PURGEー67 アイズ!!
レジアから突き付けられた言葉に森本小隊全員、特に名指しで命じられた黒葉にあった。
「俺が……移動?」
「はい、黒葉君をスカウトしに来ましたわ」
「いやいやいやいや! なんでそうなるの?」
黒葉からの当然のツッコミ。レジアはこれに笑みを崩さず胸を張ったまま答えた。
「この前のテーマパークでのことで、貴方の事を大変気に入ったのです。ぜひ私の隊の元に貴方を迎え入れようと思いまして」
折れる気のさらさらないレジアの態度。次に口を開いたのは黒葉の正体の隊長である信乃だ。
「ちょっと待ってください! 黒葉君は私達森本小隊の一員です。それを一方的に変更するだなんて、それこそ隊長格の直属の命令がなければ」
信乃の優しいながらも強気な姿勢にレジアは怯まない。胸を張った態度で返して来た。
「オーホッホ! そこは大丈夫ですわ。許可は貰いましたので」
「「「ええっ!」
女性陣三人が声を揃えて驚くも、すぐに信乃は強気な姿勢を取り戻して反論した。
「失礼ながら、私達は過去に偽の証書を突き付けられたことがあります。発行された証書について本物である証明は出来ないでしょうか?」
信乃からの質問。過去にイブリスが三番隊隊長による証書を偽造しリドリアを自分の隊に入れようと画策した件がある。故に単に証書を見せられたとしても信用しきれない部分があった。
信乃からのこの問いかけにレジアは少しだけ不快な顔を見せた。
「失礼ですわね。私達をあんな隊員の風上にも置けない奴と一緒にしないでほしいですわ。まあ事情は知っていますので、その配慮もしましたが」
「配慮?」
「なんや、いきなりギスギスした感じになっとるやんけ」
疑問に首を傾げかけたタイミングに突如聞こえてきた別の人物の声にレジア以外の場の全員が意表を突かれた。
声の聞こえる方向に視線を向けると、その場に今までいなかった大人の女性が現れていた。
「いつの間に?」
「「疾風隊長!」
リドリアと黒葉が叫んだ。現れた人物は次警隊二番隊の隊長『疾風 入間』その人だったからだ。
「何でこんな所に?」
「もしかして、証書を書いた隊長って」
「ああ私や。面白そうやったんでな」
「そんな軽い理由で」
呆れる森本小隊。この問答だけで入間の適当な性格と、なぜレジアが彼女に証書を頼んだのかも何となく理解出来た。
すぐに一行が視線を外すと、途端に入間は誰にも気づかれないように配慮しつつ真剣な顔を向けた。
(ま、それは半分冗談。私が見たいのは、ここから起こる事やからな)
入間の想定通りに、森本小隊は呆れた顔を真剣なものに戻した途端に小隊長である信乃が代表となって声を挙げた。
「隊長の許可を得ていることは分かりました。しかしそれでも! 私達は黒葉君を移動させたくありません!」
「そうです! 黒葉さんはボク達の大切な仲間、そんな急に移動させるなんてこと出来ません!」
信乃に続いてレニも声を挙げる。もちろん当の本人である黒葉もすぐに反対の声を出した。
「ごめんレジアさん、俺もこの小隊にいたいんだ。君の誘いは受けられない」
レジアは黒葉本人の返事を受けてわかり切っていたかのように表情の変化もなく返答した。
「そうですか。それではやる事は一つですわね」
レジアの顎の引いた目付きに構える三人。そこに一人後ろに構える形になっていたリドリアが前に出てレジアに話しかけた。
「まどろっこしい事はいいわよレジア。アンタは初めからこうすることが目的だったんでしょう?」
「はて? 何の事ですか?」
まるで旧知の仲のように会話をする二人に黒葉は疑問を浮かべた。
「ちょっと待って、なんか距離が近いように見えるんだけど、二人って知り合いなの?」
この黒葉の質問にリドリアは苦い顔で、レジアは笑みを浮かべた。
「知り合いっていうか……」
「従妹ですわ」
「従妹!?」
驚く黒葉にレジアはハッとなった様子で理解した。
「そういえばテーマパークではフルネームで名乗ってませんでしたわね。これは失礼いたしました」
レジアは黒葉に向かってスカートの裾を掴み少し広げつつ頭を下げる。
「改めまして私は次警隊六番隊、『木花小隊』所属、『レジア アイズ』ですわ。以後お見知りおきを」
黒葉は目を丸くした。世間は狭いというべきなのか、まさか自分がプライベートで出会った女性と仕事仲間が血縁関係とは相当な偶然だ。
リドリアは黒葉にここまで来たら言うべきだろうと判断して説明し始めた。
「そう、負けず嫌いの従妹。幼少期から何度も勝負を挑んできては本気の戦いを挑んでくるのよ。どうせ今回の件も、黒葉と知り合って思いついた宣戦布告なんでしょう?」
リドリアの問いかけにレジアは少しだけに焼けて意味深な台詞を吐く。
「さあ。そのつもりだと言いましたら?」
わざとらしく誘うように返事をするレジアにリドリアの対応は決まった。
「いいわよ。今回の件、アタシが勝利して解決してやるわ!」
「リドリア!」
こうしてリドリア対レジアの決闘が決定した。
と思っていた一行だったが、ここでレジアは追加で発言した。
「いいえ、勝負するのは私だけではありませんわ」
「はい?」
首を傾げるリドリアにレジアは片手を腰に置き、もう一方の手で森本小隊全員を差してハッキリ告げた。
「森本小隊、貴方達に団体戦を申し込みわすわ!」
「「「「団体戦!?」
というわけで、森本小隊対木花小隊による団体戦がここに決定された。
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