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元村人A、繰り返しの日々から抜け出します。  作者: 艇駆 いいじ
第3章 王都ラクシュ騒乱編
36/121

第29話:元村人A、一撃に懸けます。

 ゴーレムは後方に吹っ飛び、初めて尻餅を付く。


 突然の出来事に何が起きているのか分かっていないようだ。立ち上がろうとしながらも、何か思考しているように見える。


「アラン! セシアを!」



 気づくとリリーが俺の前でセシアを抱えてきていた。セシアは体がボロボロだが息はあり、今はまだ気を失っているだけのようだ。ただ、それも時間の問題だ。



「リリー。あいつの体を見てみろ」


 ゴーレムの体は、先ほどの攻撃で若干体に傷が入っている。一度目の『連戟レンゲキ』とは比べ物にならないほど傷は大きいものだ。しかしそれでもまだ浅く、ゴーレムの心臓であるコアを破壊するには至らない。




「このままじゃ圧倒は出来るがジリ貧だ。セシアやニーナの体力を考えるとあまり長居はできない」




「そうね。考えはあるわ」



「何か作戦があるのか?」


「私のスキルを使う」


「新しく習得したやつか?」


 ここに来る前に、リリーが何かスキルを習得していたのは覚えている。



「そうよ。ただ、高い威力の反動で、動けなくなるかもね」



 ゴーレムが立ち上がった。どうやらすぐにでも決断しなければならないようだ。


「やろう。最悪削りきれなければ俺がなんとかする」


「わかった!」


 リリーは前進しようとすると、ゴーレムから何かモーターのような音がする。


「リリー! 下がった方がいい!」


 リリーは踏み出そうとした足を引っ込めて、大きく後ろに下がった。


 すると次の瞬間、ゴーレムを中心に、風が走り、なんとか立っていられるレベルの衝撃が走る。



 ゴーレムの方を見ると、何か様子がおかしかった。煙のような気体が頭から出ている。



「壊れたのか……?」




 しかし予想は外れて次の瞬間、体の胴の部分から前と後ろに足が生え、四本足になった。肩の付け根の部分から更に腕も二本生え、四本腕になる。




 手には何故か棍棒や鉤爪かぎづめのような武器も装備されている。



「とうとう本性を現したってわけか」



 変体した、と言えるゴーレムは準備が整ったのか、こちらへ向かってくる。


「リリー、頼んだ!」


「オッケー」


 リリーも走り、ゴーレムと対峙する。


 リリーが切っ先をゴーレムに向けると、ゴーレムは腕の一本を使い、棍棒を横にぎ払う。


 で棍棒を弾き返し、返す刃で腕の一本を切り落とそうとするが、すかさず残った腕の盾で防がれる。


「……攻守のバランスが取れてるって訳ね」


 すかさず攻撃の手を休めず、剣戟を弾かれて地面に着地した勢いを利用し、ジャンプで胴体の胸の部分を狙う。


 が、残っていた鉤爪で防ぎ、そのリーチでリリーを寄せ付けないようにした。



「隙が無いわね。どうすればいいのかしら」



 ゴーレムは防御に徹しているように見える。こうなると腕四本という守りの鉄壁は高く、容易には打ち崩せない。


「リリー! 俺はどうしたらいい!」



「スキルの発動には何秒か時間が必要なの! あいつの動きを何秒か止めることが出来れば……!」



 強化されたゴーレムにはほとんど隙がなく、少しでもこちらが隙を作ればたちまち攻撃に切り替えてくるだろう。


「どうやら本格的に俺の出番みたいだな」


「どうするつもり?」



「足場だ。俺とお前で隙を作る」



 とうとうゴーレムが棍棒をリリーに振るってくる。反撃開始と言ったところか。


「リリー、上だ!」


 俺は『クラフト』を発動させる。ゴーレムの足場に瓦礫で出来た山が現れ、必然的にゴーレムの位置は高くなる。


 そのため、リリーの頭から胴体にかけて振り下ろした棍棒の位置は、やや上にずれて空を切った。



 それが、少しの隙を生み出した。



「そういうことね!」


 リリーは動きが止まったゴーレムの前の足を切り落とす。関節部分は他の箇所と違い、やや切断しやすいようになっているらしく、リリーの一撃でも充分切り落とすことに成功した。


 金属が地面のアスファルトに落ち、カランカランと音を立てた。


 リリーはそれを確認し少し後ろに下がり、距離を取る。俺は高くした土台を解除する。



 戦況は、足を四本のうち一本落としたゴーレムと、リリーというやや有利な状況に変化した。



 ゴーレムは再び動き始め、リーチの長い鉤爪で引っ掻こうとする。


「アラン! 壁、頼んだわよ!」


 リリーはそれを見て、ゴーレムの体の右側に走っていき、ジャンプをした。


 そのタイミングを見計らって、俺はジャンプした方向に壁を作り出した。リリーはその壁を蹴った反射で方向転換、加速することで爪を避けつつ背後に回る。



 ゴーレムもその動きは予想できていなかったらしく、後ろを振り返ろうとしたが、リリーはそれを見逃さず、腕を二本、棍棒の腕と盾の腕を切り落とした。



 リリーが壁を蹴った方向にまた壁を作り出すことで、壁あての要領で方向を変換し、再びゴーレムの前に舞い戻ることが出来た。


 ゴーレムは失った両腕を見て動揺しているようで、元々腕があった所からは煙のようなものが出ている。


 それは、俺達が待ち望んでいた大きな「隙」であった。


「これだけやれば仕留められるはずね」


 リリーは右手で握った剣を切っ先をゴーレムに向ける。


 すると、剣が真っ赤な炎のようなオーラを放ち始める。炎のようにメラメラと動き、そのオーラの力なのか、剣の周りに風が起こり、リリーのスカートも揺れている。



「とどめよ。『限界点のリミテージ……」




 リリーが叫ぶと、スキルが発動し、オーラが倍以上に大きくなり、風圧もその分高まる。


 そして大きく剣を振り上げる。




一閃スレイア』!!!」




 剣を振り下ろすと、その真っ赤なオーラは斬撃となり、剣を降ったゴーレムの方へ向かっていく。


 地面には剣のオーラが通った痕が残り、風圧は俺が立っているのがやっとであるくらいであった。



 そして、その斬撃はゴーレムの胴体を真っ二つに切り裂き、そこから少し後ろにオーラの通った痕で道が出来ていた。



 ゴーレムはコアの部分を破壊されたようで、完全に機能を停止した。勝ったのだ。


「よっしゃ!」


 俺は会心のガッツポーズをして、リリーの方へ駆け寄った。


「ふう、危なかったわね」


 リリーは剣を腰に戻し、疲れたとばかりに地面に座り込む。


「お疲れ。凄かったな、さっきのスキル」


 威力は今まで見てきたリリーの攻撃とは比べ物にならないレベルの強さだった。このスキルがあれば今後の戦略の幅は広がるだろう。



「一発限りで、魔力全部持っていかれちゃうけどね。お陰でクタクタよ」



 リリーは困り顔で説明し、自分の肩をねぎらっている。


「歩けそうか?」


「ええ。ふたりを連れていきましょう」


 リリーがそう言って指さした方向には、セシアとニーナが寝ている。ゴーレムに勝ったからかわからないが、先程よりはいくばくか気持ちよさそうな寝顔になっている気がする。


「さ、行こうか」


 リリーを立ち上がらせるため、手を差し伸べると、一瞬、不穏な空気を感じた。




「リリー」




 少女の声だった。リリーの真後ろに立っている。老人の様な白髪と、真っ赤な目を持ったメガネの少女だった。


 その時、危険を感じ取った。


「『クラフト』」


 掴んだリリーの手をそのまま引っ張り、こちら側に寄せて、壁を作り出す。


 するとそれと同時のタイミングで少女は懐から黒いナイフを取り出し、壁を横一閃、切り裂いた。



 ゴーレムの一撃を防いだことに定評があるはずの壁が、あっさり、果物を斬るようにいとも容易く真っ二つにされてしまった。



「なんだお前は!」


 俺は叫ぶ。



「リリー、あなたが一番わかってるんじゃない?」



 少女はリリーに問いかける。


 少女はよく確認すると、背丈はリリーとあまり変わらず、露出の多い黒いコスチュームの様な鎧を着ている。




「……シンシア?」




 リリーは恐怖で顔を歪めている。


 シンシアと呼ばれたその少女は、ニヤリと不敵な笑を浮かべた。

シンシア

挿絵(By みてみん)


挿絵はカスタムキャストを使用しました。

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