PURGEー5 反省!!
想像していたよりもはるかに凄い激闘が繰り広げられた決闘に、観客は揃って拍手をし、二人をたたえた。
「ハハッ、勝てた……これで脱退しなくて……いい……」
決闘に勝利した喜びも束の間、黒葉は張り詰めた糸が切れるように気を失ってその場に倒れてしまった。すぐに闘技場内には次警隊の治療を担当する救護隊員が複数人現れ、二人の身体を気を使いながら運んでいった。
別室では入間が高笑いをしながら二人の健闘を喜んでいた。
「カッカッカ!! 予想以上にどっちも粘ったな!! 良い決闘を見れた、たまたまながらお得だったよ!!」
だが隣のクオーツは軽く拍手をしつつも席を立ち、入間に問い詰めた。
「少々用事が出来ましたので、要件を言ってもらっても?」
クオーツの真剣なまなざしに入間もモードを切り替えて対応する。
「ええ、極秘の通達よ。あの二人の入隊試験中に起こったことの詳細について」
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しばらくの時間が経過し、目を覚ましたリドリア。思考が戻ってすぐに彼女は起き上がると、負傷個所は治癒され分解されていた手足も戻った状態でベッドに寝転んでいた事を知った。
「凄い! もう回復しているだなんて」
「目を覚ましましたね」
聞こえてきた声に顔を向けると、すぐ近くのパイプ椅子にクオーツが座っていた。
「隊長!」
「そのままで構いませんよ」
体制を整えようとするリドリアを止めつつ、さっそくクオーツは彼女に問いかける。
「どうでしたか、春山隊員と戦ってみて」
この問いかけにリドリアは少し顔を俯かせながら答えた。
「彼の能力を上辺だけ知って、一方的に軽蔑した自分を恥じました。彼があの人に認められたって聞いて、勝手に嫉妬したことも……」
「彼? 貴方のあこがれの人は確か……」
クオーツがリドリアの思い浮かべている人物を予想するよりも前にリドリアからの声掛けがはやかったために意識を逸らされた。
「そりゃあ、公共の面前であんな姿にさせられたことは許し切れませんけど……」
「フフフフ……それは確かにそうですね」
思わず笑ってしまうクオーツ。リドリアは会話で思い出した黒葉の事を聞く。
「隊長! 春山隊員は!」
「すぐそこでまだ寝ています」
クオーツが椅子から立ち上がってリドリアの視界から外れると、隣のベッドにて眠っている黒葉の姿が見えた。
「私より長く寝てるなんて……」
「同じように処置はしました。後は本人の回復力の問題。春山隊員は貴方程の回復力は持ち合わせていないようですね」
リドリアはすなわち自分が有利な条件で戦っていたことを改めて理解させられた。
「春山隊員が起きたら教えてください。私がここに来た理由は、お二人が元気になってから伝えることにします」
リドリアが頭を下げると、クオーツは一度部屋を後にした。
リドリアはベッドから降りて立ち上がると、隣のベッドで眠っている黒葉の寝顔を見た。
負傷は回復していながらも、いびきすらかかずに深い眠りを続けている黒葉の何処か優し気な表情になんだか引き寄せられるものを感じるリドリア。
「こうしてみると、結構整った顔しているのね」
リドリアは興味本位の内にだんだんと唇が重なりかねない至近距離にまで近づいてしまっていた。そのとき、彼女の意識を我に返す声が耳に入って来た。
「あの~……何をしているんですか? アイズさん」
声の主は意識を取り戻した黒は本人のものだった。
「は!春山隊員!!?」
驚いたリドリアは後ろに下がろうとするも足がすくんで後方に倒れてしまう。頭をぶつけると危ないと黒葉は咄嗟に手を出して彼女の頭を右手で受け止めるも、結果巻き込まれて一緒に転倒してしまう。
「イッタタ……大丈夫?」
「え、ええ……ありがとう……」
お礼を言うリドリアに黒葉話笑みを向ける。続けてリドリアは黒葉に謝罪した。
「ごめんなさい。アンタの事、何も知らないのに一方的に弾圧して、見せしめにしようとして」
「いやいや、あれは俺が引き起こした事なんだし、アイズさんが誤る事なんてないよ……」
「リドリア……」
「え?」
リドリアが呟いた台詞に黒葉が聞き取れなかったと言いたげな反応をすると、彼女はもう一度、今度ははっきりと聞こえるように言った。
「リドリアで……いいわよ。アタシも黒葉って呼んでいいかしら?」
黒葉はこれを嬉しく思い、より満面の笑みを浮かべて返事をした。
「もちろんだよ! リドリア!!」
リドリアも彼の返事に表情を明るくする。
「ありがとう! 黒葉!!」
(ッン!……可愛い……)
黒葉は向けられた笑顔に思わず胸の中でときめく何かを感じた。
(なんだ今の感覚? いや、気のせいかな)
自問自答をする黒葉にリドリアは自身の頭を支えている黒葉の右腕を擦りながら問いかける。
「あの~……そろそろ体制戻してもいいかしら? このままじゃ黒葉の手が痺れちゃうだろうし」
「えっ!? ああ、うん……」
声をかけられて我に返った黒葉は反射的に同意し、二人はゆっくりと立ち上がった。そしてお互いの顔を向き合い、黒葉の方から話しかける。
「それで……俺が勝ったってことで、脱退の件はなしでいいんだよね?」
「もちろんよ! まあ、あんなにいい試合をした仲なんですもの! アタシが勝っても寛大な処置に変更していたけど」
「なんだよそれ……」
自分勝手な言い分に少々呆れる黒葉。そんな彼にリドリアはもう一度笑顔を見せて挨拶した。
「これからよろしくね! 黒葉!!」
「こちらこそ! リドリア!!」
「フフッ……」
嬉しそうにしながら歩き出すリドリア。しかしここでも災いは起きた。突然リドリアの救護隊員が着替えさせた病人服がほどけてはだけ、白色のシンプルな下着姿を露わにしてしまった。
「んなっ!!?」
理由はさっきのさっきのリドリアの転倒時。黒葉が彼女の後頭部を触れた際、咄嗟の行動に能力が付与されてしまったのだ。
「し、白色……」
黒葉が思わずつぶやく言葉。リドリアは顔を沸騰するほどに真っ赤にして、彼に叫びながら強烈なビンタを喰らわせた。
「やっぱりダメ!!! ヘンターーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!」
その時のビンタの高い音は、それは良く響いたとか……
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