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CGD3-④

「他の指揮官もここまで出来る人は見たことないし、もしかしたら真昼ちゃんはロイエいちなんじゃないかなあ?」

「そ、それはいくらなんでも大袈裟では……?」


 自信がないといえば確かに嘘にはなる。それでもこれだけの精鋭部隊で、新参の私が魔力生成の能力がロイエ内で一番ということはないんじゃないだろうか?


「いや、私も真昼ちゃんはロイエで一番魔力生成は得意だと思うよ」


 守さんが佑紀乃さん言葉に同意を示す。


「わたしもそう思います。ロイエに入隊してからいろいろな方を見てきましたが、まーちゃんはやはり飛びぬけていると思います」

「……私なんておだてたって何も出ないわよ」


 普段から褒め慣れていないから居心地が悪くて仕方がない。しかし、私がそんなことを言うと、あずさはなぜかため息をついたのだ。


「な、なによため息なんてついて……?」

「まーちゃんにはもう少し素直になってほしいなあって思ってね……」

「うむむ……」


 私が捻くれているのは生まれつきなんだし、あずさだってそれぐらい分かっているはずだ。今更性格を直せと言われたってそんなに簡単にいくものじゃない。


「あはは、まあそういうところが真昼ちゃんらしくて私は好きだけどね。私はスピードには自信あるけど、魔力生成はからっきしだから、自分ができないことができる人って眩しく見えるんだよね」

「わ、わたしも、後衛のくせに魔力生成は苦手です……」


 あずさだって「後衛のくせに」なんてことは言う必要ないとは思うけどな。でも確かに、後衛はバックアップの役割の人が多いから、そういう人にとっては魔力生成は必須の能力になるということは分かる。しかし第三分隊の場合は、魔力生成は私がやればいいし、あずさには私を守ってもらわないといけない訳なので、今のように攻撃特化でも全然問題ないと私は思う。


「いやあ、私なんてどっちも苦手でねぇ」

「嘘ですね」「嘘ですよね?」「そういうのいらない」


 佑紀乃さんの言葉に同時に突っ込む三人。


「あれえ? みんな私に対して当たり強くない?」

「しょーもない嘘つくからでしょ。あんたはどっちも結構なレベルじゃないの」

「えー、守ちゃん、それは私を買いかぶりすぎだよ」


 ニヤニヤとそんなことを言う佑紀乃さん。正直私はあの戦いではあまり佑紀乃さんと絡みがなかったので、彼女がどの程度の実力者かは測りかねていたが、ほとんど窮地に陥っていなかったことを考えれば、やはり相当実力があることは間違いないのだろう。


「佑紀乃さんってあんまり魔力石を求めないですよね? それってやっぱり自分で作れるから大丈夫ってことなんですか?」

「んー? どうかなあ、私が単にサボってるだけって可能性もあるよ?」

「なーに言ってんだか。だったら、私の進路上のエーテルが勝手に倒れていく現象をどう説明するって言うのよ? あれめちゃくちゃ助かってるんだからね」

「えへへー」


 守さんに褒められて素直に顔をほころばせる佑紀乃さんはやっぱり子供っぽいと言えば子供っぽくはあるが、私みたいに面倒な反応をするよりよっぽど愛らしくていいんじゃないだろうか?

 それにしても、前衛の進路上の敵を的確に狙い撃ちできるのはかなり凄い能力だと思う。彼女の不思議な雰囲気に惑わされていたけど、この人は本当になかなか侮れない。次の訓練ではもっと色々指示を出してみても面白いかもしれないな。


 と、そんなこんなで話は尽きず、気付くと時刻は21時を回っていた。いくら明日が日曜日だとしても、女子高生があまり遅くまで出歩いているのも問題がある(ロイエの隊員が何をいまさらといった感じではあるが)。私たちは手早く食器の片づけを済ませ、帰路につくことにしたのだった。


「それじゃ、今日はありがとうね。また週明けに」

「羽岡シェフの料理美味しかったよ。また食べさせてね」

「はい、今度はもっと手の込んだ料理を食べていただきますね」


 手を振って二人が帰っていく。その途中、何やらまたしても冷やかすような視線を感じたが、私は敢えて相手にしないことを選択した。

 賑やかな二人が帰り、静けさに包まれる1LDKのマンション。家が近く5分もせずに帰れることもあり、私は二人よりものんびりしていた訳だが、そんな私にあずさはある提案をしてきたのだ。


「まーちゃん、今日泊まっていかない?」


 あずさの家に泊まったことなんて一度や二度じゃないし、別段意識する必要もないのだろうけど、ああ何度も茶化されてしまうと変に意識してしまってよくない。とはいっても、今日という日が濃密すぎて、私はもうすっかり疲れ果ててしまっていたので、その言葉に甘えることはやぶさかではなかったのである。


「そうね、明日も休みだし、今日は泊まらせてもらおうかしら」

「うん!」


 私の返答に対し、予想通りあずさは嬉しそうに笑った。


 私が泊まることになり、あずさは寝室の片づけをしに行った。私が改めて室内を見渡してみると、ここにはあまり可愛らしい小物もなく、どちらかと言うと殺風景な部屋だということに改めて気が付く。まあ、日々ロイエの訓練とエーテルとの死闘を繰り広げている人間に、女の子らしい部屋の調度を揃えろなんて言う方が無理があるわけだが。そんな中に唯一、この部屋を彩ろうと頑張っているものが私の目に飛び込んできた。


「これ、いつのやつだったかなぁ」


 それは私とあずさが写っている写真だった。どこかに出かけた時の写真ではなく、私の家で撮られたものだ。私はあずさと一緒にダイニングテーブルの椅子に腰掛けている。恐らく急にカメラを向けられたのだろう。あずさはしっかりピースサインをしているが、私はちょうど振り返って驚きの表情を浮かべているだけであった。


「もうちょっと可愛く写ってる写真はなかったんかい」


 と一人愚痴りつつも、よくよく考えるとここ最近私は写真を撮った記憶すらなかった。


「とてもじゃないけど、写真を撮るような気分にはなれなかったからな……」


 実際、この写真も撮られたのは今から2年以上も前だ。そして、これを撮影した張本人は、もう……


「まーちゃん、どうかしたの?」

「うわっ、ビックリした……」


 私は余計なことを考えていたせいであずさの接近に気が付かなかった。更になぜかあずさが私の肩を揉んでいることに気が付くのにも若干時間がかかってしまったことは流石に反省すべきだろう。ボヤっとしていては、戦場で生き残れるはずもない。


「なんでまた肩揉んでるの?」

「うーん、お疲れなんじゃないかと思ってね」

「さすがあずさ。よく分かってる」


 私はされるがままにあずさに肩を揉まれることを選択した。


「写真見てたの?」

「うん。二人とも若いなって思って」

「まーちゃんはあんまり変わってないよね」

「それって私がお子ちゃま体型ってことかしら?」

「うーん、違わないけど、小さいは正義だからいいと思うよ」


 そう言ってあずさは佑紀乃さんみたいににへらと笑ってみせた。こやつめ……。


「逆にあずさは胸がこの時から倍ぐらいになってるわよ」


 私はそう言ってあずさのおっぱいに寄っかかってやる。


「もう、まーちゃんのえっち」

「人の身体的特徴を揶揄した罰よ」

「別に揶揄なんてしてないもん。まーちゃんの身体は抱きしめるのにちょうどいいサイズなんだもん」

「だから、私は抱き枕じゃないっての……」


 一体何度繰り返したか分からないような会話だが、私はこのゆったりと流れる時間は嫌いじゃなかった。散々胸の柔らかさを堪能したので、私はあずさをおっぱい弄りから解放してあげることにしたのだ。


 あずさは自分の胸を寄せて上げたりしながら尋ねる。


「ねえ、そんなにおっぱい触るのって楽しいの?」

「楽しい」

「即答だね……。でも、まーちゃんが楽しいなら、私は少し嬉しいかな」


 こらこら、あんまり語弊があることを言うんじゃありません。妙に気恥ずかしかったので、私はわざとらしく咳払いをしてその恥ずかしさを誤魔化しにかかったのだった。

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