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魔将軍と襲撃1

レイゾウハコをカポンと開けて中を確認します。どれどれ…あっ返ってきていますね!


サンドウィッチの入っていた藤籠をレイゾウハコから取り出しました。中を開けると紙が一枚入ってます。ヴェル君のお返事のようですね。ガサガサ…


『カデちゃんへ

サンドウィッチありがとう。

皆で美味しく頂きました。

幻視の術は上手く行きました。

すごい迫力で皆驚いていました。

そして

先生も戦地に来ていました。

詳しくは家に帰ってからで。


カデちゃんの心配してくれた通り

食べ損ねたのでハンバーガー

有難かったです。美味しかったです。


バナナタルトも楽しみです。

       ヴェルヘイム』


なになになに~~もうぅぅぅぅっ!!思わずにやついてしまいます。


さっきは何を馬鹿なっ魔術でレイゾウハコに繋いでるのだと怒りましたが……これはっ新たな発見です。


リアルで恋人や新婚さんはお弁当を差し入れたり手紙をやり取りしたり…媒体がレイゾウハコってのがお洒落ポイントが下がりますが、コレ…いけるんじゃない!?新しい商品化のヒントを感じますよ!


私はヴェル君のお手紙をソッと見つめました。綺麗な癖のない文字。思わず抱きしめます。


何でしょうこれ…ものすごく心臓がドキドキしています。


「カデリーナ姫様?」


「ぎゃあ!」


びっくりしました。シエラですか…シエラはお茶のおかわりの補充に来たようです。


そう今、我が家にはルヴィオリーナお姉様とリヴァイス殿下とポカリ様の従者のフェルトさん。そしてシエラとお姉様達の護衛のサバテューニ様(女性みたいに美しい騎士様なの)とラヴァエンチェラ様(長いのでラヴァ様)がいらしています。


そして私はヴェル君に差し入れるバナナタルトと並行してイチゴによく似たプチュラという実のプチュラタルトも作っております。ふぅ…忙しい。


「あ、ルラッテさん」


ちょうどルラッテさんも洗濯物を取り入れて戻っていらっしゃいました。シエラがルラッテさんに声かけました。


「今日はお天気がよう御座いましたから、お洗濯ものも早く乾きますね~」


「シエラさんお疲れ様です。私が給仕に入りますから少しお休み下さいませ」


ルラッテさんはそう言って、お茶のポットと今作り終わった木の実のプチケーキを笑顔でお盆に乗せるとキッチンを後にされました。シエラも笑顔でお礼を返しております。


「あのヴェルヘイム様の母上様、お綺麗な方ですね~流石あの美形をお生みになられただけありますね」


「ね~。で、どう?お姉様と会話はずんでいる?」


「それがすごく気が合われたみたいで楽しそうですよ~」


それ分かる。オリアナ様あんな見た目の割によく喋られるし明るいし、物事もはっきり判断出来るお方だもの。


「カデリーナ!」


キッチンの戸口で元気な声が聞こえました。振り返るとリヴァイス殿下が立っておられました。後ろにフェルトさんの黒くて可愛いお姿も見えます。モフモフ…


リヴァイス殿下はトトトッと中入って来ると


「シエラ、カデリーナ、庭に出てもよいか?」


と聞かれました。子供は退屈ですよね~


「え?お一人でですか?ちょっとお待ちくださいませ」


シエラは居間のほうへ小走りで駈けて行きました。お姉様に聞きに行かれたのでしょう。


フト見るとフェルトさんが私の足元へ来られていました。ドキドキ…モフモフ…


「触ってもよろしいでしょうか?」


「構わん」


あれ?


「どうした?構わんと言っておる」


「喋ったぁ!?」


フェルト様が低音の良いお声の人語を話されています。


「フェルトさん…」


「なんだ?」


「え~と狼なのでしょうか?」


フェルトさんは少し頭を捻りました。可愛い…


「この世界にはオオカミという生き物はおらんな」


「そうでございますか…」


「私はアポカリウスの従者ではあるが、元々魔よりは神に近い眷属だ。よってカデリーナやリヴァイスの近くにおると非常に心地よい」


「それは、私達シュテイントハラルの血筋によるものでしょうか?」


「そうだな…ん?」


フェルトさんが首を上げられました。


「裏山から侵入者だ…害意がある」


フェルトさんが猛然と走り出しました。ま、待ってくださいっ!こう見えて運動神経ゼ~ロ~なんです!


やっと裏口に近づくと裏口の扉が開いてます!


「フェル…トさっ…ハァ…ゼイッ…」


扉を覗き込んで視界にリヴァイス殿下が見えました。裏山へ入ろうとしています。その殿下の前に回り込んでフェルトさんが戻るように唸って吠えています。


「で、殿下いけませんっ…!」


疲れて声があまりでません。その時、殿下の前に男が現れました。目が血走っています。栗色の髪の細身でボロボロのローブを羽織っています。その男が殿下に手を伸ばしました。


「ダメッ!」


私は咄嗟に殿下の周りに5重の魔術障壁を張りました。男が弾き飛ばされます。そしてな、なんとフェルトさんがヌオッと5倍くらい大きくなってその男の腹に食らいつきました。


「ぎゃああああ!」


男の絶叫で室内から走ってくる足音が聞こえ、ラヴァ様が裏庭に弾丸のような速さで飛び込んで来られました。


「殿下、御無事ですかっ!?」


リヴァイス殿下は大きな瞳に涙を浮かべたまま、無言で何度も頷いてます。


よ、良かった……


私は力尽きてヘナヘナと座り込んでしまいました。ラヴァ様が殿下に近づきましたが、すぐ後ろに後ずさりされています。そこへいつの間にかミニサイズに戻ったフェルトさんがトコトコ…と歩いて来てピョンとリヴァイス殿下に飛びつきました。そして殿下の涙を舌でペロペロ舐めております。


「ふぇ…フェルトォ…」


とうとう殿下は大泣きしながらフェルトさんに抱き付いています。


「え?嘘?その障壁に入れんのぉ?」


ラヴァ様が情けないお声を上げられました。ああ、いけない。防御障壁張ったままでしたね。フェルトさんは神の眷属ですから障壁なんて関係ないですものね。私は障壁の解術をしました。ラヴァ様はこちらを見て頷かれました。ラヴァ様も診える人なのかしら…?


そして、ヴィオお姉様が慌てて裏庭に出てこられました。


「リヴァ!?」


「は、ははうえぇぇぇ~~」


リヴァイス殿下はヴィオお姉様に駆け寄りました。腰の抜けた私の所へはルラッテさんとオリアナ様が駆け寄って来てくれました。


「カデちゃん、大丈夫なの!?」


「姫様っ、お怪我ありませんか!?」


「は、あはは。なんとか、腰は抜けてますが無事です」


「姫、私が…」


フワッと良い匂いがしたかと思うとサバテューニ様が颯爽と私を姫抱っこして庭先のベンチに座らせてくれました。


「こちらでお待ちを」


サバテューニ様は完全なる王子様キャラですよね!実際の王子様は黒すぎてトキメキませんものっ!


「レンブロあまり近づくなよ?」


ラヴァ様に指示されて、サバテューニ様は距離を置きながら倒れた男の様子を見ています。


すると、オリアナ様がフラリと一歩その男へ近づかれました。


「お嬢様っ!」


「ルラッテ…あれ…あれ…グーデよね?そうよね?」


「「え?」」


私とルラッテさんの声が重なりました。グーデって…確か…


グーデリアンス=ロブロバリント第一魔術師団長じゃありませんかぁ!?

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