彼女の全てを受け入れた日
オレは気づいていた。
義理の兄が来訪すると知り、妻が怯えたことを。
だが、なぜ彼女がそこまで震えているのか――この時のオレには、まだ分からなかった。
冷たい朝の光が、木の廊下を照らしていた。
髪に触れる妻の手がわずかに震えていたが、
オレはそれを「体調が優れないのだろう」としか思わなかった。
無理をしてでも、笑おうとしていた。
その笑顔の意味を、オレはまだ知らなかった。
◇
朝の食堂には、柔らかな光が差し込んでいた。
香り高い茶が湯気を立て、銀の器にはりんごの砂糖漬けが並ぶ。
普段と何も変わらぬ朝――のはずだった。
「遅くなりました」
静かな声が扉の向こうから響く。
振り向いたオレは、息を呑んだ。
目の前に現れたのは、2ヶ月前に政略で結ばれた妻。
白いドレスに、淡い紫の刺繍。
高く結い上げた金の髪に、ピンクの飾り櫛が光っていた。
それは、オレが贈ったものだった。
ーーピンク色も似合う。
まるで、最初の夜のように美しかった。
・・・いや、あの時よりもずっと美しく見えた。
もっと、彼女を褒めてあげたい。
けれど、上手に言えない。
「身体は大丈夫か」
ようやくそれだけ言葉にした。
「大丈夫です。ご心配をおかけしました」
微笑んだ唇が、少しだけ震えていた。
何かを隠している――そう思った。
しかし、その時、家臣が駆け込んできた。
「ゼンシ様、到着されました!」
オレは小さく息を吐く。
今日は、妻シリの実の兄――ミンスタ領の領主ゼンシがこの小さなレーク城に来訪する日だった。
あの強大な領の長が、わざわざこの貧しい辺境まで足を運ぶ。
城中の者たちは朝から慌ただしく、食堂も玄関も緊張の空気に包まれていた。
シリの体調は気がかりだった。
だが、今はそればかりを案じている余裕はない。
領主として、夫として、まずはこの訪問を乗り切らねばならなかった。
◇
扉が開き、重い足音が響いた。
黄金色の髪、鋭い青の瞳。
ーーさすが、シリの兄上だ。
似ている。
容姿だけではなく、雰囲気も。
堂々たるその姿に、周囲の空気が張り詰める。
「義兄上、お待ちしておりました」
オレは深く頭を下げた。
その背後で、衣擦れの音がする。
視線を向けると、シリが一歩前に出ていた。
どこか怯えを押し隠すように、微笑んでいた。
「兄上・・・お久しゅうございます」
かすかに震える声。
その声を聞いた瞬間、胸の奥で何かが引っかかった。
だが、それが何なのか、まだ分からない。
ゼンシ様は静かに歩み寄り、シリの前で足を止めた。
じっと、シリを見つめ、長い沈黙。
「・・・髪は、下ろした方が似合う」
そう囁いた彼の声が、異様に低く響いた。
その瞬間、シリの肩がわずかに震えた。
オレはただ見つめることしかできなかった。
目の前で交わされる兄妹の距離が、なぜか不自然に近く感じた。
「青色が似合う」
ゼンシ様は、シリの飾り櫛に一瞥をくれた。
その指先が、まるで頬に触れるかのように動く。
不快なざらつきが胸に広がる。
だが、立場上、口を挟むわけにもいかない。
「・・・後で話そう」
ゼンシ様はそれだけ言い残し、視線をオレに戻した。
「グユウ、元気にしていたか?」
オレは頷いた。
彼の眼差しには、何かを計算しているような冷ややかさが宿っていた。
その時、ふと気づく。
シリの瞳が、わずかに潤んでいることに。
けれど、それが恐怖なのか、悲しみなのか、愛情なのか――オレには、まだ分からなかった。
◇
ゼンシ様が到着してから、重臣たちを集めて会議が開かれた。
会議と言っても、実質はゼンシ様が一方的に予定を伝えるだけだ。
「これから国王陛下に挨拶へ向かう。そのために街道を開放してほしい。
それと、道中の宿の手配を頼む。さらに、物資の一部をミンスタ領に預けてほしい」
その声には、命令とも取れる威圧があった。
ーー誰も逆らえない。
シリが嫁いだことで名目上は“同盟”になっている。
だが実際は“臣下”に近い形だった。
夕食のあと、ゼンシ様がふいに言った。
「明日の朝、シリと二人きりで積もる話をしたい」
まるで、シリが自分の戦利品であるかのような言い方だった。
その言葉に、胸の奥がざらつく。
だが、それを顔に出すわけにはいかない。
「二人でゆっくり話せる部屋の提供を頼む」
そう告げるときの顔つきも、命令を下すようなものだった。
ーー逆らうことなどできない。
オレは黙って頷き、重臣のジムを呼び寄せる。
「シリに伝えてきてくれ」
ジムが去ったあとも、しばらく席を立てなかった。
手の中のカップの中身――リンゴジュースは、すっかりぬるくなっていた。
それでも、口をつける気にはなれなかった。
甘い香りが、やけに胸に重かった。
◇
その夜は、ゼンシ様のもてなしに追われ、シリの顔を見ることができなかった。
ーー普段なら、シリの顔を見つめ、艶やかな髪を撫で、その身体を寄せることができるのに。
ゼンシ様の準備に追われ、もう三日もシリと夜を過ごしていない。
翌朝、鍛錬場へ向かう途中、ふと視線の先にシリの姿を見かけた。
長い金色の髪を風になびかせ、青のドレスに身を包んでいる。
背筋を伸ばしたその姿は、まるで戦へ向かう戦士のようだった。
その時、オレは初めて思った。
――シリは、何かを隠している。
だが、それが何なのかに気づくのは、ほんの数刻後のことだった。
◇
レーク城のホールには、朝だというのに人が慌ただしく行き交っていた。
ゼンシ様が突然、「今すぐ帰る」と言い出したのだ。
昨夜、遅くまで宴を開いていたミンスタの家臣たちは、まだ寝ぼけ眼で騒ぎの理由を掴めずにいる。
誰かが小声でつぶやいた。
「なんで、こんなに早く・・・?」
オレも同じ疑問を抱いていた。
ーーなぜ、ゼンシ様はこんなにも落ち着かない様子で帰ろうとしているのか。
「義兄上、もうお帰りですか?」
戸惑いを隠しきれずに声をかける。
ゼンシ様は一瞬だけオレの目を見た。
その視線には、かすかな焦りが宿っていたが――次の瞬間には、いつもの威圧的な笑みを浮かべていた。
「急用ができてな。早々に戻ることにした」
「せめて朝食だけでも・・・」
言いかけたが、その横に、青いドレスのシリが静かに入ってきた。
髪を下ろし、どこか張りつめた笑顔を浮かべている。
「兄上・・・お気をつけてお帰りください」
まるで、舞台の上で台詞を読み上げるかのような声だった。
オレはその笑顔に違和感を覚えた。
けれど、人前で口を挟むわけにはいかない。
ゼンシ様は軽く手を上げただけで、
「世話になった。――また逢おう」
それだけを言い残し、早足でホールを出て行った。
まるで、何かから逃げるように。
しばらく誰も言葉を発せず、
宴の後のような、重たい空気だけが城内を満たした。
オレは城で働く者たちに感謝の言葉をかけ、準備に奔走してくれたことを労った。
その姿を、少し離れた場所からシリが見つめていたのを、オレは気づかなかった。
ほんの三十分前まで、何が起きていたのか。
オレはまだ、何も知らなかった。
◇
家臣たちは安堵の息をつき、侍女たちはようやく緊張から解き放たれたような顔をしている。
だが、オレの胸には重いものが残っていた。
――なぜ、義兄上はあんなにも急いで帰ったのか。
なぜ、シリはあの笑顔を浮かべていたのか。
考えても答えは出ない。
胸の奥がざわつくのを感じていた。
そこへ、重臣ジムが駆け込んできた。
息を切らし、顔は血の気を失っている。
「・・・グユウ様」
低い声で呼ばれた瞬間、胸騒ぎが走った。
「何かあったのか」
「・・・シリ様が、東側の部屋で・・・」
ジムは一瞬、言葉を飲み込み、震える指で一枚の羊皮紙を差し出した。
手に取ると、そこには短い文が並んでいた。
粗い筆致で、ところどころににじんだインク。
読み進めるうち、呼吸が浅くなっていく。
――ゼンシ様、シリ様に接近し、口づけを試みる。
――シリ様、ナイフを手に取り、自らの首に当てる。
――両者、言葉を交わし、最後は和解に至る。
たった三行。
けれど、その背後にどれほどの恐怖と絶望があったのか、想像するだけで胸が焼けた。
「・・・これは」
声にならなかった。
ジムの顔が歪む。
「シリ様のご指示で、記録を残しました。・・・隠し部屋から、すべて見届けました」
その言葉に、手が震えた。
「・・・これが、すべてか」
オレの声がかすれる。
ジムは逡巡ののち、もう一通を取り出した。
「・・・下書きがございます。そこに詳しく・・・書いております」
オレは受け取った下書きを震える手で開く。
そのすべてが、あの場にあった真実を物語っていた。
報告書を丁寧に畳み、胸の内ポケットにしまう。
そして、最初の一枚を握りしめ、くしゃりと丸めた。
「・・・誰にも言うな」
短くそう告げると、ジムは深く頭を下げた。
手の中の紙は、汗でしっとりと湿っていた。
その重みは――シリが抱えた秘密の重さそのものだった。
「シリ様は・・・死ぬ覚悟があったと思います」
ジムの声が遠くに聞こえた。
「シリはどこだ」
立ち上がった瞬間、椅子が倒れる音がした。
「外へ出かけたのをお見かけしました」
その言葉を聞いた瞬間、オレの身体は勝手に動いていた。
廊下を駆け抜け、階段を降り、玄関を飛び出した。
ただ、シリの元へ。
◇
息を切らせ馬場に着いた時、風が静まり、空気が澄んでいた。
陽光に包まれて、シリが立っていた。
青いドレスの裾が風に揺れ、金色の髪が朝の光に溶けていく。
その姿は――戦場に立つ兵のようだった。
「シリ」
声をかけると、彼女がゆっくりと振り向いた。
「・・・グユウさん」
その声が震えていた。
「オレに話したいことはないか」
息を整えながら、静かに問いかけた。
長い沈黙。
「シリ・・・その・・・ゼンシ様とは・・・」
その先の質問を、オレはできなかった。
うつむいたままの彼女に伝えた。
「シリ、隠すな。オレに甘えてくれ。それが何より嬉しい」
彼女は目を閉じ、わずかに頷いた。
「嫁ぐ二日前、兄に・・・」
その先の言葉は、風にかき消された。
オレは何も言わなかった。
ただ、彼女の顔を見ていた。
泣きそうな瞳。
けれど、必死に立ち続ける強さ。
「シリ、死ぬつもりだったのか」
「はい」
「なぜ」
「兄上にまた奪われるくらいなら、死んだ方がましです」
その答えに、胸が締めつけられた。
沈黙の中で、風が二人の間を通り抜けていく。
「シリ・・・」
オレはゆっくりと彼女に近づいた。
「もういい。隠さなくていい」
オレはシリの肩に触れようとした。
「優しくしないでください」
シリはオレの手を払いのけた。
シリはオレ瞳を真っ直ぐに見つめる。
ーーなぜ?
どうして?
疑問が胸につく。
「優しくしないでください」
震える声でシリは、もう一度伝えた。
その瞳は、傷つき、震えている。
拒絶するような仕草に胸が痛む。
「妊娠しています」
シリが震える声で告げた。
「2月には子が生まれます」
声が掠れている。
オレは言葉を失い、ただその瞳を見つめた。
ーー子供?
シリに子が宿ったのか?
次の瞬間、彼女の声が馬場の空気を引き裂いた。
「あなたの子かもしれません。・・・兄の子かもしれません」
膝をつき、地面に手をついたシリは嗚咽を漏らした。
その彼女を、オレは抱きとめ、手を握る。
「シリ、オレは、嬉しい」
「・・・どうして? 父親はわからないのに」
涙に濡れて俯く彼女に、オレは少し笑って答えた。
「オレの子かもしれない」
「でも・・・!」
「回数なら、オレの方が多い」
シリは呆れたように目を瞬かせた。
「シリが産めば、それでいい。どんな子でも、オレの子だ」
その時、初めて彼女が顔を上げた。
「子供はシリに似てほしい」
オレはシリの顔を見て伝える。
「きっと可愛いはずだ」
ーーシリのお腹に子がいる。
その事実は、喜びをオレに与えてくれた。
普段、錆びついて動かない顔が、喜びで崩れた。
オレの顔を見て、シリは小さくつぶやいた。
「・・・そんなふうに、笑うんですね」
ーー笑った顔を誰かに見せるのは初めてだ。
オレを変えてくれた人が目の前にいる。
その彼女の頬に触れた。
涙が、指の上に落ちる。
「口づけしたい。いいか」
「・・・どうして聞くの」
「お腹の子に・・・悪いかと思って」
その言葉に、彼女は笑った。
「大丈夫ですよ。私は一週間前まで馬に乗っていました」
唇を寄せる。
触れた瞬間、世界が溶けていった。
長い口づけのあと、オレは彼女を抱きしめた。
「生きていていれば、それでいい」
「・・・はい」
◇
「城に戻ろう」
「お腹、空きました?」
「あぁ」
自然に、彼女の手を取った。
「大丈夫です、一人で歩けます」
「・・・危ないだろう」
シリは小さく笑い、オレの手を握り返した。
城へ戻る道、陽が高く昇っていく。
シリの言葉を聞きながら、胸の奥で何かが静かに崩れ落ちていった。
シリを傷つけたゼンシ様への怒りは確かにある。
だが、それ以上に――シリが生きていることが、何よりの救いだった。
この世で、こんなふうに想えた女は他にいない。
過去に何があってもいい。
子の父がオレでなくてもいい。
それでも、この人を守りたいと思った。
シリを包むその光の中で、オレは心の底から思った。
――この手を、もう離さない。
◇
城の玄関前で立ち尽くしていたジムは、オレたちの姿を見て安堵の表情を浮かべ、迎えに出た。
「昼食の用意ができています」
昼食はゼンシ訪問のために頑張ってくれた家臣達、侍女、女中、馬丁、城中の者を集めて労を労った。
気さくな雰囲気の中、皆が笑い、食べ、飲み、語った。
ふと、静寂が訪れる。
自分が立ち上がったからだ。
「皆に知らせたいことがある」
数十の視線が一斉にこちらを向いた。
喉が少し乾いた。
だが、伝えるべきことは一つだけ。
「シリに子ができた。来年の二月に産まれる」
一瞬、場が凍りつく。
次の瞬間、歓声が湧き上がった。
ジムは一瞬にして若返ったようだった。
「グユウ様、本当ですか」
「あぁ、本当だ。医者に診てもらった」
オレはシリを横目で見る。
シリが照れたように顔を伏せ、こほんと咳をした。
「・・・そうです」
それだけ言って、小さくうなずいた。
オレはその姿を見つめながら、静かに息を吐いた。
シリが、少し顔を上げてこちらを見た。
頬が赤く、目の縁が濡れている。
その愛おしい顔を見ると、微笑みが自然にこぼれた。
錆びついた心が、ようやく動いたような気がした。
「どうして、こんなに早く発表したのですか」
シリは思わず唇を尖らす。
シリの可愛い文句に、オレは目を細めて告げた。
「喜ばしい事は皆に早めに伝えるべきだ」
その瞬間、シリの顔は嬉しさでほころんだ。
「シリ、二月が楽しみだ」
オレの声は弾んでいた。
――彼女が生きていてくれる。
それだけでいい。
この命を賭けても、オレはこの笑顔を守る。
◇
宴が終わり、開け放たれた寝室の窓から、夏の夜のさざめきが静かに流れ込んでいた。
遠くでは宴の余韻が残り、時折、笑い声や話し声が風に乗って届く。
窓辺に立つシリの背に、オレは、ためらいながら声をかけた。
「シリ・・」
振り返った横顔は、どこか遠くを見ているようで、胸が締めつけられる。
「いろいろあると思うが、ワスト領はゼンシ様に協力する」
「ありがとうございます」
シリは力強く頷いた。
「ミンスタ領とワスト領の架け橋になる。それが、私の役目です」
その言葉を聞きながら、オレは静かに言葉を重ねた。
「ゼンシ様は、素晴らしい領主だ」
その瞬間、シリの表情が歪む。
「領主としては、素晴らしい人です」
その声には硬さがあり、凍るような痛みがにじんでいた。
オレはそっと背後から彼女を抱き寄せた。
「シリが・・・あのまま命を絶っていたらと思うと、怖かった」
喉が熱くなり、言葉が掠れた。
「オレは、シリが生きていてくれるだけでいい。何もいらない」
シリがゆっくりと振り向く。
その瞳には、憤りと悲しみが交錯していた。
「・・・私は、気にします」
「兄は衝動的に私に手を出しただけです。
家臣の妹や乳母にも・・・私も同じように見られていたんでしょう」
「それはない」
オレはかぶりを振った。
「結婚の話を聞いた時から、ゼンシ様はシリを大切にしていると感じていた」
シリはその言葉に、思わずオレの腕を振り払った。
「どうしてそんなに落ち着いていられるのですか?
私のことが好きなら・・・兄上のこと、憎くないのですか?」
胸が痛む。
それでも、落ち着いて答える。
「もちろん、面白くはない」
「嫁入り前にゼンシ様が行なったことには、憤りを感じている」
「だったら・・・なぜ?」
シリの声音は激しく鋭かった。
オレは、ズボンのポケットから羊皮紙を取り出した。
「ジムの記録だ」
シリの表情が固まる。
「この記録を読んで、オレは気づいたんだ」
シリが不思議そうな顔で、オレを見つめる。
「これは・・・シリからの恋文のように感じた」
「えっ・・・」
シリが驚いた表情をした。
「この中でシリは、オレのことを何度も語っている。
『結婚できて幸せ』『あの人のような方は他にいない』・・・そう書かれていた」
彼女は顔を伏せ、小さく肩を震わせた。
その姿に、たまらない愛しさが込み上げた。
「シリが今、オレを好いているのなら、何も問題はない」
オレは静かに言った。
「シリ」
名を呼ぶと、彼女がゆっくり顔を上げた。
外では風が湖面を渡り、カーテンの裾を揺らした。
その音が、二人の間の沈黙を優しく埋めていく
彼女の瞳は濡れて、月の光を宿していた。
「・・・私は、あなたを・・・好いています」
震える声で、シリは告げた。
「オレも、だ」
その瞬間、夜がほどけるように静まり返った。
重なり合った手が、互いの鼓動を確かめる。
月明かりの中で、二人の唇は静かに重なった。
――政略で結ばれた夫婦は、もはや政略ではない。
秘密も過去も、すべてを受け入れて、ただ「今」を生きる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この短編は『秘密を抱えた政略結婚』本編のスピンオフで、
グユウ視点によるエピソード(第12作目)です。
短編だけでもお楽しみいただけますが、
本編を読むと二人のすれ違いや政略の背景がより深く伝わります。
▼シリーズ本編
**『秘密を抱えた政略結婚 〜兄に逆らえず嫁いだ私と、無愛想な夫の城で始まる物語〜』**
https://book1.adouzi.eu.org/n2799jo/
<完結>
**『秘密を抱えた政略結婚2 〜娘を守るために、仕方なく妾持ちの領主に嫁ぎました〜』**
https://book1.adouzi.eu.org/n0514kj/
<完結>
そして現在、
その娘・ユウを主人公とした第3部を連載中です。
**『秘密を抱えた政略結婚 ―血に刻まれた静かな復讐 禁断の恋が運命を変える―』**
https://book1.adouzi.eu.org/n9067la/
<連載中>
血に抗い、恋に揺れながら――
彼女たちはそれぞれの愛を選んでいきます。




