PURGEー69 目論見!!
隊員達がそれぞれで団体戦に向けた準備を進めている中、一人それを楽しみにして鼻歌を歌いながら基地の施設内を歩いていた入間。
「こんにちは。今回は随分と派手な事をしましたね入間隊長」
今の今まで黒葉達に一切気配を感じ取られずに移動した入間だったが、そんな彼女ですら声が聞こえるまで気配を消していた人物の出現。
入間は警戒を強めて後ろを振り返ると、姿を見せたのはこの基地のトップである隊長のクオーツだ。
「なんやクオーツ隊長ですか。やめてください。貴方の気配は私ですら感知でけへんのですから」
「フフッ、それは失礼いたしました」
小さく笑うクオーツ。入間が警戒を緩めるのを確認した彼女は再度問いかけた。
「それで、団体戦をするための橋渡しをしたのはどうしてですか?」
「どうして、とは?」
「こう言っちゃなんですが、仕事をよくさぼる貴方がわざわざ細かい手続きのいるこんな事を率先してやるのが少し気になりまして」
クオーツの言い分に入間はお見通しかと感じた。元々隠す気もなかった彼女は単刀直入に理由を告げた。
「新人の中でも功績を上げていっている人達をぶつけたらどうなるのか、気になったもんで」
クオーツはこの理由に半分納得した。近頃の六番隊では森本小隊はもちろんの事、木花小隊も重大事件の解決をした実績があるのだ。
「確かに、あの二つの正体の功績にはめざましいものがあります。しかしそれだけではないでしょう?」
クオーツの心の内を見透かすような目つき。彼女は入間の態度の中で小さな焦りを感じ取ったのだ。
こうなれば入間も詳細を説明せざる負えないと細かいところまで白状した。
「ある程度戦力を揃えておきたいんです」
「少し焦っているようですが、どうしてそこまで急いでいるのですか?」
「赤服の活動の活発化」
入間の発言にクオーツの表情も微かに歪んだ。入間は近い過去を思い返しつつ語り続ける。
「ランの報告で聞いた複数の異世界での侵略行動。それだけに飽き足らず、私の島である忍者の世界に内通者を通じて侵入して来た。
この前森本小隊が対応した事件についても、赤服が関わっていたと聞いてます」
クオーツは静かに首を縦に動かすと、この先の入間の言いたい結論を察し先に告げた。
「もしかしてですが、赤服と大きな衝突が起こる可能性があると?」
「ええ、それも多分近い内に」
あくまで入間個人の予想。だが実際に自分のテリトリーに侵入された立場としては、やはり警戒してしまう部分も大きくなるのだろう。
それも六番隊にも内通者がいる可能性は既に出ている。入間としてはこの世界でも自分の基地と同じ、あるいはそれ以上の事件が起こりかねないと予想しているようだ。
「それで出来るだけ戦力を上げておきたいのですか……なるほど、私としても確かにそれは気になってました。ですが入間隊長、そのためならわざわざ春山隊員の異動を書けのチップにすることもなかったのでは?」
クオーツの問いかけに入間は笑った。
「カッカッカ! そこは貴方の方が分かっているでしょうクオーツ隊長」
クオーツは入間からの遠回しな返答に彼女が言いたいことを何となく察し、彼女に続いて思わず笑ってしまった。
「フフッ、それは確かに。二つの部隊、どちらも力を入れて挑んでくれそうです」
隊長二人の間でも話が付き、時は流れて数日後。団体戦当日がやって来た。
会場となる闘技場の観客席には、六番隊の様々な隊員が集まって各々盛り上がっていた。
「森本小隊と木花小隊が戦うのか。小隊通しのぶつかり合いって珍しいな」
「どっちが勝つのか分からないよね」
隊員達の間では既にどちらの隊も次々事件を解決して見せた一目存在となっている。
そんな二つの隊がぶつかってどちらが勝利するのか、率直に気になる人は多かった。
様々な予想で観客席が盛り上がっている中、闘技場控室ではレニが初めての隊員同士の戦いに対してかなり緊張していた。
「ウゥ……分かっていても緊張してしまいます」
「大丈夫よレニ、この前の任務であんなに上手く立ち回ってみせたんだもん。今回だって上手くいくわ」
傍に寄ってレニに励ましの言葉をかけるリドリア。部屋の反対側には別の意味で不安を感じていた黒葉に信乃が話しかけていた。
「ごめん、俺の精なのにみんなに任せて」
「私達の方から頼んだから。大丈夫、私達だって日々特訓している。私やレニさんは本来戦闘向きな異能力ではないけど、それでも相手への対応を編み出したから」
「信乃さん……」
黒葉に優しく微笑みかける信乃。そんなとき、会場にアナウンスが鳴り響いた。
「団体戦第一試合を開始します。代表の隊員は闘技場入り口へ移動してください」
このアナウンスに一番反応したのは、レニの傍から立ち上がったリドリアだ。
「さあ、いよいよね」
「リドリア、まさかいきなりお前が出るなんてな」
「レジアのお誘いよ。安心して。圧勝して優勢に持っていくわ」
「リドリア……頑張って!」
「ファイトです! リドリアさん!」
黒葉達からの応援を受けたリドリアは控室から離れていき、闘技場の入り口にまで移動した。
そして門は開き、両端から二人の隊員が足を進める。
「お久しぶりの勝負、勝たせていただきますわ」
「それはどうかしら? こっちの圧勝で終わるわよ!」
二人がメンチを切る中、会場に派手な機械音が響き渡く。
団体戦第一試合が開始された。




