魔将軍とお母様2
誤字脱字多くてすみません。
宜しくお願いします。
11/8誤字と文章一部修正しております。
空気を読まないポカリ様の前に立ち、私は仁王立ちでポカリ様をジロリと睨みつけました。
そういえば、仁王像って実際どんな立ち方をしているのでしょう?確かめたいなぁ…でもお寺巡りももう行けないけど…
いけないまた考え事をしていましたね。
私は目の前の仁王様とは真逆な立ち位置の魔神様を見つめて
「お聞きしたいことがあるのですが…」
と切り出しました。ポカリ様は目線で、どうぞと促されました。
「何をしに、こちらにおいでになられたのです?」
「オリアナちゃんとヴェル君を会わせたくて!」
「それはもちろん大歓迎ですが…聞き方を間違えましたね。どうやってこちらに来られたのです?」
「どうやってって?」
恍けやがってっ爺っ!あら?口汚くて失礼しました。ポカリ様は口を尖らせています。表面は美しく心中は口汚く罵りますよ?お局様に対する基本姿勢ですよ、何か?
「オリアナ様はお体は、あまり壮健ではないとお聞きしています。それにルラッテさんも連れてなんて、婦女子二人をどのようにお連れしたのですか?」
だってさ、昨日の今日ですよ?
ヴェル君の所在が判明して、オリアナ様にお伝えしてそれで一日でここに来れる?確か…オリアナ様ってガンドレアにお住まいじゃなかった?
「ああ、それ?うん二人を運んできたんだよ~」
「まさかとは思いますが、魔法で?」
「魔法?違うよ。僕の力で!高速移動して来たんだよ~」
クラリと眩暈がしました。
高・速・移・動!?
いえ一度はね、○ーパ○イヤ人みたいに武空術使えたらな、いいな!とか子供心に思ったことはありましたよ。でも妄想と体験は別問題ですよ!
「オリアナ様もルラッテさんも、よくご無事で」
オリアナ様はクスッと微笑まれました。
「慣れているから平気よ~」
いやいや慣れないでくださいよ。はっ!でもこんな魔神の妻なのだからそれはそれで胆の据わった方なのだろうか…
「なんだかさ~カデちゃんの言葉に棘があるよぉ」
「棘どころか、極太針で刺している気分です。何を不法侵入している身で偉そうなのですか…警吏に突き出しますよ?」
「ごめんなさい…」
「オリアナ様に対して怒っている訳ではありませんよ?この考えなしに、婦女子二人を危険に晒して連れてきた、自称父親に対して怒っているのですよ?」
「カデちゃん、落ち着いて…」
「落ち着いていますよ?ヴェル君。これ以上になく落ち着いていますよ?もし…高速移動している時にお二人に、何か障りがあったらどうするのです?それにお国には、なんと言って出て来たのです?もしや不法越境ですかね?そうですよね?」
「も~ぅいいじゃない!だって向こうでいじめられてたんだもんっ」
だもん、じゃねぇよ…ちょっと今なんて言いましたか?イジメ?
「アポカリウスっそれは…」
「母上何かあったのですか?伯爵家で伯父上には親身にして頂いてるとばかり…」
オリアナ様は長く思案されていましたが、重い口を開かれました。
「ヴェルが病に倒れて…お兄様から戻るように言われて私、北の別荘から戻って来ていたのですが、その…ヴェルに会おうにも面会謝絶だと言われましたし…仕方ないので伯爵家に滞在していたのですが…その…」
めっちゃ言いよどみますねっ~何か言いづらいことなのでしょうか?
「その…使用人達に…あまり、よく思われていないようでして…」
あああ!皆まで言わなくても分かりましたよ、コレあれですね!ラブランカ王女殿下の息のかかった使用人達ですね。
ヴェル君も頭を抱えています。控えていたルラッテさんが口を挟みました。本当は主人が話している時に口を挟むのはご法度ですが、今回は許しましょう…
あら?私…○ッテンマイヤーさん、みたいでしょうか…?
「そのオランジェル様…伯爵様は何もご存じないのですっ。伯爵様の前では皆、普通の使用人のフリをしているのですっ!居ない所で陰湿なことをっ…食事を出して貰えなかったり…宝石を盗られたり…挙句昨日はお嬢様の寝室に…忍び込んで…」
ぎゃああぁ!もう分かったですよっルラッテさん!
私の隣の息子と、斜め前に座る父親からも凄まじい殺気と闘気?みたいなのと、世界が滅亡するのでは…と思うほどの高密度の魔力の奔流を感じます!
やばいやばいっ!
急いで先ほどポカリ様に破られた、屋敷の防御障壁を張り直します。三重どころか五重にしますよっ!こんなやばい魔力を外界に垂れ流ししては、魔人も寄って来そうですよっっ!人的被害は屋敷内に納めなければ……
「母上…すまない。俺のせいで…」
オリアナ様はテーブルの向こうから、ヴェル君の傍に歩み寄るとヴェル君の手を取りました。
「あなたは何も悪くはないではないですか!向こうが逆上せあがっておかしなことばかり口走っているのですよ!」
なんとなくヴェル君の何気なく人をディスるのは誰に似たんだろう?と思っていましたがお母様でしたか…了解でーす。
「とにかくさ~そんな訳だから、カデちゃん頼むね。ここが世界で一番安全だからさ」
ポカリ様…言うに事欠いて世界基準ですか?いやまぁ…確かに自分の防御障壁に自信はありますよ。勿論どんな攻撃(物理、魔法)も防いでみせますよ?
「まぁ困っている方を見捨てることは致しませんが…でも私だって万能ではありませんけど…」
「だから~カデちゃんの手の届く範囲に連れて来たじゃない?」
はぁぁ…この腹黒魔神め!ヴェル君を保護したあたりでさてはオリアナ様も連れて来る気だったな?そうでしょ?もういいですよ、一人も二人も三人もっ皆纏めて来いっ!
じゃあまたね~と魔神のくせに爽やかに帰って行ったポカリ様の後を静寂が包みます。
「ん~と、とりあえずお夕食にされますか?」
ヴェル君の顔が破顔しました。食べるの好きですね、ヴェル君。
「姫様、いつも食事の支度はどなたが?」
「もうルラッテさん、姫様じゃないですよ~もちろん私がしていますよ?」
「ええぇ!」
「多分、ルラッテさんよりも上手だという自信はありますよ、ふふふ…」
「本当だ…カデちゃんの料理はすごく美味しい」
ヴェル君!
コレ…世の中の嫁が旦那に言われたい言葉ベスト10に入る言葉じゃない?ヴェル君は別に旦那様じゃないけどね……
もちろん私のお料理は大好評でした。
本日のメニューはモロンと野菜の塩スープ。メインは鳥肉のピリカラ炒め。ポテトサラダもどき。市場で売っていた謎肉の串揚げを甘酢に絡めたもの(ヴェル君の食べ残し)。デザートは時間が無いので果物をそのまま剥いてお出ししました。
私は後片付けをしつつ…備蓄用のお菓子作りを開始しました。横でルラッテさんが助けてくれるので楽ですね。
昨日、アネロゼやロアモンド様に根こそぎお菓子を渡してしまったので作り置きしておきたいですしね。
まずはクッキーをチョコ、プレーン、クルミっぽい実、アーモンドっぽい実、今回は4種類にしておきますか。手早く生地を混ぜ込み。それぞれにトッピングを入れオーブンへ。
焼いている間にプリンを仕込みます。
なんだか武人様方はやたらとプリンが好きなんですよね…うちのヴェル君然りロアモンド様まで…。
プリンのカラメルを作り終えたら容器の底に敷いて、プリン生地を流し入れます。蒸し器に器ごと並べて入れ、火にかけ10分少々で取り出します。後は冷やせば出来上がりっと!レイゾウハコに押し込みました。
後はパン生地を仕込んでおきますか…
実は腐食の魔法のさじ加減で、パンを発酵させることが出来まして出来た時は喜びの舞を踊ってしまいました。いまでは自家製パンを美味しく頂いております。
今日はロールパンにしようかな…形成が楽でついロールパンばかりですがね~
そこへヴェル君がキッチンに顔を出しました。
「カデちゃん、母上をお風呂にお入れしたいのだけど…」
「あぁお坊ちゃま!私がお入れしますのでっ」
はいはい、了解です。
ルラッテさんをお風呂場にお連れして、備品の使い方やお召替えの夜着をお渡ししました。そしてキッチンに戻ってくると何故かヴェル君がオーブンの前に座り込んでおりました。
びっくりした…ヴェル君何してるの?
「美味しそうに焼けてるな…と思って…」
はいはいはいっスイーツ男子でしたね!
「焼けたら少しは味見してもいいですからね~」
ヴェル君はそれは嬉しそうに笑いながら立ち上がると、な、なんとギューッと私に抱き付いて来ました。
ひええええぇぇ!何事~~!?
「カデちゃんからお菓子のいい匂いがする…」
そう言いながらヴェル君はクンクン匂いを嗅いでます。コラコラ…女性の匂いを嗅ぐなんてそれって…
「セクシャルハラスメント!ですっ」
ヴェル君は至近距離から美麗な顔で覗き込みながら
「何かの魔術の術式?カッコいいな…」
と言われました。
いや…確かにパワーハラスメント!とか、マタニティーハラスメント!とか必殺技みたいですけどね…




