゴロクとキヨは慌てて深く頭を下げる。


「ここは冷えます。協議が終わるまで、どうか宿でお待ちくださいませ」

揉み手をしながら、キヨがへつらうように言う。


しかし、シリは一瞥しただけで静かに首を振った。


「シリ様・・・お子様方は・・・?」

ゴロクが恐る恐る問いかける。


シリは短く視線を合わせ、また首を振る。


「お荷物も・・・お持ちでないように見えますが・・・」

ゴロクの声は、徐々にしぼんでいった。


シリはきっぱりと告げる。


「宿には入りません。この場で離婚協議を行います」


「この場で?」

二人がさすがに戸惑いを見せた。


「家臣には任せません。私が行います」


あまりに当然のように言い切るシリに、ゴロクは動揺を隠せず問う。


「シ、シリ様、なぜそのような・・・」


宿に入れば、八十名の兵士に包囲され、

再びミンスタへ連れ帰られる可能性が高い。


屋外で、馬車のそばで行うほうが、


わずかでもワストへ帰還できる可能性が残る――それがシリの判断だった。


シリの背後には、ジム、ジェームズ、オーエンが控え、

いつでも剣を抜けるように身構えている。


違和感を覚えたゴロクとキヨが、数歩、シリへ近づいた。


シリはその動きを遮るように静かに言う。


「私は離婚をいたしません」


張り詰めた空気が、ピンと弦を張ったように震える。


「な、な・・・」

ゴロクとキヨの顔が引きつる。


「ミ、ミンスタ領にはお戻りにならないと?」


「戻りません」

シリの瞳は強く澄み渡っていた。


「・・・そのような話は、聞いたことがありません」

ゴロクの声がかすれる。


キヨは兵たちに軽い合図を送った。


兵たちは静かに歩を進め、三人とシリの周囲を包囲し始める。


だがシリの声は、まったく揺れなかった。


「前例がないのは承知しています。私が――そう決めたのです」


「ど、どうして?」


兵士たちの輪がじわりと狭まっていく。


青い瞳が怒りの光で燃えるように見えた。


「ミンスタ領が先に約束を破ったからです」


ゴロクとキヨは、思わず肩を縮めた。


ほんの一瞬、シリの姿がゼンシと重なって見えたのだ。


周囲の空気が凍りつく。


「ミンスタが盟約を破りながら、あたかもワストが争いを望んだかのように騒ぎ立てる。

その姿勢を――私は許しません」


怒りと冷静さが混ざり合う声だった。


シリの迫力に、ゴロクもキヨも目を泳がし、兵士たちまでが動けずにいる。


張り詰めた沈黙が続く。


そのとき――一人の兵士が、まるで引き寄せられるようにシリへ歩み寄った。


花に吸い寄せられる蝶のように、

陶然とした顔で、手を伸ばしかけた――


だが。


「触るな!」


鋭い声とともに、オーエンが即座に間に入り、剣を抜いた。


金属光が瞬き、空気が震える。


周囲の兵が一斉に剣へ手を掛けた、その瞬間――


「オーエン。剣を納めて」

シリの澄んだ声が、静かに響いた。


その澄んだ声には、不思議な強さがあった。


怒鳴ったわけでもない。


だが――誰よりもよく通る声だった。


オーエンは歯を食いしばった。


胸の奥に、燃え上がるような怒りと、言葉にできない焦燥が混ざっていた。


ーー妃様に触れようとしたんだぞ。なのに――。


オーエンは振り返った。


そこにあったのは、怖いほど美しい――氷のような青い瞳。


次の瞬間、オーエンの背筋を冷たいものが駆け抜けた。


静かに微笑む、シリのその白い手には、

細く短い――しかし確かな意思を宿す、一本のナイフ。


それは剣よりも小さい。


けれど、この場を制したのは刀剣の大きさではなく、

ただ一人、帰る場所を自ら選ぶ女の揺るがぬ覚悟だった。


オーエンは命じられるまま、震える手で剣を鞘に戻す。


背後にいたジムもジェームズも、

予想外の展開に動揺を隠しきれずシリを見つめていた。


――ナイフを出すなど、聞いていない。


その瞬間、場の空気はさらに凍りつく。


シリが静かに、自らの首筋へナイフを当て、微笑んだからだ。


細い刃は陽光を浴び、

銀の光が肌に吸い込まれるように揺らめいた。


「シリ様、それは・・・」

ゴロクが震えた声を絞り出す。


冷静を装っているが、喉の奥はわなないている。


「このナイフ、嫁入り道具に、兄上から頂いたものです」


シリは柄を持つ指先をわずかに上げて見せる。


そこには、ミンスタ家の旗印が刻まれていた。


「無理やり連れ戻すのなら、ここで、自ら命を絶ちます」


その声は驚くほど低く、落ち着いていた。


だからこそ――誰よりも重く響いた。


「やめてください! そんなことをしても、何も――!」

キヨが叫ぶが、シリは応じない。


そして、スッ――とナイフが引かれた。


細い首筋に、一筋の傷が刻まれる。


滲む赤が、青いドレスの胸もとへ静かに落ちていく。


まるで絹に咲いた赤い花のように。


その瞬間、場の誰もが息を呑み――動けなくなった。


予想外の行動に、オーエンの足も震えた。


「この顔に傷がついて困るのは、兄上でしょう」


血をつたわせながら、

シリは静かに、しかし鋭い瞳で二人を見据える。


「私が死ねば、 “ミンスタ領の家臣に脅され、命を絶った”ことになるのです」


その一言で、ゴロクもキヨも完全に動けなくなった。


「離婚しません。ミンスタ領には戻りません」


シリは二人を睨み据えたまま、ゆっくりと馬車へ後ずさる。


「必要な事は手紙に書いています。兄上に渡してください」


シリが横目でジムを見る。


ジムは懐から書状を取り出し、ゴロクへ差し出した。


オーエンは馬車の扉を開き、慎重に、その中へ身を滑り込ませる。


シリは馬車の真後ろに立ったまま言った。


「私が戻らなくても、家臣たちに怒らないように――そのことも書いてあります」


その声だけ、ほんの少し柔らかかった。


「待ってください!」

ゴロクの声が裏返る。


「シリ様、なぜですか? 我々が戦えばワスト領は・・・!」


言葉の続きは誰も言わなかった。


しかし皆が理解していた。


――ワスト領は勝てない。


圧倒的な領力差。


その現実を、シリがわからぬはずがない。


「我々は・・・あなたがいる城へ砲弾は打ち込みたくないのです!」

キヨの声は悲痛だった。


「お母上も、家臣も、侍女も・・・皆がシリ様を待っていますぞ!」

涙目になって訴えるゴロク。


その叫びに、シリの瞳がほんの一瞬だけ揺れた。


母の笑顔――

弟の笑い声――

侍女たちの優しい手――


確かに、そこは愛のある場所だった。


だが。


「ごめんなさい」

震える声で、それでもシリは言った。


「行かないでください!」

ゴロクが吠えるように叫ぶ。


シリの成長を幼い頃から見守ってきた彼にとって、

それはほとんど――父の叫びだった。


シリは、そっと首を振った。


「なぜですか!!」

ゴロクの顔は泣き出しそうに歪んでいた。


馭者の一人がオーエンの馬に乗り、ジムもジェームズも馬に飛び乗る。


シリはナイフを銀の帯へしまった。


「頭を下げて」

オーエンが低く、短く囁く。


シリはぽつりとつぶやいた。


「シュドリー城には、グユウさんがいない」


その一言に、オーエンの胸が一瞬ざわつく。


だが考えている暇はなかった。


次の瞬間、

オーエンはシリの細い腰をつかみ、ぐっと馬車へ引き込んだ。


二人はそのまま、狭い馬車の床へ倒れ込む。


「行けッッ!!」


オーエンの怒号が響いた。


馭者が鞭を振るう。


扉が開いたまま、馬車は土煙を上げて猛然と走り出した。


同時に、ジム、ジェームズ、

そして馭者のもう一人も馬を走らせ、ワスト領への道を矢のように駆け出した。




扉を開けたまま、馬車はものすごい勢いで走っていた。


オーエンは、狭い馬車の床にシリを抱いたまま倒れ込んでいる。


シリを中へ引きずり込んだとき、肩を強くぶつけたらしく、

身体を動かすたびに鋭い痛みが走った。


開いた扉から吹き込む風が、シリの青いドレスを激しく揺らす。


追っ手の姿はまだ見えない――だが、安心などできない。


けれど。


腕の中で震えているシリに気づいた瞬間、オーエンはギョッと目を見開いた。


ーー抱きしめている? 俺が?


不本意極まりないが、

シリの細い身体が、自分の胸にぴたりと収まっている。


震えている背中。

荒い呼吸。

息を吸えず、苦しそうに喘いでいる。


――気が動転している。


オーエンはすぐに察した。


抱きかかえているのは、まだ二十二歳の若い女性。


あれだけの緊迫した場に立てば、怖くて当然だ。


オーエンは震える身体をそっと抱き寄せ、耳元で囁いた。


「息を吸って、吐いて、吸って・・・」


シリの金の髪が頬にかかり、かすかに甘い香りが鼻をかすめる。


ーー柔らかい。いい匂いがする。


思考が危うい方向に傾く前に、オーエンは続けた。


「吸った息を・・・そうだ。ゆっくり、細く吐くんだ」


オーエンの指示に合わせるように、シリの震えは徐々に落ち着き、ふっと力が抜ける。


ーーもう離してもいい。


オーエンは慌てて腕を解き、四つん這いで扉へ駆け寄った。


強風にあおられる扉と格闘すること数分。


ようやく閉めることに成功する。


風の音も馬の足音も、遠くに引いていった。


――とりあえず、これで一安心だ。


とんでもない展開だったが、どうにか切り抜けた。


窓から外を見ると、ミンスタの兵は追ってきていない。


ジムもジェームズも、馭者の二人も無事。


そして目の前には、座席に顔を埋めて泣いているシリがいた。


状況が落ち着いた途端、

“苦手な女と二人きり”という事実に気づき、オーエンは妙に気まずい気分になる。


シリの傷のことを思い出した。


ーー止血をしないと。


「シリ様」


“様”をつけることに抵抗を感じる。


シリは顔を上げない。


「シリ様」


もう一度呼ぶ。


返事のないシリに、オーエンは小さくため息をついた。


「手当をします」


そう言って、無理に身体をこちらへ向けた。


涙に濡れた青い瞳があらわになる。

その美しさに、オーエンは一瞬息を呑んだ。


慌てて目をそらし、傷の確認をする。


首の傷は深くないが、

痛々しく赤い線が開き、青いドレスにも血が落ちていた。


「消毒します。顔を上げてください」


布にアルコールを浸しながら、オーエンは気づく。


――顔が近い。


どうやっても意識せずにいられない距離だった。

息が肌にかからぬよう注意しつつ、布をそっと当てる。


布が触れた瞬間、シリはキュッと身を固くした。


「無茶をした」

オーエンは思わず見つめる。


シリは涙で濡れたまま、勝気な瞳で言い返す。


「無茶なんてしていません」


その強気な言葉に、オーエンの暗灰色の瞳に何かが灯った。


「泣くほど辛いなら、ミンスタ領に戻ればいいのに」

思ったままを、つい口にしてしまった。


「泣いてません」


泣きながら言うシリに、

オーエンは深いため息をついた。


「止血します。顔を少し上げて」


白い喉が震えているせいか、

ネッカチーフを巻くのに、思いのほか時間がかかった。


間近に揺れる青い瞳と、薔薇のような淡い唇が、どうにも気に障る。


泣き止まないシリを座席へそっと座らせる。


「無鉄砲ですが・・・見直しました」


悔しそうに、しかし正直に言った。


自分には到底できない芸当だった。


純粋に――すごいと思ったのだ。


泣き腫らした目で、それでも笑ってみせるシリ。


その瞬間、オーエンは気づいてしまった。


ーー目が離せない。


次に何をするのか。


何を言い出すのか。


怖いのに、気になってしまう。


自分で自分が理解できないほど――心のどこかが、ざわつき始めていた。



馬車が止まった。


すぐに扉をノックする音がして、ジムが顔をのぞかせた。


「休憩をしましょう」


シリと二人きりの空間からやっと解放される――

オーエンは、その事実に心底ホッとした。


馬車を降りて、ようやく安定した地面に足をつけた瞬間、

そのまま座り込んでしまった。


――疲れた。


それはオーエンだけではなかった。


ジムもジェームズも、同じように草の上へ腰を下ろしていた。


緑の草葉に座り、きらめく湖面が揺れるのをぼんやり見つめる。


鳥の囀り。


春の風が頬を撫でる。


今まで気づく余裕すらなかった穏やかな景色が、

ようやく目に入ってくる。


ーー平和だ。


敷物の上に座ったシリが、突然ヒステリックに笑いだした。


「すごいことをしたわね、私たち」


首には白い布がしっかり巻かれ、出血は止まっていた。

傷は浅くとも、あの緊張と興奮では身体が消耗しているはずだ。


「はい。なかなか経験できるものではありません」

ジムが穏やかに笑う。


「戦より疲れた」

オーエンは力なく答える。


「我々はあの大軍から逃れたんですよ!」

ジェームズが楽しげに膝を叩いた。


「シリ様、実に見事な采配でした」

「あんなに馬に鞭を打ったのは初めてです!」

馭者たちまで興奮した声で言う。


一同は思わず大きく笑った。

笑い声は、春の空へ軽やかに溶けていった。


 

昼食にはサンドイッチと――アップルパイが並んでいた。


「アップルパイ!」

シリが目を輝かせて微笑む。


厨房の者たちが、シリの無事を願って作ってくれたのだろう。


シリ以外の面々は、見たことのない食べ物に眉をひそめている。


「美味しいんですよ。食べてみて」

シリが勧める。


半信半疑で一口かじったオーエンは、その甘さに声を失った。


「・・・うまい」


思わずこぼれた声に、シリが嬉しそうに笑う。


包帯の上から首元を押さえつつ、

幸せそうにアップルパイを頬張るシリ。


――さっきまで泣いていたのに。


ころころ変わる表情が目を引き、

つい目で追ってしまう自分にオーエンはハッとした。


ーー惑わされるな。


自分に言い聞かせるように、深く息をつくのだった。



遠くから馬車が走ってくるのに気づいた城内の人々は、

我先にと城門前へ駆け寄った。


グユウもそこに立っていた。


顔は固く、指先までも緊張の色を帯びている。


見えるのはジム、ジェームズ、オーエン、そして馭者二人。


――シリは。


馬車が止まった瞬間、

馭者が扉に手を伸ばすより早く、シリ自身が勢いよく扉を開けた。


「ただいま帰りました」


その一言で、周囲の空気が震えた。


エマは驚きのあまり、喉の奥がヒュッと鳴った。


ドレスの胸元は血で染まり、首には白い布が巻かれている。


それでも、城内の者たちは一斉に歓声を上げた。


泣き出す者もいた。


その瞬間、グユウが動いた。


一歩、二歩――

やがて駆けるようにシリへと近づき、彼女を力強く抱きしめた。


抑えていた感情が堰を切ったように溢れ出し――


次の瞬間、唇が重なった。


城門前、全員が見守る中での、唐突で、熱く、切実な口づけだった。


侍女たちが黄色い悲鳴を上げ、エマは目を剥いた。


その様子を、オーエンは少し離れた場所から見ていた。


――見たくないと思った。


胸の奥で、何かがギュッと絞られたように痛む。


論理では説明できない痛み。

傷でも衝撃でもない、もっと奇妙で、苦い感覚。


ーーなんだ、この感じは。


シリが生きて帰ったのだから、領主が抱きしめ、口づけるのは当然だ。


それが政治でもあり、夫婦でもある。


理解はしている。

頭では、すべて納得している。


なのに、その光景が胸のどこかを刺した。


痛い。

悔しい。

だが理由がわからない。


ーー馬鹿みたいだ。何を気にしている。


必死に自分を叱りつけても、

胸の痛みだけは消えてくれなかった。


 

長い一瞬が過ぎると、

グユウは急に我に返ったようにシリから離れ、そそくさと城へ向かう。


「あ、グユウさん! 待って!!」

シリが頬を赤らめ、裾を持って駆け出す。


白いふくらはぎがちらりと見えたその瞬間、オーエンはまた胸を抉られるような気がした。


理由は、まだわからない。


だが――確かに痛かった。


佇むオーエンの隣にジムが、そっと近づく。


「“嫌い”という感情は、意識しなければ持てないものです」

ポツリと呟く。


オーエンがポカンとした顔で振り返ると、ジムは意味ありげに微笑む。


「つまり、それは――」


一拍おいて、やわらかな声で続けた。


「恋の入口、かもしれませんね」


オーエンは殴られたような顔になった。


反論を口にする前に、ジムはすでにその場を離れていく。


「そんな訳ない」


苦々しく吐き捨てる。


城門前の歓声は続いているのに、

オーエンの周りだけ、妙に静かだった。


――嫌いが、恋の入口?


馬鹿げている。


だが。


青いドレスの背を追いかけたときの焦燥。

手当をしたとき、ふと感じた熱。

そして今、目の前で男に抱きしめられたときの、

胸の奥に走った“あの痛み”。


ーー恋愛なんてまさか。


そう否定するほど、自分は冷静でもなかった。


そんな厄介で恐ろしくて、

目をそらしたくなるような感情が、胸の底で静かに蠢いている。


オーエンは深く息を吐き、気づけば、視線が追っていた。


グユウの背を追って、

ふくらはぎをさらしながら城へ駆けていく妃。


ーーなんという女だ。


胸の奥に残る熱を抑え込むように、オーエンは小さく呟いた。


「・・・すごい妃だ」


最後まで読んで頂きありがとうございました。


オーエンはただ、背中を見つめるしかなかった。

グユウはただ、帰りを祈るしかなかった。

同じ一日を違う場所で生きた二人の視点を、続けて読んでいただけたら嬉しいです。


先ほど投稿しました。

『離婚命令と、オレの妃 ─離縁を命じられた日、妻は戦いに向かった─』

https://book1.adouzi.eu.org/N8658LJ/


よろしければ、こちらもお読みください。


そして、物語の原点はこちら。

シリの視点で描いた本編連載(完結済)です。


『秘密を抱えた政略結婚 〜兄に逆らえず嫁いだ私と、無愛想な夫の城で始まる物語〜』

https://book1.adouzi.eu.org/n2799jo/


評価とブックマークありがとうございます。

励みになります。


改めて、読んでくださりありがとうございます。


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