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元村人A、繰り返しの日々から抜け出します。  作者: 艇駆 いいじ
第3章 王都ラクシュ騒乱編
34/121

第27話:元村人A、初めて見ます。

「ニーナ!!」


走馬灯そうまとうの向こうで、叫び声がする。奴隷商人の男とは違う、男の声だけど、優しい声だ。


 目を閉じていて視界が真っ暗な中、私の体が宙に浮いたことを感じた。


 ドガァァァァァァァン


 地面が砕けるような大きな音がして、私は目を開いた。



「怪我はないか!?」



 私を抱え上げているのは他でもない、私を買った主人だった。



 視界が再び真っ暗になった。




「アラン! 助かったわ!」


 リリーが後方から叫び、俺にサムズアップを送る。やれやれ。奇跡的なタイミングだな。


 侵入してきたモンスターとは、既に王都の衛兵たちが戦闘を行っていたため、俺達は人民の救助を行うことにした。


 衛兵たちは壊れた王都の北側の壁周辺で、俺達はそれより少し中心よりの住宅街を中心に、瓦礫を退けるなどして王都の人民を救出していた。



 するとどうだろう、モンスターが住宅街に入り込んでいてしかも奴の目の前にいるのは見知った少女、ニーナだったではないか。



 俺はニーナを抱え、リリーとセシアの方へ戻り、セシアの少し後ろの方に寝かせた。


「ふたりとも、あのモンスターがなんだか分かるか?」


「野生では見たことないわね。あんなロボチックなモンスター」



 体長三、四メートルの人型の巨大モンスター。体は金属で出来ているようで、真っ黒なそのボディに入った赤いラインはどう見ても人工的だ。




「……ゴーレム」



 静かにモンスターを見据えていたセシアがいつものようにつぶやく。


「ゴーレムか。それなら納得がいくな。」



 ゴーレムは魔術に作られたモンスター。魔術とは、魔法や魔力を用いた技法のことだ。



 最初は、どこかの魔法使いが自分の魔法で土でできたゴーレムを生成、大量生産することに成功し、そこから研究が進められたという。



 ゴーレムは作り主の指示に従うように出来ているが、一応モンスターの部類に入っている。下手に作ったり、強い刺激を与えると暴走することもあるので、昔は敵国に送り込むことが多かったため大量生産されていたが、逆に今はあまり盛んではない。




 そしてゴーレムは弱点がはっきりしている。人間の心臓部分にコアと言われる、ゴーレムを動かす魔力を供給する結晶があるのだ。そこを破壊するとたちまち機能を失ってしまう。




「つまり、コアの破壊を目指すんだな?」


「……装甲そうこうが固すぎる。」



 確かにセシアが言うとおり、本で読んだゴーレムと違ってあのゴーレムは体が金属で出来ている。胸を剣で貫いて倒すことは出来なそうだ。



「つまり、少しずつ消耗させるってことか!?」


「もう来るわよ!」


 話していると目標を定めたゴーレムが走って前進して来ている。



「俺とリリーは前線であいつと戦う。セシアは後方から魔法での支援を頼む!」



「……わかった」


 俺とリリーは剣を構え、ゴーレムに向かって走っていく。



「『連戟レンゲキ』!!」



 リリーはゴーレムにジャンプして飛びかかり、剣スキル、『連戟』によって胴体に二発、剣での攻撃を入れる。



 金属と金属がぶつかり合う、キンという高い音を立ててゴーレムに攻撃が入り、ゴーレムはあまりの衝撃に一歩足を引く。


「結構ダメージ入ったんじゃないの?」



 リリーがニヤッとして言った瞬間、驚きの表情に切り替わった。



 ゴーレムが一歩引いたのはパンチを入れるための準備だった。『連戟』によって大きく隙ができたリリーはその後すかさず繰り出されるパンチを避けることが出来ない。



「しまっ……」



「『クラフト』!」



 俺の詠唱によってリリーとゴーレムの間に地面から壁が出現し、ゴーレムのパンチのクッションになる。



 無論、壁には穴が開き、リリーは剣でパンチをガードするが、威力を殺しきれずに後方に吹っ飛ぶ。


「ふー、危なかった」


「とんでもない威力だな……」




 俺がこの戦いの直前に習得した手品師スキル、『工作クラフト』は、普段の生活で意識的に十秒以上触ったものをその場から消滅させ、ストックし、好きなタイミングで出現させることが出来るというものだ。




 今回の場合、俺は人命救助の際に瓦礫を触ったことで瓦礫の山をストックし、ゴーレムのパンチの威力を減らすために瓦礫から壁を生成し、リリーとゴーレムの間に出現させたというわけだ。



「助かったわ」


「どういたしまして。ただ、あれ、見てみろ」


 俺が指さしたのはゴーレムの胴体だ。



 先ほどのリリーの攻撃によって少しは傷が付いているかと思えば、剣のあとが一筋付いているだけだ。



「嘘っ……! 全然効いてないじゃない!」


「しかも剣の痕はひとつ。『連戟』は二回目の攻撃の威力が上がるスキル。つまり……」



「二回目しか相手に傷を付けられない……」



 俺が言いかけた所でリリーが正解を言う。ちょっと焦ったような顔をしながら。



「……ふたりとも、伏せて」



 セシアがつぶやく。俺とリリーは話を一旦中断して、屈んだ。




「『スクリュー』」




 セシアが手のひらをゴーレムの方に向けて詠唱すると、半径十センチほどの水の球が手のひらに現れ、瞬間的に手から放たれ、砲撃のようにゴーレムの体を捉えた。



 ゴーレムの胴体に水の弾丸が当たり、ゴーレムは耐えることが出来ず後ろに転がる。すぐに立ち上がったが、確実にダメージは入っているはずだ。


「どうする。俺達の攻撃じゃ、あれを倒しきれないぞ」



「……魔力を消耗させる」



 セシアが言う。つまり、コアから供給される魔力をゼロにすることで機能を停止させるというわけだ。


「……でもそれってどれくらい時間がかかるんだ?」


「さあね。でもさっきまでみたいにやればいつかエネルギー切れになるんじゃない?」


 俺が疑問の声をあげるとリリーはこっちを見て、何か策ありげにニヤリと笑って続けた。



「それに……私にだって作戦が無いわけじゃ……」




「リリー! 避けろ!」




 俺は叫んで、リリーを押しのける。



 リリーがゆっくりと倒れる感覚がある。一秒一秒が遅い。



 俺はゴーレムから放たれた火の弾丸を腹に受け、一瞬熱さを感じる。



「アラン! アラン!」


 リリーの叫ぶ声がする。何なんだと起き上がろうとすると顔から下が動かない。しかも、視界も少しぼやけている。




 見えない目を凝らして自分の体を見てみると、自分の腹にはぽっかりと穴が空いていた。




 あれ。どういうことだ。



 見間違いかと思い、地面を見ると、先程までは舗装された その道はアスファルトの色をしていたのに、真っ赤に染まっていた。



「アランーーーーー!!」


 リリーの叫び声が聞こえ、体を触られる感覚がする。視界がだんだんと真っ暗になってきた。



「リリー。近距離でゴーレムを」



「でも時間なんか稼いでたらアランが死んじゃう!」



「もう……」



 手遅れだ、とセシアは言いかけて辞めた。



「……嘘」



 リリーは呆然とした表情で立ちすくむ。



「……早くしないと皆死ぬ」



 セシアは『スクリュー』でゴーレムの火の弾丸を打ち消す。しかし少しずつ精度が上がってきており、いつまで相殺が続くかわからない。


「……真似されてる」


 セシアは既に勘づいていた。ゴーレムは自分の魔法を火で応用して模倣し、徐々にその一撃一撃を洗練させてきていることを。



「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 リリーは剣を持って考えなしに突っ込んでいった。先程までの冷静さは全くなかった。


 無論、そんな無鉄砲な攻撃が通じるはずもなく、全てゴーレムは体で受けきったあと、パンチでリリーを吹っ飛ばした。


 ゴロゴロとリリーは転がり、剣はリリーの少し前に転がっていってしまった。



「ううう……うう」



 リリーは地べたに這いつくばりながら唸るような怒りの声を出す。


 その上ではセシアがゴーレムへの魔法での攻撃の手を緩めていなかった。


 が、徐々に相殺どころか向こうの魔法の方が強くなってきている。


 とうとう火の威力はセシアの魔法の力を超えて、セシアの手が火傷するまでになった。


 火傷でただれた手を魔法スキルの『氷結フリーズ』で凍らせ、ひたすらに魔法で応戦する。火からリリーを守るためだ。


「……これまでね」


 魔法の威力での負けを認め、セシアは魔法を撃つことを辞めた。


 リリーとセシアは負けたのだ。この絶望的な状況に。

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