魔将軍はヴェル君です3
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ヴェル君の顔色が変わりました。
詮索しないなんて言っていたのに…ごめんなさい。ヴェル君は深く深く息を吐きました。
「魔将軍…とは俺の別称だが勝手に呼ばれていただけで 誰か別の方に使ってはいけないということはない。俺は帝国軍第二将軍職に奉じていたが、今は罷免された身。おそらく今は副将軍辺りが将軍位に就いているはずだ」
ヴェル君がいっぱい喋っている!!
「推測…ではあるが軍部の誰かを魔将軍に見立てて脅しの材料にしているのだろう…俺は相当畏怖の対象らしいからな…」
ヴェル君っ!ああごめんなさいっそんな泣きそうな顔をしないで…
私は堪え切れずにヴェル君の手をギュッと握り締めました。
「ヴェル君ごめんなさい、本当にごめんなさい…」
「カデちゃんがどうして謝る?」
「私、詮索しないって言っていたのに…」
ヴェル君は握った私の手を握り返してくれました。
大きくて暖かい手…ヴェル君から流れてくる魔力は穏やかな心地よい波長です。そんなヴェル君を見上げると優しい目で私を見つめていました。
「カデちゃん、どんな服を買って来てくれた?楽しみだ」
ヴェル君~~優しいっ君は優しいよぉ~~こんな優しい人が畏怖の対象なもんかっ!偽物魔将軍めっ!
ヴェル君は私の買ってきた市場に売っている普通~ぅのお洋服を、パリコレモデル並みに着こなしてくれました。流石イケメン!!
先ほどの話の中で将軍職を罷免された、とかすごく気になるワードはありましたが詮索しないと約束しましたしね…うん気になりますが、気にしない!
「ヴェル君、そろそろ夕飯の準備に取り掛かりましょうか。胃の調子はどうですか?お肉とか食べられそうですか?」
ヴェル君は破顔しました。ま、眩しいです!油断していました。お肉は食べられそうですね。すごく嬉しそうに私の後をついてきます。歩く足取りもしっかりしてきましたね。もう魔力切れによるふらつきもなさそうです。流石ポカリ様のご子息、無駄に丈夫です。
あら?もしやキッチンで調理するのを見ているつもりでしょうか?可愛いですね~うちのヴェルワンコ君は、うふふ。
その日の夕食は肉肉しいメニューになりました。メインもサイドメニューも肉料理です。
ヴェル君のテーブルマナーは完璧でした。カトラリーの扱いもばっちりです。食べ方も非常に綺麗です。
詳しくは聞いたことはありませんが良い生まれの方なのでしょうか。物腰も柔らかいですしね…高貴な雰囲気を立ち姿からビジバシ感じます。
あ、腐っても魔神の方のご子息でしたね。良い生まれなのは確かです。
「ヴェル君は基礎体力が高いようですね。回復する速度が常人よりすごいですね。どうです?ヴェル君、今からお風呂に入ってみますか?もちろん危なくないように私も付いていてもいいでs…」
「入る。是非一緒に付いていてくれ」
喰いつき気味です。何故そんなに前のめりなのでしょう?
私は入浴準備の為にイソイソと自室に戻りチェストを開けました。今こそあれが活躍するはず…ゴソゴソ…ジャーーン!
「モコモコォルーム~ウェア~ッ」
つい某猫型ロボの声真似をしてしまいました。おひとり様が長いと一人モノマネもお手の物です。
このモコッとした部屋着は私のお手製です。タオル地で出来ていまして、少々水分を含んでも大丈夫な素材です。家でゴロゴロしている時に着ようかな~と作ってはみたものの、結構外出する頻度が高い私はいつでも出かけられるような服装をしておりまして、夜までお出かけ着、入浴後にパジャマ着用のルーチンに落ち着いてしまいました。
そんな作ったものの活躍の場がなかった部屋着がっ今ここにっ、鮮烈デビューです!
私は早速、フワモコ部屋着に着替えてお風呂場に移動しました。
ヒョイッ…と脱衣所を覗き込みました。
ぐはぁぁぁ…!!
8割方裸族の腰にはタオルのみ、防御力ゼロの美ボディ、ヴェルヘイム元将軍閣下がっ。今私の目の前にぃぃ…
お風呂場で逆上せないか心配です…
「!!…カ…カデちゃ…ん、それ…何?」
私の気配に振り向いたヴェル君は、私の着ているフワモコ部屋着を指差しました。
「何って…室内着ですよ?自分で作ったものの、着る機会が無かったので今日着てみました!これでお風呂場で水跳ねも気になりませんし何よりヴェル君の入浴の補助も出来ますよね~」
ヴェル君は洗面台の縁に手を置くと、一緒……裸……とか何かをブツブツと呟いています。
気分が優れないのでしょうか?やっぱりお風呂は早すぎたかな?
「やっぱりお疲れですか?お風呂はやめておきますか?」
「…いや…入る」
若干よろめきながらヴェル君はお風呂場に入りました。
これは危ない…いつ倒れても大丈夫なようにしっかりサポートせねばっ。
介護職していた転生人生の経験はありませんが、前の世の日本で甥と姪が子供の時に彼らをお風呂に入れた経験はあります。大きな男の子でも大丈夫さ!よしっこいっ!
椅子に腰かけたヴェル君に、炎魔法と水魔法を混ぜて作ったお湯をゆっくりとかけていきます。
「熱くないですか?」
「大丈夫だ」
「先に頭を洗ってもいいですか?」
ヴェル君はコクンと頷いた。あ~なんだか楽しいなぁ…甥っ子とお風呂に入ったのを思い出します。
私は会えず仕舞いでしたが甥はもうすぐお父さんになる予定でした。
せめて生まれた甥孫を抱っこしてから死にたかった…自分が病死だったから仕方ないけれど…
いけない…美ボディヴェル君との楽しいお風呂タイム中ですよ。私は気持ちを切り替えました。
「髪に洗髪料つけますね~」
ヴェル君は男性なので甘い香りものはやめて、レモンっぽい香りの自作洗髪料にしています。
アワアワ…ゴシゴシ…
ヴェル君は身長の割に頭は小さいですね…いいなぁ~本当に八頭身の人間て存在するんですね。
「痒いところはありませんか~?」
「…大丈夫」
またまた美容師さんごっこの続きをしてしまいます。頭に浴槽から汲み出したお湯を掛けていきます。ヴェル君の目に泡が入らないように風魔法で顔面前の水流を弾き飛ばします。
魔法って便利ですね。シャワーキャップが無いので助かります。
ヴェル君の髪をタオルで軽く拭いて両肩を手の甲で叩きます。
パチン!パチン!
美容師の方がシャンプー後にしてくれることありますよね。アレ、気持ちいいですよね。
「これは…これでいいな…」
「そうですか?気に入って頂けたなら何よりです。では…体も洗いましょうか」
ヴェル君の体がビクンと跳ねました。ん?
「体は…いい…」
「でも背中はお一人ではやりにくくないですか?」
「………じゃ背中だけ…」
長い熟考の後、絞り出すように答えたヴェル君の背中を洗い流しました。
しかしこの後は自分で洗う…と頑なに言い張るヴェル君に押し出されるようにして私はお風呂場から追い出されました。
仕方ない…
ビールによく似た飲み物、ヴォルナを『レイゾウハコ』に入れると私はおつまみの準備を始めました。お風呂上がりに一杯は鉄板ですよね。
鼻歌を歌いながらキッチンへ向かいました。
この後に嵐が来訪するとは知らずに……
ポカリ様が出ないと話進まない気がしますね…




